陀【終わるという選択】
ゐざよに恋したあの日、正確にいえば大会より少しあと。
大会のことを思い出すともどかしい、どこか胸が熱くなる。
そう感じてしまった日から、俺はあの瞳に、流れ落ちる髪に、思ったより形作られている身体に、なりより、寛大で、優しく、それでも熱く燃える心に、恋をしたと自覚したのだ。
モヤモヤの残る卒業式。
暗くも熱っぽい教室に、キラキラと笑顔を振りまくゐざよは、中学に思い残したとことはないようだ。
例の彼女とは、未だ続いているらしい。
本人から聞くことは、もう望まない。
意味も分からず苦しい今、自分から近づく必要はなかった。
いつも絡んでいる集団から、こっそりゐざよを見つめるだけ。
触れ合えたあの日々が懐かしい。
遠くなったその輝きも、消えるどころか日々強さを増していく。
直視できなくなっていく。
苦しさが喉から込み上げてきて、苦しい。
その瞳が、俺を捕まえてくれることは、もうないんだろう。
知らぬ間にできた溝、それにどれだけ傷ついたか。
最後まで、その理由はわからなかった。
ゐざよの気まぐれかも知れない。
周りからの絆しかも知れない。
いかなる理由があろうと、俺は、最後までゐざよに近づくことを許されなかった。
その事実だけは消えてなくならない。
気持ち悪い唾を飲み込み、卒業式をいい事に、流れる涙は堪えない。
色づいて見えたあの日々が、頭の中にこびりついて離れない。
俺の中で光を放ち、輝き抜いた彼を、忘れはしないだろう。
それでも、俺は、この恋心だけは、置いていかないといけない。
これから先、ゐざよと関わることはなくなる。
それでいい。
あんなゐざよを好きになってしまった。
好きになってしまったから。
桜の花が半咲く頃、行き場のないこの恋は、静かに幕を閉じた。




