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進行、しました

洞窟の中は、恐ろしいほどに静まりかえっていた。地図を広げ、ランタンで照らしながら見ていると、ステラが言った。

「その地図、全く役にたちませんわよ」と。

彼女曰く、洞窟内はダンジョンと化しており、地形が変わっているらしい。

となるとマッピングしながら進むか、彼女が地図を持っていることに期待するか……

「マッピング担当は行方不明ですの。見つけられれば、少しは調査も楽になるかも知れませんわね」

「わかった。俺がマッピングしながら進もう。」

俺は羊皮紙と炭筆を袋から取り出した。ステラのパーティーに居たマッピング担当を見つけ出すことが最優先、という訳ではない。しかし俺もそこまで得意な作業ではないのでできれば見つけだしたい。

生きていればなお楽だが、そこまで期待はできない。

「なあ、あんたらがここまで手酷くやられた相手は、どんな敵だ?遭遇する前に聞いておきたい」

「暗くてあまり見えませんでしたの。それにやたら素早くて……気がついた時には先頭にいたルースという戦士が血を吐きながら倒れていましたわ」

素早い魔物か。

情報がないよりはマシだが、その情報によって対処するのは難しいだろう。

姿でも見られれば魔物を特定し、その特性から対策もできるが、それもないとなると全方位に警戒を続けるしかない。

「どのあたりでの話だ?」

「正確には覚えておりませんわ。もっと奥の方に進んで……あそこが最深部であれば良いのですが……」

ダンジョンの奥地に居を構える魔物。

であればよいのだが、時折魔物が外に出るというこの洞窟ではその情報すら保証にはならないのだ。

洞窟の曲がり角や洞などには時折デミドラゴンやレッサーデビルなどが居たが、テムが危なげなく撃破しているおかげでマッピングに集中できる。

「こうもやすやすとデミドラゴンを撃破しているあの子はいったい何者ですの……?」

「ただの勇者様だ。まだ例の敵のいるあたりじゃ無いよな?」

「え、ええ……勇者、様……?」

ステラは怪訝な顔をしていた。

勇者は王が選んだ精鋭と魔王討伐の旅に出ている、と公には言われているからだろう。

俺が精鋭には見えないという事でもある。失礼な。

「色々事情があってな。」

「そうなんですわね……訳あり、って事みたいですわね。わたくしも……」

俺達が話している目の前で、テムがデミドラゴンの鱗を突きで貫き、一撃で脊椎を裂いて無力化する。

テムの実力がこの洞窟でも通用するものと判断したため、俺のマッピング効率とステラの魔力温存のため、彼に敵の撃破を一任しているが、今のところなんの問題もなく、彼の戦闘ぶりは素晴らしいものだ。

あの気弱な、数ヶ月前まで自ら命を絶とうとしていた少年にはとても見えない、圧倒的な成長ぶりだった。

成長の速さや能力を補助するという、勇者の力によるものもあるかもしれない。

しかしその技術は、感動すら覚えるほどの滑らかな太刀筋は、紛れもなく彼自身の修練によるものだ。

「二人とも、何話してるんですか?行きましょう」

テムが剣を納め、俺とステラに呼びかける。

「ああ、悪い。今行くから。 行くぞステラ。後でまたゆっくり話をしよう」

「ええ」

デミドラゴンの亡骸を跨ぎ、俺達は洞窟のさらに奥に進んで行った。

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