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月下の光芒  作者: チェックメイト斉藤
魔獣駆除組織スペース
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教えて!!サヤ先生!!【魔素とは】

「『教えて!!サヤ先生!!』のコーナー!!」


「何ですか急に」


 ミヒロさんたちと別れた翌日、今はラボの視聴覚室に私達は居ます。


「訓練も大事だが、せっかく僕の元で指導を受けるんだ。『そもそも魔素とは何なのか』ということについて知っておくべきだろうと思ってね。とはいえ、あまり分かっていることは多くないのだがね」


 確かに、サヤさんの言うことには一理あります。

得体のしれない力を扱うのは怖いですし、現状分かっているところまででも知っておきたいです。それに、私自身の興味も少しありますし。


「それじゃあ、始めようか」

部屋の照明が落とされ、スクリーンにスライドが表示されます。



「では、まず魔素の起源についてだが、これはまあ一般常識だな」


「2012年の爆発事件ですよね?」


「そう、当時の首都だった東京で発生した爆発事件の後の調査によって発見された新しい粒子だね。発生源は爆心地上空の赤い紋様、それっぽい見た目をしているから魔法陣と呼ばれているよ。魔素の濃度は魔法陣から離れるほど薄くなり、魔法陣から半径40kmほど離れた地点で濃度はほぼゼロになる。ちなみに、防衛区はそこから更に5km離れた半径50kmの円の中と設定されている。魔素の分布は風によって若干変化するから、余裕をもって設定されているわけだ。」



「なるほど」



 解説は続きます。


「次は魔素の性質についてだが、現状分かっているのは三つだ。まず一つ目、魔素は魔族の脳波に反応して自由に操作することができる。ご存知の通り、我々が『魔法』と呼んでいる現象だね。」


「昨日、攻撃魔法は見せてもらいましたけど、他には何ができるんです?」


「当然、攻撃魔法があれば防御魔法があるだろう?あとは飛行魔法、治癒魔法……主なものはこの4つだね。魔法についてはまた別の機会に解説しよう。」



「次に二つ目の性質だが、先程、魔族の脳波で魔素をコントロールできると話しただろう。脳波は小さな電気信号だ。魔族ほど自由自在ではないが、外部から電流を流すことで、魔素の動きはある程度コントロールできるわけだ。この性質を利用して、魔法攻撃補助システム『アルテミス』や、防衛区外周に設置された魔法防壁、それと、君らに魔法の力を与えた圧縮魔素強制伝導装置などが開発されている。魔族の魔法以外にも利用方法はあるということだ」


スクリーンには、でかでかとあの忌まわしい椅子の画像が貼り付けられ、サヤさんはニヤニヤと私を見つめています。


「……からかってます?」


「いやいや、滅相もない。次へ行こう」


 圧を感じたようで、サヤさんは急に真面目な顔になり、焦ったようにスライドは次へと進みました。


「三つ目は、金属中に蓄積するという性質だ。大気中に存在する魔素の濃度を1とすると、金属中には約500倍に近い濃度の魔素が蓄積されることが分かっている。ちなみに、金属の種類によって引き寄せられる魔素の量は大きく異なるのだが………まあ、この話は一旦置いておこう。ところでソラ君、魔素はどのようにして人体に取り込まれているか分かるかね?」


「へ?えっと、その………」


 突然の質問に驚きましたが、気を取り直して考えてみます。


どうやって魔素を体に取り込むか……。

姉は昨日の処置を受けてから魔法が使えるようになりましたが、それが魔素を体に取り込む方法だとすれば、魔法を使って魔素を消耗する度にあの処置を受ける必要があります。流石にそんなことは………無いですよね?

とすると、魔素は自然に体内に入ってくるものと考えることができます。一番ありえそうなのは………


「……呼吸、ですか?」


「惜しいね。間違ってはいないが満点はあげられない。魔素と体表が接触していれば、どこからでも体内に取り込めるというのが正解だ。呼吸をすれば魔素は空気と一緒に肺の中へ入ってくる。魔素は全身から取り込めるが、肺は表面積は大きいから割合としては呼吸で取り込んだ魔素がほとんどを占めるというわけだ。今回は惜しくも不正解だったが……、まあ、僕は慈悲深いからね。部分点をやろう。」


「ありがとうございます……?」


えっと、何の話でしたっけ。


「さて、もう一つ簡単な問題を出そう。空気中の魔素の濃度が濃い部屋と薄い部屋、両方の部屋に同じ時間ずつ入って、より多くの魔素を取り込めるのはどちらの部屋だと思うかね?」


「それは魔素が濃い部屋じゃないですか?」


「流石に即答だね。正解だよ。当然、濃度が高い方が魔素の吸収効率は良い。さて、『魔素が金属に蓄積される性質』、『魔素は全身どこからでも吸収可能』、『魔素濃度が高い場所からは効率よく魔素が吸収できる』以上の話を踏まえて開発されたのがこれだ。見覚えは無いかい?」


そう言いながらサヤさんがポケットから取り出したのは、金属製の輪っかでした。確かに見覚えがあります。


「ミヒロさんの腕輪ですか?」


「その通り。この腕輪に溜まった高濃度の魔素を皮膚を通して効率よく吸収できるというわけだ。と、随分話が逸れたが、魔素の性質については以上だ。魔素についてはまだまだ分からないことだらけだが、現在判明している三つの性質を上手く利用しているということを覚えておきたまえ。今回の講義は以上だ。」


「はい、ありがとうございました」

感謝の意を込めて、サヤさんに深々と頭を下げます。


 突然始まった講義に最初こそ困惑したものの、色々と興味深い話が聴けて面白かったです。

訓練なんかやめて、ずっと話を聞いていたいのですが………。



「さて、ちょうどいい時間だし、昼食を摂ったら訓練の続きといこうか」


「うわぁ………」


「今、露骨にテンション下がったね」




やはり、訓練からは逃げられません………。

【キャラクタ―、作中用語、設定解説】

・東京都爆発事件の爆心地

千代田区上空とされている。そこから半径10kmほどが焦土と化した。



・腕輪

魔素を効率よく吸収するために装備するマギア合金製の首輪。

内側に個人情報が記載されており、ドッグタグとしての役割も果たす。

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