コネ、できました?
不本意ながら、四日目の馬車の護衛は俺とテムになった。
ワイバーンは皮も、肉も、骨(粉にして磁器に混ぜるらしい)までも加工して使われるさすがにあの大きさの死体を持って行くほどの余裕はない。
なんやかんや言っても生肉であるので魔物を寄せる事にもなりかねないため、いくらか切り分けて討伐部位である首元の逆さに生えているトゲのような鱗──逆鱗をとって、肉を料理用にちょっととってあとは放置していこうとしたのだ。
しかし護衛の男が翼膜と皮をはいでから行く、と言いだした。
幸い町からはそれほど遠くないが、さすがに一匹分ともなると馬車には乗りきらない。
そのため護衛の男と、その仲間らしき数人が馬車を降り、その開いたスペースにワイバーンの皮と翼膜を載せることになった。
剥ぎ取りや処理はするからと売った金額の7割は俺、残りは馬車の皆で山分けにしようと交渉してきたので、快諾した。
元々捨てる予定だったものだ。路銀は多いに越したことはない。
護衛の男たちは徒歩で街まで来るらしい。
歩き通しでこの距離は大変そうだが、ワイバーンは皮だけでも小さめの家なら建てられるくらいの値がつく。
その価値はある、と判断したのだろう。
護衛の男たちは皮を剥いだり、商人がたまたま持っていた塩を買い防腐処理をしたりとテキパキと仕事を進め、翌日の朝には滞りなく馬車は発車していた。
馬車には詰め込まれたワイバーンの皮を入れた袋と、俺とテム、そして商人の老人だけだった。
「いやぁ、思わぬ収穫でしたなぁ。あなたと同じ馬車で、本当に良かった。お礼を申し上げます」
商人は白い髭の先を弄びながら、俺に話しかける。
「いえ、倒さなければ我々もまとめて喰われていましたし。運良く生き残れて本当によかった。」
「運、だなんて!あなたの実力は確かなものです。おかげさまで塩も全部売れましたし、今後ともご贔屓にさせてください。もしよろしければ、これを。」
老人は何かを腰につけた袋から取り出し、俺に手渡す。
受け取ったそれは、赤く輝く石のついた、黄金色のペンダントだった。
「いいんですか、こんなに高そうなもの……」
「いえいえ、命には替えられません。あのままならこの老いぼれの付け合わせになって、あのワイバーンの腹の足しになっていたものです。その首飾りには魔法がかかっておりまして、炎から身を守る加護があると言われております。あなたたちの冒険に役立ててくだされば、この老いぼれも冥利に尽きると言うものです。それと。」
老人は紙とペンを取り出し、何事かさらさらと書き付けた。そして文様の掘られた判子を押し、俺に手渡す。
「どこの街でも、この紋章があるわしの店に行くときは、ぜひその書状を見せてくだされ。商品をお安く提供させていただきます。」
その紋章に俺は見覚えがあった。いや、無い人間の方が少ないだろう。その紋章はどこの街でも店がある、で有名なダリウス商会のものだった。




