61.レイスの観察日記4。
若干、話を忘れかけている自分がいます。
リュートの監視が強くなった。これは、勿論、俺に対するものでなくて、フローディアに対する監視である。中々情報が得られないなと思いつつも、何とかして、リュートを振り切って、只今、俺とフローディア、二人きりの時間が取れました。ただし、時間は限られているが。
「じゃあ、まず何が聞きたいの?」
フローディアが聞いてきた。最初に聞いておきたい事か・・・。
「じゃあ、リュートをたまに、様付けで呼ぶけど、なんで?フローディアの方が身分的にも上でしょう?それに、リュートを、何から守っているの?」
フローディアは聞かれると思っていなかったのか、言葉に詰まる。
「・・・うっ。それは・・・。じゃあ、レイス。今から言う事は誰にも言ってはならないわ。・・・その時が来るまで。」
・・・?その時?どういった時なのだろう?リュートに関しても、何か重大な秘密があるの?俺は、ごくりと固唾をのむ。
「・・・リュート様は、誘拐されたアルカディア王国の第四王子、レオン・アルカディア様よ。」
「へぁ!?」
俺は、予想だにしない答えに変な声が出る。・・・でも、身分を考えるなら、確かに、王子の方が上だから、フローディアが様呼びをするのも頷ける。フローディアは身分が上の人には様をつけるからなぁ。でも、待てよ?王族の印って、左手の紋章と金髪碧眼が特徴なはず。一体、どういう事だろうか?
「でも、リュートは金髪碧眼じゃないし、左手にも紋章がないよね?なんでなの?」
「“最果ての森”の“湖の乙女”はご存知?」
「・・・あぁ、満月の夜、深夜辺りに出現すると言われている伝説上の人でしょ?それが何か?」
「彼女に頼んだの。レオン様が、この先憎悪を抱かないように生活できるようにって。それで、身分を隠して、印も隠してくれたの。」
・・・ふーん?“湖の乙女”には願いを叶えてくれると聞いた事がある。しかも、満月の夜にしか現れないという。リュートがもし、そのままの姿だったら、死んでいたかもしれないし、何より生きていたとしても、惨めな姿で生活していただろう。・・・あれ?最終的に、レオン王子を誘拐したのってフローディアじゃない?
「でも、最終的に、レオン王子を誘拐したのってフローディアじゃない?それなのに、守るって誰から?それに、フローディアもその時、赤子じゃないの?」
「悉く、痛いところを突いてくるわね。私は赤子の時から記憶を持っているのよ。魔法だって、赤子の頃から普通に使えたわよ。“最果ての森”も自邸からは割と近いしね。」
・・・近いって言っても、半日はかかるんじゃないかな?フローディアって本当に、何者だろ?しかし、誰から守っているのかが聞き出せない。
フローディアはため息をついた。
「・・・はぁ・・・。リュート様を守るだなんて、おこがましい事、この上ないわね。でもね?リュート様、いえレオン様を誘拐した連中の首謀者は判明しているの。セイレーン侯爵よ。」
セイレーン侯爵。スティル・セイレーンの父親って事だよね。彼もまた、闇魔法の使い手なのだろうか?レオン様はあっさりと誘拐されたのだから。闇魔法がかかっていたと考えるのが普通だろう。
「フローディアは倒れたんじゃない?闇魔法がかかっていたんでしょ?」
「勿論ね。でも、闇魔法にかかっていた事に気が付いたのは後になってからなのよ。」
・・・うーん。いまいち、分からなくなってきたぞ。まず、落ち着いて状況を整理してみよう。まずは、リュート=レオン王子。レオン王子を誘拐したのは、セイレーン侯爵。しかし、最終的にはフローディアの犯行。フローディアってたまに、危険な行動を取るよね。そして、レオン王子が誘拐された時、闇魔法がかかっていた。レオン王子の正体を隠したのは“最果ての森”の伝説上の人物、“湖の乙女”。“湖の乙女”は満月の夜にしか現れず、彼女の姿を見た者は願いを叶えてくれるらしい。
そんなものか。あれ?どうやって、リュート=レオン王子という事を証明できるの?
「・・・“湖の乙女”は私に言ったわ。誘拐した連中がまた悪事を働かないように、私が傍にいて、彼を守る事が、レオン王子の幸せに繋がるって。そして、リュート様が愛する者と口づけをする事で、“湖の乙女”がかけた魔法は解けてしまうの。」
・・・つまり、リュートがもし、フローディアとキスしたら、自動的にレオン王子になってしまう訳だ。リュートはフローディアが好きで、愛している。その時って、リュートが自身の愛を貫く時の事を指すんだね。その時は、リュートにもちゃんと状況を説明しなきゃね。変なタイミングで、リュートが事及んだら、俺達が路頭に迷う事になるからさ。
まさかの、リュートの事しか言っていない。ただし、本人が出てきません。




