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華風皆殺し娘の交渉術  作者: 微睡 虚
第九章 拳国恩讐編
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兄弟弟子の行末

覇兇拳の看板を背負う現役世代の弟子達――」その進路が語られます。


 失った時間を埋めるように拳を交わす師弟。

 新技の伝授などはなく、鎧兜(カイドウ)は今まで身に着けた技を披露し、老仙(ラオシェン)がそれに応える形で受け止めどれだけ研磨されているか見定めているようだった。


 しばらく組手を続けていたが、やがてどちらともなく拳を引く。双方に呼吸の乱れは見えず《膂族》の血を継ぐ者同士まだまだ戦えそうである。二人が戦いを止めたのは昔の癖からだ。ちょうどこの感覚で休憩を挟んでいたのだろう。


 (ホン)(タン)が入れ直したお茶をすすりながら縁側で一服を始めた。鎧兜(カイドウ)も古巣に戻ったことを認識したためか顔を隠す兜を軒下に置いた。

 古傷が痛々しい歪んだ顔を一瞥した老仙(ラオシェン)は自嘲気味に呟いた。


鎧兜(カイドウ)、運命とは数奇なものよな……袂を分かったお前と再び茶を飲むことになるとは」


「師父、そういえば巷で覇兇家の使い手が暴れてるって聞いたぜ?」


「……っ!? 既にお前も耳にしたか。ワシも師範として討伐に乗り出しておるが、《仙絶血砕流(センゼツケッサイリュウ)》の下っ端は成敗できても首領は見つけられん。気配を消すのが上手いことじゃ」


「どこのどいつか知らねーが、雲深(ユンシェン)はどうした? あの生真面目なクソガキは真っ先に討伐に動きそうだが……?」


 鎧兜(カイドウ)の口から雲深(ユンシェン)の名が出た事に驚愕する老仙(ラオシェン)(リー)雲深(ユンシェン)こそ鎧兜(カイドウ)の顔面に消えぬ傷を残した弟弟子の名前である。鎧兜(カイドウ)の自尊心を大きく傷つけた存在であるが、普通に名前を口にするほどには割り切れたであろうことを察した老仙(ラオシェン)は少し頬を緩めた。――がすぐにその顔が暗くなる。


雲深(ユンシェン)は帝都に招集された。《帝献十二将(テイケンジュウニショウ)》に指名されたのじゃ」


 師弟水入らずを邪魔しないよう端で聞いていた一紗(イーシャ)美鳳(メイフォン)に耳打ちした。もちろん耳慣れない言葉の意味を尋ねるものである。


「《帝献十二将(テイケンジュウニショウ)》とは、始皇帝の天下統一に貢献した十二人の臣下達の子孫からなる武将達です。代替わりしても帝国の安寧を守ることを第一とし、その地位が継承されるのです」


「紅帝に次ぐ権力が与えられるって話よ。護帝覇兇拳を扱う《膂族》、刑楽(シンラ)の襲名者の《戮族》、智慧の軍師《俐族》、剣に優れた《魏族》とかその世代を代表する猛者達が選任されるわ」


(あれ? でも七代目・刑楽(シンラ)は自由気ままに傭兵活動してたような……?)


 今重要なことではないため頭に浮かんだ疑問を飲みこんだ一紗(イーシャ)老仙(ラオシェン)の話に耳をそばだてた。


「ケッ、昔から仕来りを順守するつまんねェ野郎だったからなァ、お似合いだぜ。暴君の親父に尻尾振ってやがるのかよ。ンガガガ!!」


「嗤ってやるな。長らく護帝覇兇拳の使い手を空席にしておくことはできぬと紅帝自らが手下を率いてやってきたんじゃ。従わぬなら力づくで屈服させると」


 それは事実上の脅迫だった。やり口は強引であるが、帝を守る盾の役目を順守するという意味では紅帝に正当性があったのも事実だ。ルールを守るため、そして《膂族》と【拳国】の未来を守るために(リー)雲深(ユンシェン)は従わざるを得なかった。


「ワシと雲深(ユンシェン)が力を合わせたところで双方血が流れるだけ。実のある結果にはならんかったじゃろう。ワシも年を取りすぎた」


 老仙(ラオシェン)は五代目紅帝と《帝献十二将(テイケンジュウニショウ)》の力は自分と愛弟子以上だと推し量ったのだ。良くて相打ちでは【拳国】は帝国残党に攻め滅ぼされるだけ。ならば未来を繋ごうと雲深(ユンシェン)は五代目に恭順を誓うこととなったのだ。それを制止する力も老いた老仙(ラオシェン)には残っていなかった。

 紅帝は老仙(ラオシェン)をはじめ若く名のある《膂族》を徴兵していってしまったのだ。


「憐れなもんだなァ。始祖の血才を継いだ二人の内、一人は(オヤジ)の玩具、もう一人は覇道を進んでるんだからよォ」


「もう一人じゃと!? お前はもう(ハイ)(ゲン)に会ったのか!?」


「いンやァ、途中兄者に滅ぼされた国を通ってきただけだ。仲間を集めてるみたいだぜ?」


「やはりか。『紅帝の下には就けぬ』と、『自らが天に立つ』と(ハイ)(ゲン)は【拳国】を去っていった。あ奴は本気で天下を取るつもりなのか……」


 老仙(ラオシェン)は大きく肩を落とした。弟子達の中でも主席が野心に燃え、次席は暴君の駒に取られてしまったのだからその嘆きは計り知れない。巨躯の老体が小さく見えるくらいに彼は思い悩んでいる様子だった。


「俺もこの間まで覇道に生きていたからなァ。まともなのは秀英(シュウイン)だけか。アイツがいりゃァ《仙絶血砕流(センゼツケッサイリュウ)》なんて破落戸がのさばることもなかったのによォ」


 笑う鎧兜(カイドウ)の顔面にいきなり煮え湯が浴びせられた。

 湯呑の中身を放ったのは(ホン)(タン)だった。彼の眼はつり上がり怒気が感じられる。


「師父の前でよくもそんなことが言えるな! 恩知らずにも《仙絶血砕流(センゼツケッサイリュウ)》を立ち上げ、その首領となったのは他でもない! (ジャン)秀英(シュウイン)なんだぞ!?」


「…………は?」


 最初言葉の意味が分からなかった。鎧兜(カイドウ)の記憶にある(ジャン)秀英(シュウイン)は高潔な男だった。強きをくじき弱きを助ける。類稀なる拳才に胡坐をかかず努力家でもあり、博識で優しい男だった。修業中、何度彼に励まされたか知れない。

 間違っても女子供構わず皆殺しにする破落戸共の首領になる男ではなかったはずだ。


「おい、鎧兜(カイドウ)秀英(シュウイン)って」


「ああ。俺のダチだ。だが俺の知ってる奴と《仙絶血砕流(センゼツケッサイリュウ)》首領が噛み合わない」


 一致するところを無理やり探すとするならその強さだろうか。他の流派の門下生が復讐を諦める程に恐ろしく強い覇兇拳使いというのは秀英(シュウイン)の実力と相違ない。

 だがやはり子供や身籠っている女性をも手にかける賊にまで身を落とすとはとても思えない高潔な人物だったのだ。


 彼の人格者としてのエピソードは枚挙にいとまがない。

 (ジャン)秀英(シュウイン)は孤児だった。元々はさる豪族の出身だったが、乱世の中で盗賊に親兄弟を殺された彼は身一つで旅をすることになった。


 彼は生き残るには力が必要だと悟り、護帝覇兇拳を学ぶために【拳国】を目指した。

 驚くべきことに彼は出会った孤児を全て仲間として拾い上げ、彼らを守りながらこの国へとたどり着き『護帝覇兇拳道場』の門を叩いたのだ。


 戦う力を持たず後ろ盾もなかった孤児たちを秀英(シュウイン)は救ったのだ。

 ちょうど鎧兜(カイドウ)は覇兇拳門下に入ろうかと話を進めていたところだったので、乳飲み子を抱えて十人もの子供を引き連れて険しい階段を登ってきた同年代の少年に舌を巻いたことをよく覚えている。


 秀英(シュウイン)鎧兜(カイドウ)と同時期に門下と認められた。その頃は《膂族》だけでなく多種多様の民族がともに修業をしていた。

 体躯に恵まれた《膂族》ではない異民族の子供は何人かすぐに根を上げていたが、《膂族》の血が一滴も流れていない秀英(シュウイン)は食らいついて常に上位の成績を残していた。

 無名の民族出身の彼が頑張る姿に背中を押された者も多かった。鎧兜(カイドウ)もその一人である。


『お前、根性あるなァ』


『そりゃお互い様さ。鎧兜(カイドウ)、明日の組手はお手柔らかにたのむよ』


 腰が低く、謙遜癖はあったが、彼は自分に自信がない訳ではなかった。

 一度決闘となれば全く手加減などなく鋭い拳が唸った。

 鎧兜(カイドウ)も何度彼に技を決められたか覚えていない。

 どちらかが勝てば敗けた方が鍛錬し直してリベンジする。二人は良きライバルとして、また親友としての関係を構築するまで長くはかからなかった。


 また秀英(シュウイン)は年下門下生の面倒もよく見た。師父・老仙(ラオシェン)は世話好きではあったが、何百という門下生すべてを対処するには手が足りない。そんな師の力になるべく掃除洗濯料理と彼は何でも手伝っていた。


『秀兄! どうしたら料理おいしくなるの!?』


『ははは、雲深(ユンシェン)は調味料で誤魔化し過ぎだ。もっと素材の味を活かさないと。お前は拳法の才はあるのに料理は苦手のようだな』


 幼き雲深(ユンシェン)もまた秀英(シュウイン)を実の兄のように慕っていた。

 食べ盛りの男の子達はすぐに御碗を空にしてしまうため、秀英(シュウイン)が密かに自分の分を分け与えていたのを鎧兜(カイドウ)はよく覚えている。

 修業の最中に腹の虫を鳴らす秀英(シュウイン)を見ていられず鎧兜(カイドウ)は師父の桃をくすねて分けてやったこともあった。


『師父には内緒だぜ?』


『これ師父が大事に育ててるやつだろ? 食えないよ』


『バーカ。お前ェが倒れたら誰が雲深(ユンシェン)達の面倒を見るんだ? 必要経費ってやつだぜ。食え』


 腹の虫には勝てず、押し付けられた果実を一口齧る。

 空腹には効果覿面の甘味が口いっぱいに広がる。


『これで俺も共犯か……ハハハ。悪ガキになったもんだ』


 勿論、鎧兜(カイドウ)が秘蔵の桃を盗んでいるのを老仙(ラオシェン)は分かっていたが、それが兄弟弟子の面倒を見ている秀英(シュウイン)を慮ってのことだとも看破していたので黙認されていた。

 そして拳法や家事ばかりではない。秀英(シュウイン)は文武両道だった。

 座学においては赤点で居残り常習組だった鎧兜(カイドウ)に算術や文法を教えてくれたのも彼だった。


『悪ィな。どうも俺ァ、計算が苦手でよォ。大体漢字もこんなに使わねェだろ』


『そうでもないさ。正確な経孔の名前はこの難しい漢字を使うものもあるし、戦闘中に経孔の正確な場所を把握する上でも目測からの演算が必要になる』


『ハァ~、覇兇拳は体鍛えるだけだと思ってたのによォ』


鎧兜(カイドウ)は皇族だから俺より学問は得意だと思ってたよ』


『お前ェも意外と底意地悪いよなァ』


 時に遠慮のない物言いをすることもあったが、それは腹を割って話せる友人だったからこそである。

 やがて基礎的な体力づくり、氣巧武術の体得、基礎座学の履修を終えた二人は本格的に覇兇拳を修練するようになる。


 ここで一気に脱落者が増え、三桁いた修練者は日に日に数を減らしていった。昨日まで共に夢を語り、同じ釜の飯を食っていた兄弟弟子が過酷な修業の果てに夢敗れて去っていくのだ。鎧兜(カイドウ)は何度心が折れかけたか知れない。特に修業成績が悪かったときにそりが合わない兄弟弟子にちょっかいを掛けられた日は最悪だった。


『今日で成績下位の門下生は軒並み脱落した。繰り下がりで晴れてお前が最下位だ! 鎧兜(カイドウ)!』


 いつも居残り補修を受けさせられる鎧兜(カイドウ)を煽ってくるのは腹違いの実兄・満喰(マンスン)だ。持ち前の模倣能力をいかんなく発揮し、覇兇拳の技の覚えも良かった。まだ驕り癖が薄かった最盛期の彼からしてみれば丁度良い揶揄い相手に映ったのだろう。


『落ちこぼれの鎧兜(カイドウ)もどうせ脱落するんだから今日の能無し共と一緒に出てけば良かったじゃねーか。いつまでしがみついてんだかなぁ! みっともねぇ!』


『人をおちょくるのも大概にしてもらおうか兄者!』


 安い挑発であるが、本当に師に見限られたことを想像してしまった鎧兜(カイドウ)は耐えられず拳を向ける。だが満喰(マンスン)は馬鹿にしたような動きで難なく躱して見せて同じ技を鎧兜(カイドウ)に当てた。


『ハッ! 覇兇・瞬痛拳か。右頬の経孔を突き、十数秒間相手は氣を練る度に激痛が走るようになる技だ。落ちこぼれのお前と違って俺は二年前に習得済みだぞ~!』


『ぐっ!』


『痛むか、鎧兜(カイドウ)、同じ技でも使い手が違えば威力も異なる。帝位も伝承者の座も俺のものだ。ククク、折角だ。俺の手で二度と拳を振るえぬ体にしてやろう!』


 万事休すかと思われたとき、満喰(マンスン)は急に動きを止めた。ひどい脂汗を流し全身の体を震わせて狼狽している。彼が氣を練ろうと右腕に集中した瞬間、その殆どが逆の左足の方に流れてしまう感覚を覚えた。まともに指を動かすこともできない。

満喰(マンスン)は物陰から姿を現した人影を睨み付ける。


『こ、これは……〈覇兇錯流拳〉!? 貴様、秀英(シュウイン)か!』


『貴方の模倣技術は大したものだが、注意力散漫すぎる。勝利を確信したとき油断せぬこと、自信を持つことと驕ることは似て非なるもの、師父の教えに耳を傾けるべきだ』


 十数秒後、氣の流れが正常化した満喰(マンスン)は「覚えていろ」と捨て台詞を吐いて自分の寝床へと帰っていった。

 地面に倒れる鎧兜(カイドウ)秀英(シュウイン)は優しく手を差し伸べる。


『挑発なんていつもの如く無視すればいいだろう? 今日はどうした?』


『俺は才能がねェかもしれねェ。(ハイ)(ゲン)の兄者は圧倒的だし、満喰(マンスン)も多くの技を体得してる。雲深(ユンシェン)のガキにも座学では追い抜かれちまった。秀英(シュウイン)はこの前兄者達に一本とってただろ? 俺はお前らに比べたら功績残せてねェし、もうここにいるべきじゃねェのかも……』


『バカヤロウ!』


 凄まじい正拳が鎧兜(カイドウ)を打った。

 温厚な友人にいきなり殴り飛ばされるとは思っていなかったが、その拳は迷い霞がかっていた鎧兜(カイドウ)の思考を晴らすに十分だった。


『才能がないなんて言うな! 今日涙を呑んで去って行った兄弟弟子達に悪いと思わないのか! 共に競った俺がお前の才を保証してやる。お前だって俺に勝ったこともあるだろう!』


秀英(シュウイン)……』


『俺は知ってる。(ホン)鎧兜(カイドウ)がここで終わる男ではないことを。――そうだろ?』


『……ああ。あァ! そうだとも!』


 親友に励まされたことで鎧兜(カイドウ)は自信を取り戻した。

 彼の言葉は哀しみ傷ついた心に非常に刺さった。修業のさなかに兄弟弟子を殺してしまったときも師父と秀英(シュウイン)のおかげで立ち直れたようなものだった。


 また、彼の優しさは人間にのみ向けられたものではなかった。

 妖魔に襲われ傷つきながら道場の敷地に逃れてきた小鳥にも慈愛の心が発揮された。


『可哀想に……』


『弱肉強食だろ? ここで命尽きるのがその鳥の運命ってもんだぜ。放っておけよ』


『妖魔に襲われて致命傷を負ったのが運命なら、俺の眼に止まったのもまた運命だ』


 既に覇兇拳の大半をものにしていた秀英(シュウイン)は人体だけでなく動物の氣の流れをも把握していた。生命力を活性化させる経孔を正確に突き、治癒力を高めさせた上で再び羽ばたけるまで世話を焼いてやったのだ。


 どれもこれも親友の優しさが色濃く表れたエピソードである。

 彼は間違っても凶拳を振るう男ではなかった。

 確かに始祖の血才を最優先する道場の真実を知ったのはショックだろうが、それでも女子供を手にかける程に魔道に落ちるとは思えなかった。


「嘘……だろ? 何かの間違いじゃねェか?」


「嘘なもんか! 秀英(シュウイン)は私の家族を目の前で皆殺しにしたんだ!」


 (ホン)(タン)は怒りをぶつけるように鎧兜(カイドウ)の胸を殴ってから自室へと駆けて行ってしまった。相変わらず軽い拳であるが今までで一番痛みを感じるものだった。

 まさか友人が起こした蛮行の被害者が身近にいるとは思っていなかった鎧兜(カイドウ)は言葉を失ってしまった。視線だけで老仙(ラオシェン)に訴えかける。


「すべて……ワシのせいなんじゃ。秀英(シュウイン)が設立した《仙絶血砕流(センゼツケッサイリュウ)》とはその名の通り仙人の血筋《(リー)家》と《(リー)家》を絶滅させるためのもの。それだけあの子の怒りは知れよう」


「《(リー)家》? そう言えば(ホン)(タン)も同じ姓ね」


「左様。(ホン)(タン)の血筋は覇兇拳二大本家が一つ《(リー)家》の正当血統。故に秀英(シュウイン)の標的にされてしもうた。辛うじて救えたのはあの子だけ。父母と姉は既に絶命しておった」


「……ということは《仙絶血砕流(センゼツケッサイリュウ)》が道場破りをしていた対象の師範達はもしや……」


「ああ。察しの通り二大本家の血筋じゃ。仙人の血筋が皆、覇兇拳ばかりを極めていたわけではないからのぅ」


 初めから狙いは血筋の断絶。『月閃夜照拳(ゲッセンヤショウケン)』が標的から外れていたのは仙人の血縁者ではなく全く関係のない外から来た者達だったかららしい。


「爺サン、二大本家とやらの生き残りは後何人いるんだ?」


「この国にいる直系はワシと(ホン)(タン)のみとなった。じゃが秀英(シュウイン)の怒りは収まらん。最近では遠縁の分家筋でさえ狙っておる。幼子も老人も若い娘も皆殺しじゃて……」


 現場を見た老仙(ラオシェン)は絶句していた。

 自分が手塩にかけて育てた愛弟子が自分が教えた技を使って自分の親族を凄惨に殺し尽くしていたのだ。蘇生の可能性のない確実に命を奪う拳だった。(ホン)(タン)のみでも救えたのは僥倖であったといえるくらいだ。

 鎧兜(カイドウ)は親友の変貌ぶりにただただ困惑していた。




帝献十二将(テイケンジュウニショウ)》はかつて天下統一に貢献した民族の代表達のために用意されたポストですね。

五代目紅帝は民族採用ルールは辛うじて守っているものの修羅なので完全実力主義で採用しております。

帝都を落とそうとする者が絶対に闘わなければならない最後の修羅達です。

独立を勝ち取った五大民族達が今尚帝都に攻めない理由でもあります。


※余談ですがこの名称もっとゴテゴテした漢字の羅列にしようかと考えてましたがシンプルな感じに落ち着きました。

 帝国と皇帝に貢献する将まんまですね。由来は史実にある武廟六十四将です。


鎧兜(カイドウ)の顔を潰した弟弟子の雲深(ユンシェン)は《帝献十二将(テイケンジュウニショウ)》として招集されました。

不可抗力感ありますが傍から見れば暴君を守る傍盾人なので民から畏怖されています。


兄弟子の(ハイ)(ゲン)は己の拳に自信はありますが愚か者ではないので

帝とその軍全てを単騎で相手取るのは厳しいと即決し対抗すべく配下を集め出しました。


そして親友・秀英(シュウイン)は《仙絶血砕流(センゼツケッサイリュウ)》を組織し、首領として仙人の血統を狩りだしました。


鎧兜(カイドウ)もちょっと前まで殺戮を繰り返した挙句、妹の国を奪っていたので

(ホン)(タン)は四人を最悪の世代だと唾棄していました。

生き残った老仙(ラオシェン)の弟子達は皆強く育ち、全員が悪名を轟かせているわけです。


四人の中では秀英(シュウイン)は一番の人格者でした。

鎧兜(カイドウ)も彼の人柄に触れてきたため女子供まで抹殺する変貌ぶりに戸惑いを隠せません。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 帝国が、魏族の所にもちょっかい掛けていたけど、あれも魏族に開国と隷属を強いていたのかな。 [一言] もう覇兇拳の流派は、滅茶苦茶になっているよww。 秀英は、余りにも生真面目過ぎた故…
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