変化
<レオside>
「ゼタ公爵令嬢について、報告しろ。」
人払いをした深夜の執務室で声を掛ければ、窓際のカーテンが小さく揺れた。
そこから漆黒の衣装に身を包んだ、長身の男が出てくる。
「…父親の領地経営補佐、主に孤児院や医療機関の運営・整備を担当。週に一回ほど、各孤児院を訪問、他にも私財で色々と事前活動を実施。」
「以前と対して変わらないな。」
ルカからの報告内容は、以前のゼタ公爵令嬢と変わらない。
「…変わった点もある。慈善活動を弟名義で行っていること、社交活動にはほとんど参加せず、現在社交界は次席のオルダ侯爵令嬢が仕切っている。」
「ーーーそうか。」
以前のゼタ公爵令嬢は、自分の能力を隠すような真似はしなかった。
それに社交界が移ろいやすいことを誰よりも理解している彼女が、影響力を失うとわかっていて活動を行わないなんて、明らかに以前と違う。
「原因は?」
「今のところ、不明。」
「公爵家で何かあったか?」
「過去半年を遡って調査、めぼしい出来事はなし。」
「…そうか。」
報告が終わると、ルカは音もなく去って行った。
原因は不明だが、半年ほど前からゼタ公爵令嬢の態度が以前と変わった。
まさか婚約破棄などと彼女が言い出すとは。
一瞬気を引くための駆け引きかと思ったが、微かに震えている彼女の手や、真っ青な顔色を見て本気なのだと悟った。
最近の彼女の行動を振り返って見ても、納得がいく。
原因を聞いてもきっと素直に答えたりはしないだろうと、下手に突っぱねて逃げられても面倒で誓約魔法を使用した。
実際、彼女の言う通り春色の乙女で皇太子妃にふさわしい女が他にいるのであれば、婚約を破棄しても構わない。
構わない、はずだ。
「レオ、何かあったの?」
静かに掛けられた声に視線を動かせば、執務室の入り口にカルカスが立っていた。
「ゼタ公爵令嬢に、婚約破棄したいと言われた。」
「へぇ? 死んでも皇太子妃の立場にしがみつくだろうって態度だったのに意外だな。」
一瞬目を見開いたカルカスが、すぐに微笑を浮かべて近寄ってきた。
「で?君はなんて答えたんだい」




