生存と、帰投
大通りに出ると、そこもこっぴどく破壊されていた。
街の様子は惨憺たるものながら、行き交う人々はどこか安堵した顔をしていた。
怪我人が担架で運ばれていく横で、瓦礫を片付ける者、屋台で逞しく飯を売っている者。
打ち砕かれた日常の先で、それでも住民は日常を取り戻そうとしている。
「さて、テムとステラを探すか。無事だといいが」
ミノタウロスに潰されていなくても、その後で誰かに襲われないとも限らない。並の野盗なら2人で対処出来そうだが、2体目の魔物が出ないとも限らないし──そういや、今回の魔物出現の原因は黒い玉なのだろうか。だとすれば見つけないとまた魔物が出るかもしれないし──あとでステラに探してもらおう。
辺りを見回すが、2人の姿はない。
ここでウロウロしてても邪魔になるだけだろうし、宿に戻ろう。
宿の部屋に戻ると、机の上に黒い玉が置いてあった。
玉を手に取ると、やはりひび割れていた。
玉の下に置かれた紙には[口止め料♡誰にも言わないでね]と書いてあった。
おそらくマーシュエの仕業だろう。
宿まで知られているのか。怖。
ステラとテムに彼女のことを話すのはやめておこう。何をされるか分かったもんじゃない。
黒い玉が見つかったことでミノタウロスの出現は、やはりこれが原因であろうことが分かった。
そしてミノタウロスが蛹のようになり脱皮する前に聞こえたあの声──あれが黒い玉をあちこちにばらまいているのだろう。
それが類推できるようになっただけでも良しとしよう。
しばらくすると、テムとステラが宿に帰ってきた。
ギルドやら憲兵やらに調書を取られていたらしく、非常に疲れきった顔をしていた。
「レイノスさん……ご無事で何よりです」
「口だけじゃありませんでしたのね。少し見直しましたわ。あの化け物を真っ二つにするなんて……」
聞き捨てならない話が聞こえた。
俺が、あれを真っ二つにしたことになっている?
「待て、ステラ。ミノタウロス倒したのって──」
「レイノスさんですわよね?」
違う、と言いかけたが、マーシュエの伝言を思い出した。かと言って俺が切ったことにするには無理がある。いずれボロが出るのは確実だ。
「あの、実はだな。急に発生した真空波にやられてあいつは死んだんだ」
ご覧の通り俺は嘘が下手だ。
「冗談……?にしてはあまりにお粗末ですし、もしかしたら本当かもしれませんわね……?」
「レイノスさんに限って、そんなこと言うはずもありませんもんね……」
信じられた。嘘だろ。
「なんにせよ、功労者ということでギルドと自治会から報奨金が出るらしいですわ。せっかくですし今日も良いご飯を食べに行きましょう」
「ああ、そうだな」
ステラに誘われ、俺とテムは宿を出た。




