旋風⑴
新月9ドラマ『綺麗な蛇』放送直前スペシャル対談、第1弾!
今回はドラマのヒロイン・スイ役の月乃、男主人公・カツキ役のオーガ(GaoR)、その友人・メグロ役のタイヨウ、3人のお話をインタビュー形式でお届けする。
──今回全員が初共演ということですが、お互いどのように呼び合っていますか?
月乃「わたしはですね、オーガさんは王様のような貫禄があるので“オー様”、タイヨウさんはそのままだと少し長いので“たいっちゃん”と呼んでいます」
オーガ「俺は、芝居をする現場では、基本役名で呼ぶようにしてます」
タイヨウ「僕はいたってふつうですよ? 月乃さん、オーガさん、て感じです」
──人によって距離感がちがうように感じる呼び方ですね。それぞれの第一印象はいかがでしたか?
月乃「そうですね〜……。まずオー様は、やっぱり大河ドラマの印象が強いです。大河ドラマ主演最年少記録を更新したうえに、連続ドラマ初主演だったんですよね? なのにあんなにも堂々たる勇姿を演じられるなんてすごいな、と。たぶん、そこから、王様らしさを感じ取ったのかもしれません」
オーガ「本当ですか?(笑)」
月乃「本当ですよ! たぶん!」
オーガ「どっちだよ(笑) でもうれしいな。ありがとうございます」
月乃「たいっちゃんは、今作ではじめてお会いしたんですけど、現場で一番若いなんて信じられないくらい場馴れ感があってびっくりしました。落ち着きがあって、だけど親しみやすさもあって、全然年下に見えない!」
オーガ「場馴れ感はスイのほうがあるでしょ絶対」
タイヨウ「そうですよ、センパイ」
月乃「ちょっとやめてよー! 年齢はそんなに変わらないでしょ! オー様なんか同い年じゃん!」
オーガ「年齢だけでいえば同じですけど……スイ、というか、“月乃”という役者は、俺が物心ついたときから活躍し続けてるので大大大先輩ですよ。こうして肩を並べられてるのがいまだにふしぎに思うくらい。キャスティングを知らされたときは、まさか自分があの人と共演することになるなんて! って、ちょっとミーハー心をくすぐられました。どんな役でもオールマイティーにこなせる人で、すごく器用なんだろうなと思います」
タイヨウ「僕も同じですね。月乃さんは子役時代からずっと引っ張りだこなイメージがあります。正直今でもちょっと緊張してしまいますね」
月乃「ええ、うそだあ」
タイヨウ「なんでですか、緊張しますよそりゃ(笑) でも、芸歴とか年齢とかを鼻にかけずに、分け隔てなく接してくださるので、現場はとても居心地がいいです。名前のとおり、月のようにやさしい人だなあと、常々尊敬しています」
月乃「えー、ふふふ、こう目の前で褒められると照れちゃいますね。でも、たいっちゃんも忙しいんじゃない? オーディション番組から一躍時の人ですもん!」
タイヨウ「そんなことないですよ」
オーガ「俺、オンステで、何度かメグロのことを目で追ってました。なんだかオーラのある奴いるな、と思ったら、たいてい彼なんです」
タイヨウ「オーラ……。オーガさんは“覇気”って感じですよね」
オーガ「覇気?」
タイヨウ「肝が据わっていて、周りを巻き込む力があって。オーディション番組で拝見したときからずっと、力強い魅力で満ちあふれています」
月乃「わかりますわかります! あの力強い感じ! オー様が現場にいると気合いが入るんです!」
オーガ「あはは。そう言われるのは素直にうれしいですね。んじゃ、これからも、熱い男代表として引っ張っていきます!(笑)」
──すてきな印象ばかり挙げられた御三方ですが、それぞれ憧れている人、嫉妬している人はいますか?
月乃「わたしの憧れは、晴家龍儀さんですね。このことはずっと昔から公言していて、最近ついに龍儀さんから公認していただきました」
タイヨウ「おお〜」
オーガ「すげー!」
月乃「デビュー作である映画『明日の道』で共演したとき、龍儀さんの演技に子どもながら脱帽しまして。それからです、わたしももっと演技がしたいと思うようになったのは。龍儀さんが、すべての始まりをくれたと言っても過言じゃないくらい」
オーガ「デビューで共演ってすげえな……うらやましい……」
月乃「ね。今思うとすごく恵まれてるよね」
オーガ「俺もいつか共演したいっす」
タイヨウ「逆に嫉妬している人は?」
月乃「うーん…………あっ、夏凪音ちゃん!」
オーガ「以前映画でWヒロイン務めてましたよね」
月乃「そう、『20分前の天使』で一緒で。彼女、なんでもできちゃうんですよ。演技もできるし、踊れるし、歌も歌えるだけじゃなくて作ることもできちゃうんです。横にいるおふたりもそうなんですけど、マルチに活躍されていてほんとにすごいですよね」
タイヨウ「いやいやそんな」
月乃「すごい才能ですよ! ね!?(カメラに訴えかける) わたしも舞台『アイドルの親』でアイドル役をやらせていただいたので、みなさんのすごさが身にしみてわかります。本業のほかにもいろいろ携わっていて、本当にすごい! 嫉妬しちゃうくらいかっこいいです!」
オーガ「ほんとみんなかっこいいっすよね」
月乃「うんうん!」
オーガ「俺もそうなりたくてアイドルを目指しました。なんでもできるスーパーアイドル。全世界に数多くいらっしゃいますが、なかでも『1/2』のナユ先輩。彼には嫉妬しますね。いや、嫉妬って言うのはおこがましいんですけど。一応、その、同業なので」
タイヨウ「ロールモデル的な?」
オーガ「それそれ、ロールモデル。ナユ先輩ってライブパフォーマンスもさることながら、個人ブランドも立ち上げてるじゃないですか」
月乃「あ、知ってる! 『浪漫堂』だ!」
タイヨウ「日本で一番プレミアがついているとされる、ヴィンテージブランドですよね」
オーガ「そう、舞台衣装をメインに手がかけてるブランド。自分で古着を見つけて、デザイン決めて、アレンジして……それをほぼひとりでしているらしいんですよ。だから全部一点物」
月乃「ひえ〜。もはやプライスレスですね」
オーガ「『GaoR』のライブでも何度か提供していただいたことがあるんですけど、ひとりで何もかもやってるとは思えないくらい細部まで考え抜かれた作品ばかりなんです」
タイヨウ「本当に細かいですよね。僕もファンミーティングで依頼させていただいたんですが、えっそんなところまでご自分で!? って驚くところばっかりで。手間隙かけて準備してくれたんだろうなと思います」
オーガ「ナユ先輩、ただでさえ本業で忙しいのにな。“好き”を曲げずにこだわり続けてて、すげえよ、まぶしいよ。才能を才能のままで終わらせずに突き進む背中、まじででかいっすよ。規模がちがいます。それを何ひとつ無駄にせず、思う存分楽しんでいるところが、心の底からうらやましくてたまんないです。俺にはそんな大それた才能なんか持ち合わせてないですけど、今回のドラマをとおして、俳優としての『オーガ』を成長させていきたいなと思ってます」
タイヨウ「オーガさんも才能の塊ですよ!」
月乃「そうですよ! アイドルとしても、俳優としても、いつもきらきらしてますよ」
タイヨウ「かっこいいです、イケメンです」
オーガ「自己肯定感向上委員会の御二方、ありがとうございます」
月乃「あーこれ照れてるやつだ」
オーガ「照れてません! えーっと、次は? 何でしたっけ?」
月乃「ごまかしてる」
オーガ「ちがいますっ。次は、ああそうだ、憧れの人。うーん……憧れ……か……」
月乃「うん?」
オーガ「か……春日野妃希、さん、です。……もう、引退されてしまったんですけど……」
月乃「あー……妃希さんかあ。そういえば彼女もなんでもこなせちゃう人でしたね」
オーガ「引退された方を挙げるのはどうかなって思ったんですけど……でも……」
タイヨウ「憧れは永遠ですから」
月乃「あれ? オー様って妃希さんと共演経験あったっけ?」
オーガ「いや、高校んとき同じクラスだったんです」
月乃「同級生!? あっ、アテ高の芸能科?」
オーガ「そうですそうです。そこで俺、3年間学級委員をやってたんですよ」
月乃「えっ、すごい!」
オーガ「最初はやる気なかったんですけど、春日野が推薦してくれたんです。視野が広くて、みんなに慕われて、自然と士気を高めてくれるからって。それまで春日野とあんまり話したことなかったはずなのに、そんなふうに褒めてくれて、感動したというか……。俺、ちょろいんで、すぐやりますって言っちゃいました」
月乃「かわいい(笑)」
オーガ「いざ学級委員になってみると、やっぱりいろいろと大変で。仕事もあるから、学級委員の役割を果たせないこともたびたびあって。でも、春日野は当たり前のように支えてくれたんです。それは俺に対してだけじゃなく、クラスメイト全員、平等に。みんなの大黒柱みたいでした」
月乃「うん……想像できるなあ」
オーガ「同い年なのにすごく大人びていて、頼りがいがあって、春日野のほうがよっぽど視野が広いし慕われてました。でも、だから、すげえ憧れた。あんなふうになりたくて、3年間学級委員がんばったんです。やばいんですよガチで。彼女は人間の鑑です、神です」
月乃「いろんな意味ですごい方でしたよね。同世代であることが誇らしいくらい」
オーガ「引退してしまったのは、今でも悲しく思います。一ファンだったので」
タイヨウ「共演したことない僕でも、その人間性の豊かさがわかります。春日野さんの伝説は有名ですから」
オーガ「メグロはどうなん? 憧れと嫉妬とやらは」
タイヨウ「あ、はいっ、メグロことタイヨウです。こんにちは」
月乃「こんにちは(笑)」
オーガ「二度目の挨拶(笑)」
タイヨウ「僕は……おふたりとは回答が少しずれるかもしれないんですけど、憧れとか嫉妬とか、そういう感情は身近な存在に抱いてしまいがちで。たとえば、幼なじみとか」
オーガ「幼なじみ?」
月乃「すてきじゃない!」
タイヨウ「あは、ありがとございます……」
月乃「どんな人なの?」
タイヨウ「僕とはちがってエネルギッシュというか、パワフルというか」
月乃「たいっちゃんも十分パワフルですよ。自覚なかった?」
オーガ「ずっと明るいよな」
タイヨウ「あ、えっと、僕よりはるかに明るいんですよ。どんなときも前向きに突き進めちゃうような人。もうだめだって思っても、彼がいれば大丈夫だって思えました。たまに暑苦しいし、むかつくときもあるけど、いつも元気を分けてくれて。生まれ変わったら彼になりたい、そう思ったこともありました。彼と友だちになれたことが、僕の人生最大の幸福。僕の理想は、昔からずっと、彼なんです」
月乃「感動的なエピソードですね、泣けてきそう」
オーガ「親友とか仲間って一生もんだよな。今回の縁も、大切にしていこうぜ」
月乃「そうだね!」
──ドラマでも、憧れや嫉妬心がキーワードになってくるんですよね?
月乃「はい。さっきわたしたちが口にした、こうなりたい、ああなりたい、うらやましい、まぶしい……そういった思いが、今作ではトリガーとなり、様々な変化をもたらします」
オーガ「憧れとか、嫉妬とか、言葉ひとつで言い表すのは簡単かもしれません。でも、憧れだからと言って純粋なわけじゃないし、嫉妬していようと苦しいばかりじゃない。シンプルなように見えて実は奥の深い、深すぎる感情を、カツキたちがどう受け取り、向き合っていくのか。そんな人間ドラマが、見どころのひとつです」
タイヨウ「ヒトのきれいじゃないところもきれいだと感じてしまいたくなる、そんな作品になっていますので、ぜひご覧ください!」
(マガジン ウワサノ 7月号)
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俺は先月発売された月刊誌を何気なくめくった。
アイトウエンターテイメント本社ビルにある小休憩用のフリースペースには、所属タレントの掲載された雑誌や写真集がマガジンラックに飾られ、いつでも誰でも見てもいいことになっている。トロフィー然と並ぶ雑誌や写真集は、その都度最新のものと入れ替わり、事務所内の認知に遅れが出ないようにしてある。
フリースペースに誰もいないのをいいことに、マガジンラック横のソファーを陣取った俺は、自分の顔の表紙を見つけたやいなや手に取ってみたのだった。
表紙は俺以外に、月乃とタイヨウも笑顔で写っている。最近メンバー以上に目にしている顔だ。このあとの撮影でも顔を合わせる。
現在放送中の連続ドラマ『綺麗な蛇』、その撮影期間のほとんどをふたりとともにする。撮影外でも3人セットでオファーが来ることが多い。この対談インタビューがいい例だ。メインキャラクターのセット売りはお買い得なのだろう。昨日はバラエティのゲスト、先週はドラマ公式のライブ配信に俺たち3人が出演し、反響は上々だった。
てか、そうだ、撮影があんだった。インタビューを振り返ってる場合じゃねえな。
月刊誌を元の場所に返却し、カバンから6話分の台本を取り出した。
マガジンラックのはす向かいに設置されたテレビが、音もなく動画を回している。テレビでも所属タレントの出演シーンのみがまとめられ、まるでホームビデオのようだ。延々と垂れ流される映像に、気が散って仕方ない。
テレビはやがて『GaoR』の新衣装を自慢した。あれは2週間前、よくお世話になっている音楽番組『ミュージックハウス』に出演したときの衣装だ。『GaoR』が歌う、ドラマ『綺麗な蛇』の主題歌を地上波初披露した。
パフォーマンス前にトークコーナーが挟まれ、その中でドラマの予告を使っていただいた。しかもロングバージョン、カットなし! 局が同じだからこそできたことだ。
ドラマは1話も予告も、月乃の演じるヒロイン・スイの中学時代から始まる。塾帰り、気晴らしに海沿いを歩いていたスイは、蛇行運転する車に轢かれ、一生歩けない体になってしまう。
1年遅れで高校生になったある日、定期健診を受けに来た病院でカツキ扮する俺と出会う。インディーズではかなり名の知れたバンドマンであるカツキは、遊びで手を出した女のひとりに腕を刺され、病院で縫ってもらった帰りだった。
ベンチに座るスイと腕にギプスを巻いたカツキの邂逅から字幕が足早に過ぎていく。
『ちょっとそこのあなた!』『……俺?』『そう俺!』『なに。サイン? ナンパ?』『足は?』『は?』『走れるのかって聞いてるの』『……なんだこいつ……』『走れるなら走って! 今すぐ!』『なんで……』『目は? 見えないの?』『んなの当然見えて……』『ならわかるでしょ! あのお婆さんが危ないんだから早く行って!』
インパクトのある出会いで物語の歯車が動き出す。その後、車椅子での学校生活やバンドのライブシーン、バンドメンバーのメグロとともに飲み歩く場面が手短に挿入される。夜の街を庭とするカツキのほうが一見順風満帆だけれど、ピーク帯を避けた朝一で登校するスイのほうがふしぎと生き生きとして見える。そんなふたりが最後に運命の再会を果たし、予告は締めくくられた。
トークコーナーで俺はニヤニヤしながらメンバーに感想を聞いた。フーゴはべた褒めだった。予告映像のコメントだけでなく、先日グループともども招待されたドラマ初回2時間スペシャルの試写会でのエピソードも語っていた。
『人前では泣かないようにしてるんですけど、つい泣いてしまいました。ドラマがよすぎて』
照れ笑いするフーゴとやさしいテロップが、画面いっぱいに描写される。俺はくすぐったくなり足をぶらつかせた。いつ聞いてもうれしい。台本ちゃんと読んでおこっと。
突然テレビから音が漏れた。あ、ドラマ主題歌『羽衣』だ。パフォーマンス部分は音ありの設定のようだ。俺ひとりに対してほどよく小さな音量は、作業用BGMにちょうどよかった。台本のセリフを目で追いかけながら、ときおり自分の歌割りのところをハミングした。
ふと、コーヒーの香りが漂った。俺をここに案内した事務員が、わざわざ淹れたてのコーヒーを届けにきていた。鼻歌、聴かれてたかな。なんだか気恥ずかしくなって首を縮めた。
よければ、とソファーに固定されたサイドテーブルにコーヒーを置かれる。俺がはにかんで礼を言うと、事務員はしおらしげに腰を低くし、逃げるように去ってしまった。
去年姉ちゃんからもらった誕生日プレゼントの腕時計を見やると、まだ午前7時過ぎ。事務員も大変だなと思いながらコーヒーを口に含んだ。
たしかさっきの事務員は秘書課の人だ。社長や役員のスケジュール管理をしていて、本部長に昇格した根津部長の予定も把握している。
彼のこのあとの予定なら、俺も知っている。
俺との対談だ。
ちなみに雑誌に掲載されはしない。カメラも立ち入らない。いたってプライベートな個人ミーティングだ。
お互いに多忙で、根津部長からはリモートを推奨されたが、俺は対面じゃないといやだった。しかしその場合、仕事前のわずかな時間しか合わず、こうして朝早くから眠い目をこすって事務所に来なければならなくなった。
睡眠時間は惜しいが、いたしかたない、俺が言い出したことだ。
根津部長と、話すべきことがある。
直接、顔を突き合わせて。




