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少女は刀を握り姫となる!剣姫〜いざ行かん  作者: 榊 凪
1章 幼少期 殻を破る時
12/96

12不幸は突然に……

変な投稿してみました。

良かったらどうぞ……オススメはしません

 


 あれから一晩がたった。


 目に付いた目ヤニを手でこすり落とす。

 地下室は埃っぽく手で撫でると埃が取れる取れる程だ。


 手元にあるアルコールランプに火を灯し辺りを見渡す。

 アルコールランプの柔らかい明かりが五畳半程度の狭い部屋を照らし出す。


 壁には赤い文字で書かれた絵。

 正面には元々美しかったであろう金色の女神像がある。しかし、今では首がなく、黄金であった皮膚もどす黒い血で汚れ金メッキも剥がれおちていた。


 扉には、黒い色のペンが筆で描かれた目の絵。


 部屋の四隅に置かれた溶けかけのロウソク。


 天井は今にも崩れてしまいそうな木の組み合わせ……。

 まるで素人が作ったと私でも分かるくらいに……。


「棒で突っついたら崩れてしまいそう」


 昨日何があったかは知らないけれど、崩れなくて本当に良かった……。


 それにしても、この部屋は何に使われたのだろう。

 知っているものしか入れないこの部屋


 禁忌を犯すとしたら、間違いなく適切な場と言っていいだろう。


 まさか、昔お爺様が仰っていたあの儀式の事なのだろか?



 坂巻家の禁忌……一体何なのだ。

 それにしても、私よくこんな所で眠れたな〜。

 自分自身でも驚きを隠せないよ。


 自身にツッコミをいれ、一人漫才をしていると、完全に締め切った大きな目の書いてある鉄の扉がノックされた。


 時間的に言うと、今は正午6時前後といった所だろうか……。

 お爺様は確か朝になったら迎えにいくと言っていたはず。

 けれど、お爺様が私を起こしに来る時間は七時半丁度だ……。

 もし、お爺様だったとしたらこんなに早く来るのはおかしいのではないか?

 いや、緊急時という事も含めて考えれば、こんなに早く来てもおかしくは無いのだろうか?


 考えれば考えるほど、分からなくなり私はどうにでもなってしまえ! と、感情と危機感を殴り捨て硬い鉄扉をゆっくりと開けるのであった。



 ◇◇◇◇◇◇


 時間は遡る事、十時間前。


「ゼェゼエ……多いな……」

 黒き波動を出す剣を握り、百以上はいると見られる鬼達に剣を向ける。


 鬼達はのしのしと歩き、我が物顔で木々をなぎ倒す。


 木々には夜見との戦闘でついた切り傷や、折れた枝が散乱していたが、鬼達によってそれは汚された。


 棍棒を持った鬼。

 剣を持った鬼。

 大剣を持った鬼。

 その他にも様々な武具を持ち、ニヤニヤと汚らしい笑みを浮かべる。


 先頭に立つ人形の鬼が声を上げた。

 青い着物に、小さ花をいくつも散りばめた服装。

 細い腕に似合わない太刀を持ち。

 豊満な胸は主張が激しく、艶めかしく手で胸を強調する。

 唇は赤く、髪は黒。


 だがその美しい顔の上にはどす黒く小さなツノが二本生えていた。


「やあやぁ、久しいな〜。あの時受けた傷がやっと癒えたのでな。お前の顔を見に来てやったぞ。感謝しろ」


「……今度こそ、殺す」


「そう吠えても、仕方ないだろ〜。自身が負ける未来が見えたのか? なればこそ、そなたの顔に泥を塗りたくり、地に伏せる姿を私は目にしたい。クハハハ!! 笑いが止まらぬ!! さぁ、宴を始めようではないか」



 腕を広げ、高らかにそう宣言すると共に、有象無象の鬼のたちが、翁に向かって走り出す。


「くっ!」

 歯を食いしばり、鬼達に刃を向けた。





 ◇


 攻撃をいなし、カウンターで鬼を斬りふせる。


 これで何頭目だろうか…………。


 現役を引退し、かれこれ三十年。


 私の体はここまで老いてしまったのか…………。


 体には、いくつもの生傷が目立ち、立っているのも不思議なくらいだ。


 それでも、愛する我が孫を守るため。そして、あの子から頼まれた最初で最期の頼み事……。


 ここで破るわけには……。



「じじいのくせによく持ち堪ええるな〜。さっさと死ねば楽なものを」



 残る鬼は、人形の鬼。


 そいつは無傷で、ケラケラと笑いながら太刀を振るう。


 あまりにも重い一撃は、翁の体力をジリジリと奪っていく。


「ほらほら、立っているのもやっとなんじゃないの〜? 早く死ねよ」


 烈火の如く繰り出される剣撃をただ、受けることしか出来ない翁は、次第に膝をつく。


 目くらましに煙玉を投げるも、逃げる力を殆ど奪われているため、その場から動く事も楽ではない。

 這い蹲り、その場から逃げようとする。



「おやおや?逃げようとしても無駄だよ〜あの時君は僕を逃してはくれなかったよね〜だ・か・ら、だーめ!!」


 可愛らしくそう言う鬼は、這い蹲っている翁の足に太刀を刺す。


「くっ……いっ……」


「いいねいいね、その顔だよ〜憎しみに満ちたその顔! あ〜僕の中で何かが満たされるようだよ〜それにね。僕は君に感謝しているんだよ。何故なら、僕にこんなご褒美をくれるんだから。これを俗に言う飴と鞭とでも言うのかい? あの時くれたのは鞭で今は飴なんだろう? あの時のことを思い今日のことを考えるだけで、あ〜歓喜に震えるよ」


 ニタニタと下卑た笑いを浮かべ、足に刺した太刀をグリグリと搔きまわす。


 パンッ。


 乾いた音と共に一発の銃弾が鬼に向けて打ち出された。


「なんだい? こんな時に〜折角僕が楽しんでいる時にこんな悲しい事をするのは!! 許さないよ」


 先程までのニタニタとした笑いから一変、無表情で目が座っている。


 一般人がその目線だけで死んでしまうだろう。


「大丈夫ですか? 師よ。連絡が取れなくなったと思ったらこんな事をしていたのですね。はぁ、絶鬼ぜつき如きに遅れを取るなど魔王の称号を持つ身として恥ずかしいですよ」


「なんだ……お前は破門したはずだったが?」


 男はやれやれと肩をすくめる。

 リボルバー式の拳銃二丁を腰にぶら下げ、肩にはダブルバレルショットガン。

 背中には大口径のスナイパーライフルを背負った大男がいた。


 革ジャンを血風に吹かせ前髪を搔き上げる。


 忌々しく見据える絶鬼をよそ目に、師との再会を果たした。


「なんだ、人間。私に楯突くきか!! 

 そこでおとなしくしていれば、痛みもなく死ねたというのにね〜。二人まとめて殺してやる」


 怒り狂った絶鬼ぜつきはその大男目掛け太刀を大振りに振り下ろす。常人では捉えることすら不可能に近いその一撃をその大男は中指と人差し指を使い器用に止めた。


「な、なに!!」


 咄嗟のことに驚きを隠せない絶鬼ぜっきは剣を抜こうと必死になるが、剣は中々外れなくて仕方なく鬼はご自慢の剣を中心近くで叩き割った。


「おのれ……。許さぬ」


 先程までのニタニタとした下卑た笑いは一切せず、ただ殺すという明確な殺意だけを顔に浮かべていた。


「おいおい、この程度でびっくりしてもらっちゃ困るんだがな。寧ろ、この程度が貴様の限界というのか?」



「私をなめるなぁぁぁぁあ!」


 折れた太刀を一身に振るい、大男に当てようとするが、ことごとくが避けられ、止められ、裏を突かれる。

 お前はいつでも殺せる。

 そう言った無言の圧力が鬼を更に刺激する。


「さてと、これ以上遊んでもなにも出て来やしないだろう。終わりにしようか」


「くたばりやがれ人間ども」


 息を切らし、肩で息をする鬼は先程翁が見せたそれに近いものを感じる。


 大男は翁をちらりと見る。


 痛みを堪え、自身の成長を見ていてくださると思うと、心が躍る。

 嬉しさと、悲しさが心拍を早める。


 鼻から息を漏らし二丁拳銃を構える。


 俺の成長を見てくれ!


 パッパッン。


 二発の乾いた銃弾の音が聞こえた。


 鬼殺し特化型銃弾、滅鬼弾メッキダン


 一発に付き五万円程。


 通常兵器では貫通する事のない鬼の肌を容易く打ち抜き、命を奪う弾丸はここ最近になって発売された新兵器である。


「全く、金に糸目をつけない奴だなお前は」


「師匠には言われたくありませんよ。孫の為に神鬼ジンキの心臓を買った人にはね」


 死んだ鬼の死体には目も付けずに……。


「それで師匠。そのお孫さんは今どちらに」


「それなら安心せい。寺に寝かせておる」


「なにが寺ですか、あんなボロ臭い家。オマケにあらゆる禁忌を施されたあの部屋まで買うとは。はぁ、上層部のお偉いさん達も頭抱えてましたよ」



「知ったことではない。誰があそこまで連れて行ってやったか忘れたわけではないだろう」


 バツを悪そうにしている大男は師と仰ぐその翁に肩を貸してやり、お寺へとゆっくりと歩き出すのであった。









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