13帰ってきた
はい、投稿ー。
はい、爆弾投下ー。
みたいなノリです。
はい、すみませんー
面白くないです。
13
時は進みお寺へと戻る。
コンコン……コンコン。
繰り返し叩かれる鉄扉。
(開けるしかないのか……?)
ここで躊躇っていてはダメだ。
鬼がここに来ていたら私が殺すしかない。
意を決して、重くて硬い鉄の扉を開ける。
ギィギィと鉄と木枠が擦れ独特の音が聞こえた。
「夜見!! ここに居たのか」
そこに居たのは血だらけになり満身創痍になりながらも笑顔で手を広げるお爺様だった。
私は緊張の糸が切れたかのように膝を付き、ポロポロと涙をこぼす。
「よか、よがっだ…………」
自分でもなにを言っているのか分からないくらいに鼻水を垂らし、大粒の涙は頬を滝のように流れる。
落ちた涙は、小さな水たまりを作り、待ちわびた景色を目に焼き付けようとしていた。
「それにしても、よくこの部屋が分かったな。これだけの仕掛けを作り隠蔽していたというのに」
「それより、お爺様……その傷は大丈夫なのですか?」
「あ、あぁ、これか?大したことではないよ。こんなもの唾をつけておけばすぐに治るさ」
腕をブンブンと振り回し、肩が外れないか心配はしたが、元から体から丈夫な上、自己再生能力が高い為心配するだけ無駄だということに今更気がついた。
安心して辺りを見渡していると、お爺様の後ろに知らない男性が佇んでいた。
私は生まれてこの方お爺様以外との会話をした事がない。いや、正確に言えばその様な記憶がないと言った方が正しいかもしれないが。
警戒感丸出しでその男を睨んでいると、その視線に気がついたのかお爺様が、その男を指を差しながらこう言った。
「この大男が気になるのか?ふふっ、此奴はな、わしの弟子みたいなもんだ。私が若かった頃に取った弟子でな。破門していたはずなんだが、どうやらわしの危機を悟ったらしく助けに来てくれたみたいなのじゃよ」
その話を聞き、頬を掻きながら恥ずかしそうにしている男は下手な口笛を吹きながら外へと歩いて行った。
「たく、爺さんがでしゃばりやがって」
私の耳に届いたこの声はあの男の精一杯の照れ隠しなのだろうか?
「兎に角、お前が無事でわしはホッとしたよ。もう、朝だしご飯でも一緒に食べようか」
満身創痍のお爺様はいつと何ら変わらない満面の笑みでそう言った。
私は何か違和感と共に恐怖の衝動にかられそうになった。
いつもと変わらないお爺様を見て、ただ単純に恐怖した。
だけど、この違和感は話してはならない。
ーーそう感じた……。
「……分かりました。流石に怪我人に料理をさせる訳にはまいりません。傍で教えてくださればそれで充分です」
「そ、そうか? 夜見も気を遣える子になったのじゃな。わしは嬉しいぞ」
顔を傾げ、一度困った顔をしたが自身を気遣ってくれていると感じた翁はウンウンと首を縦に振りその場を後にした。
「さてと、この古びた場所を早く出ますか……」
何とも埃臭いこの部屋にいるのは体が生命の危険だと反応するのでそそくさと退散する事にした。
改めて来た道を辿ると、壁は土を粗く削り、激しい炎で炙った様に見られた。そしてその上から人の血を塗りたくった様だった。
長年の風化により、血の跡は大分取られている様だがそれでもなをこびりついている箇所は多々見受けられる。
本当にここは何のために作られたのだろうか……本当に禁忌の為だとしたらお爺様はどんな禁忌を犯したと言うのだろうか…………。
「夜見、なにをしているのじゃ? 早く出てこんか?」
「は、はい。ただ今」
若干の後ろめたい気持ちを抑え、寂れてしまっている手すりにつかまりゆっくりと足元に気を付けながら上がることにした。
既に上に上がっている男は服を着替え、お爺様は怪我をした箇所に火鉢で温めておいたアッツアツの鉄の棒を押し当て傷口を塞いでいた。
ジュウジュウと人が焼ける臭いが鼻をつまみ、ゲホゲホとむせかえってしまいそうだった。
「師匠よ、室内でそれをやるのはやめてくださいませんか? 貴方のお孫さんも目に涙を浮かべていますよ。それに死臭も若干するんですから勘弁してくださいよ」
「何じゃ、何度も死線を越えて来たものがこの程度で根をあげるなど修行が足りんのではないか? 夜見もこの匂いには慣れて起きなさい。いずれ嗅ぐ事になるからな」
男は頭を抱え、この爺さん頭おかしい〜とか小さく口に出し、あれこれと考えていた。
この人も、苦労してるんだな……と心なしか感傷に浸っていると、怪我の治療を終えたお爺様が、早速純白のエプロンを身に纏い、重そうな足を引きずり台所へと足を向ける。
「お爺様!! 料理は私が」
「分かっておる。付いて来い」
「は、はい!!」
その頃男は、自身で用意したのか座布団の上に座りやれやれと手を振っていた。
「この爺さんにこの孫あり……だな」
「ん? 何か?」
目を細め、弟子であろうその男に少しドスを効かせた声で返事をしたお爺様をみて、男は若干凄み小さくため息をついた。
鉄の棒は火鉢の所に戻す。
パチパチと薪が燃えるのをよそ目に、台所へと向かう。
包丁を握るお爺様は、どこか気恥ずかしそうに私をチラチラと横目で見てくる。
鬱陶しい……頭にそんな言葉がよぎる。
いけない、こんな事を考えてはお爺様に失礼だ。
「今日は何を食べますか? 鍋ですか?」
「ん……何がいいのだろうか。ステーキか……」
菜切包丁で白菜をザクザク切りながらお爺様は考える。
人参の皮を剥きながら、考え事をし唸る。
エノキの株分けをし、目を瞑り瞑想する。
「やっぱり、鍋ですか?」
「ん〜ステーキかな」
まさに心ここに在らずと言ったご様子なのだろうか、一体私が地下にこもっている間に何が起こったというのだろうか……こんなに傷だらけになって、私のことを探して…………背中には深い傷を負い何のために……。
「夜見、どうした。涙なんか浮かべて」
私は気が付いた。
知らず知らずに泣いていることに。
死んでしまった両親。
私を置いていってしまったあの人達を私は忘れはしないだろう。
あの禍々しき鬼たちが奪っていった私の日常を取り戻すことは叶わないだろう。
けれど、今ある日常をお爺様は必死になって守っていてくださっている。
その事に気が付き、私は泣いていた。
「夜見は泣くのが下手くそなんだな」
「……ぐすん…………泣き方なんて教わらなかったから」
次第に大粒の涙が頬を滑る。
そして、溢れんばかりの声をあげお爺様にしがみ付き、泣いた。
今まで隠していた恐怖心、孤独感、誰かが死んでしまう恐怖、お爺様がいなくなってしまったらと思うとおかしくなってしまいそうだった。
「夜見、お前とわしは家族なんじゃよ。だから、何も隠さなくても良い。素直になりなさい……」
「は、はい…………」
涙が止まらなかった。
初めてこんなに泣いたのかもしれない。
溢れる涙を止める術を私は知らなかった。
(あの時、月詠に託されたこの子をわしはここまで大きくする事が出来た。これも、夜見が頑張ってきた証拠じゃ。月詠、もし、お前が生きていたらこの子になんていってやるのじゃ? わしには分からないよ)
痛む背を気遣いながら夜見の背中をさすってやり、泣き止むまで抱きしめた。
(なんじゃろうな……子育てとは。夜見、わしは嬉しいぞ…………こんなに頑張って無茶して、時には怪我なんかもしたな。あぁ、ダメじゃ。わしも泣いてしまいそうじゃ……ふっ、魔王の名が泣くか…………あのバカ弟子にバカにされそうじゃな)
◇
「夜見、泣き止んだか?」
「う、うん……ありがとうございます」
「それじゃあ、ご飯を食べようか」
私が泣いている間に男の人が終わらせて置いてくれた。
なんて使える人なんだろう……と思う私は悪い子だ。
なんてね……。




