第二章1話 パートナー
――ガタガタガタガタ――
舗装されていない砂利道を通ると、馬車の乗り心地はかなり悪い。ラキュラとの戦いは極めて短いものだったが、受けたダメージは大きく、疲労感も強く残っている。着ていた白衣は返り血と土でひどく汚れていた。そんな状態の俺にこの振動の連打は正直辛い。
馬車の運転手のおじさんは見慣れているのか、血を見ても何も言ってこなかった。
「大介さん。王都が見えてきましたぞ。」
王都ロベルハイムに来るのはまだ2度目だというのに、この安心感はなんだろう……。医師の仕事を終え、我が家に帰ってきたみたいだ。
――あっ、やべっ!――
そこで大介は思い出した。アメイジアに来る前、勤務先の病院から呼び出されていたことを。
――完全にすっぽかしたぁぁ!――
患者は無事だろうか、スマホを携帯していてこんなに喜びを感じたのは初めてだ。
だが、電話をかけようと電源を入れると……
――圏外
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
でしょうね。そうなると思ったよ。
――もう病院なんて知ったことか!――
「大介さん。着きましたぞ。これからどこへ向かいますか?」
「王城です。」
「では、お気をつけて。」
そう言い残して馬車は去っていった。
昨日の酒場の前を通ると、なぜか大きな歓声と楽器による演奏が聞こえてきた。
「大介万歳!」
「おぉ、お前が大介か。霊の国の魔将軍を倒したらしいな! すげぇぞ大介!」
「大介さんが霊族を追い払ってくれたぞ! 今日は飲むぞー!」
――え、何でこんなに広まってんの?――
こういう風に誉められるのは苦手なので、さっさとロベルトに会いに行くことにした。
「あ、大介さん。王様がお呼びです! こちらへどうぞ。」
門番シュルツが気持ち悪いぐらい笑っていた。
いつもの長い階段を登り降りして王座の間に着いた。過呼吸に近くなっていたので、息を整えてから扉を開けた。
「ロベルトさん。ラキュラ倒してきましたよ。」
「おぉ、話は聞いたぞ。ご苦労だった。」
「これで俺は2級ソルジャーに昇格できますか?」
「最後は逃げられてしまったようだが、功績は十分だ。では、2級に昇格おめでとう。これが2級ソルジャーのバッジだ、受けとれ。」
「あぁ、バッジなんですね……。」
「ん? 何か不満か?」
――なんというか……ショボい――
「何でもないです。」
ロベルトからもらったバッジは、思っていたよりも綺麗で、美しく輝いていた。だが、文字の色と背景の色が同系色であるため読みにくい。これを作った技師は何を考えていたのだ……。
「それで、疲労している君には悪いんだが重要なことが今日決定した。君が倒してきたラキュラの行動を、我々国の重役たちは宣戦布告と捉えた。今から1週間後、霊の国と大きな戦争を開始する。目的はただ一つ。最弱の国である霊の国を完全に崩壊させることだ。」
「いよいよですね。つまり俺にもその戦争に参加しろと……」
「当然だ、アメイジアを統一するためとはいえ、まず人手不足を解消するために君を連れてきたのだからな。場数を多く踏んでもらわねば、こっちとしても困る。しかも、2級ソルジャーは大きな戦力だし、君はかなり強い。」
「お褒め頂いて光栄です。とか言う感じの流れですね。」
「今2文目は要らなかったぞ。まぁ、つまり、それまでしっかり休んでおけということだ。」
「わかりました、では失礼します。」
「待て大介! まだ話は終わっていないぞ。お前は確かに強いが、一人の力では限度がある。そこで提案がある。パーティーを組んでみないか?」
ロベルトの目は話しているとき、飛矢のようにまっすぐ見つめてくる。いつものことなのに、その目に改めて圧倒されるときが時々ある。
「パーティー……ですか。」
「そうだ。実は既に一人推薦している人物がいるんだ。3級の女アーチャーだが、筋はなかなかだ。これからのパートナーだから、仲良くやっていけることを祈っている。控え室で待っているから、迎えにいってくれ。」
「それでは、失礼します。」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
控え室の前まで来たが、結構わくわくしている。これから共に強靭の野を行くパートナーはどんな人なのだろう。
――ガチャ!――
自分のタイミングを探し、勢いよく扉を開けた。




