青髪の少女
──眩しい。
同時に土埃の匂いを鼻腔に感じた。
「ああ、やっと起きたね。良かった良かった」
緊張感のない声が聞こえた。目を開けると修道着のような服を纏った、青い髪の少女がしゃがんで俺の顔を覗き込んでいた。
俺は地面に寝かされていた。
瞬きを繰り返し目を慣らしながら周囲を見回す。
間違いなくさっきの戦いの場所だ。
あちこちの建物が痛ましく壊され、煙が漂っている。
「──俺は、死んだはずじゃ?」
「死んでたよ。そりゃもう見事も見事。あんな死に方をするのはそうだね……私は少なくとも見たことないや。」
「俺は、助けられたということか、君に」
「そうそう。感謝してくれてもいいよぉ。真っ二つだった君をまたひとつにしてあげて、あの世に行きかけの魂をよびもどて入れ直してあげたんだから。」
「感謝する……が、何故だ……?そしてあの怪物は……」
「安心して。あのデカブツはわたしがミンチにしておいてあげたから。」
あの怪物を、この少女1人で倒した?
にわかには信じ難いことだが、真っ二つになった俺を蘇生する程の魔法の使い手だ。おそらく真実だろう。
「そうか……助かった。俺ではどうにもならない相手だった。君は──」
「あたし、マーシュエって言うよ。」
「マーシュエ?珍しい名前だ」
「そうだね。君たちの所では珍しい名前かな。さて、あたしはそろそろ行こうかな。餞別と、快気祝い。これあげるね」
マーシュエが俺に差し出したのは、黒い宝石が鞘についた、どこか禍々しい雰囲気を放つナイフだった。
「君が戦って、どうしようもなくて、何を捨ててでもあの子たちを守りたいって思うなら──抜くといいよ。きっとそれは君を助けてくれると思う。同時に苦しめるかもしれないけどね」
と、横たわる俺の手にそのナイフを握らせる。
「それってどういう──」
「渡したからね。ちゃんと生き延びるんだよ。じゃあね」
俺が質問する間もなく、一陣の風が吹き、マーシュエの姿はかき消えた。
「なんだったんだ……」
俺はナイフを握り、体の痛みに耐えながら立ち上がると、フラフラと歩き始める。
5分も歩いただろうか、目の前にはミノタウロスだった怪物の亡骸が転がっていた。
逞しい上半身、四本足の下半身──そしてそのふたつは胴を真っ二つに切られ、別々に地面に転がっていた。
マーシュエの言葉に偽りはなかった、ということだ。
「これを──あの子が?」
突如現れ、俺を助けて去っていった、謎めいた少女。
俺に熱烈なファンがつくということはまず無いので──考えられるとすれば、ステラかテムを守ることが目的であろうか。後で2人に心当たりがないか聞いてみるか。




