第一章最終話 ラキュラ
――ジャジャジャジャーン
「いらっしゃいませ〜」
――何で武器屋の入店音がベートーベンの『運命』なんだよ! アメイジアにもベートーベンいたのかよ!――
「あの〜、この店で一番安い剣が欲しいんですけど……」
こういうときは業物下さいとか言ってみたいけど、金欠だから仕方がないのだ。
「安い剣ですか……、ならこれとかどうでしょうか?」
今気づいたが、武器屋なのに店員が女性だし、結構かわいい……。
「それ、何ですか?」
「『ひのきのぼう』……ですけど。」
「でたぁ、某ロールプレイングゲームで最弱の初期装備! さすがにこれは嫌です! 他のありませんか?」
「じゃあこの『兵士の剣』はいかがですか?」
――おお、これはシュルツが持ってたな――
「それ買います。」
「毎度あり〜〜」
――ジャジャジャジャーン
うお! 忘れてた。店出るときは流すなよ。この曲音量デカいから心臓に悪いな……。
「でも、この剣かっこいいなぁ!」
じゃあ、さっそくラキュラ討伐といきますか。
――馬車にて
いまだ少し疑っている。ラキュラが霊族の者だったなんて。結構いい奴だったんだけどなぁ。
できれば嘘であってほしいな。
そしてホーキ村に到着した。
「1日ぶりだな。ん?」
それは無惨極まりない光景だった……。村の家は全て倒壊し、村人は全滅。血の匂いというのを実感した。送り込まれたソルジャー部隊はほとんどやられていて、生き残ったソルジャーは怯えて硬直していた。
――まずい、急がねぇと!――
久しぶりの全力疾走だったせいか、地面を蹴る感覚が妙に新鮮だった。うまく足が前にでない。腕を振っても足と合わない。
――フッ、緊張しているのか? 俺。――
ようやく村の中心に着くと、目の前にラキュラがいた。
「ほぉ、少しは骨のありそうな奴が出てきたか……。」
そのときのラキュラは昨日とは別人のようだった。八重歯が倍に伸び、服装はまさにドラキュラ! 面影は全く無い。 あ、もしかしてこいつドラキュラか……。
「ちなみに俺、戦闘経験0だから弱いよ。」
「0だと? 俺の目が衰えたとでも言うのか! ドラキュラに寿命は無いんだぞ!」
「やっぱお前ドラキュラか、ちなみに俺は3級ソルジャー中川大介だ。よろしく。」
「ん、お前は昨日の奴か。3級とか弱すぎだぞ。この俺様は霊の国の大王アヌビス様の右腕であり、魔将軍でもある。なぜお前はそんな相手に、たった一人で挑むというんだ。」
「命令だからだ。もういいだろ。こっちから行くぞ!」
俺は『兵士の剣』を抜き、ラキュラに切りかかった。だが簡単に避けられ、おまけに一発回し蹴りをかまされた。
「くそっ、やっぱ俺にソルジャーは向いてねぇな!」
すぐに立ち上がって、もう一度攻撃しようとしたが、ラキュラが魔法で反撃してきた。
「ダーク!」
急に自分の周りに漆黒の刃が現れ、一斉に俺に向かってきた。
――グサッ!
剣でガードしようとしたが、結局全部刺さった。めっちゃ痛い……。
「終わりだな。」
ラキュラがつまらなそうにため息を溢した。
「まだだ!」
「え、まだ生きてんの? 3級程度ならさっきダーク一発で全滅したぞ。」
「へへ、俺にもよく分からなねぇが、耐久力は人一倍あるらしいな。」
「だが、油断は禁物だぞ! そんなこと言う暇があったら立ち上がるべきだね!」
ラキュラがものすごい勢いで、こっちに来た。
本当に殺しにきたようだ。
――かかったな!
「油断したのはお前のほうだラキュラ、フレイム!」
異世界にきて初めて魔法を放った瞬間だった。
手の先から炎が膨れ上がり、ラキュラめがけて飛んでいった。
そこからは刹那の出来事であった……。
「何!」
急な魔法に驚いたことと、かなり大介に接近していたことにより、ラキュラは魔法をかわせなかった。顔面直撃である。
ひっくり返ったラキュラだったが、さすが王の右腕といったところか……。すぐに立ち上り、反撃に転じた。
だが大介は頭が良かった。ラキュラが死んでいないことを察知し先に背後に回り込んでいたのだ。
目の前にいたはずの大介が視界から消えたことに気付き、一瞬凍りついたラキュラを大介は見逃さなかった……。背後から剣で渾身の一撃をかましたのだった。
――手応えはあった――
ラキュラは倒れた。が、急いでテレポートの魔法を唱え、逃げた。
「ふぅ、どうやら勝ったみたいだな……。これが霊の国のNo.2なのかよ。3級ソルジャー相手に瀕死とか弱すぎだろ……」
なんとなく達成感が無かったが、大きな功績には間違いないので結構嬉しかった。
――よし、帰るか――
霊の国魔将軍ラキュラ敗走!
第一章 完結
これにて第一章は完結です。たくさんの方が読んでくれたおかげで、ここまで書くことができました。読者の皆さん、本当にありがとうございます。第二章もこの調子で投稿していく予定です。
これからも『転移先での国取り合戦』をよろしくお願いします。




