第十六話 年の離れたおともだち3――子猫の同情
夜間和室で眠る阿栗を抱えながら、蒼柘榴が眠っていれば、和室の障子に穴があく。
小粒で石がぴんっと投げ入れられている様子。
つまらない男の嫌がらせだろうと、蒼柘榴は起きると入り続けてくる小粒の石を指で外に弾く。
弾かれた石は弾丸ほどのスピードを放ち、嫌がらせした本人の腹部を貫いた。
痛さに呻いてるのが愉悦だと、蒼柘榴はせせら笑う。
「この子に近づくんじゃない。お前のお気に入りにもならない子だろう?」
蒼柘榴が威圧感を増して問いかければ、障子越しに兎太郎は消え去っていく。障子を開ければ、血の跡が滴り落ちていた。
蒼柘榴は障子を閉めれば、阿栗へ振り返る。
阿栗の寝顔を見ていれば、蒼柘榴も眠気を取り戻した。
*
次の日になれば、朝ご飯を食べ終わり一緒に蒼柘榴と帰路途中の阿栗は蒼柘榴を見上げて一生懸命ついていく。
「おれね、きめたよ」
「どちらにするか決めたのでスか」
「蒼さんがみかたになるほうにする。蒼さんについていくの、おもしろそうだから」
「っふ、賢い子ですネエ。でもワタクシは冥府の王ですヨ、それでもいいの?」
「じごくにはだれにもさからえない、それならとたろうだってなっとくするでしょう? 蒼さんのみかただっていったら、とたろうだってしょうがないね、ってなるよ」
「それは、そうかもしれないデスね」
昨夜の負け犬さながら逃げ去る様を思い出せば、蒼柘榴は笑って阿栗の手を繋いだ。
「立ち向かうのでス、ひとりで、あの悪いお兄さんと」
「うん。おれならまもれるよ、パパとママ。だから、楼香ちゃんにわるいことしない」
「嘘ももうつかない?」
「それはきゃっか。うそつくの、たのしい」
「いたずらっ子だネエ」
蒼柘榴は笑って、二人であとはそれぞれ自宅か塒に別れて帰って行った。




