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第13話 前編〜北国出身だからってスキー得意って決めつけるな

 

 ゲレンデ効果を知っているだろうか?

 ……すまん、俺も知らない。だからこそみんなに聞いたんだが。


 何故いきなりこんな話題を切り出したかというと……。


「イヤッフゥゥゥゥッ!! スキー場キタァァァッ!!」


 毎回、何故叫ぶんだお前は。

 そんなわけで、俺たちはスキー場にやって来たのだ。どうやら人気のスポットらしく、平日だというのに結構多くの人で賑わっている。

 ちなみに俺らは振替休日で来てる。決してサボりではないとだけは断っておこう。


 あ、俺らって言ったけど、もちろんあの2人もいる。

「夏香先輩、楽しそうですね」

「楽しそうじゃねえ時なんてあったか?」

「いっつもエンジン全開じゃない、夏香なんて」


 残念! 陽室がいると思ったか!? いねえよ! やったぜ!!

 まあ代わりにヒヨコ先輩がいるが、奴に比べれば聖人クラスだ。冬乃と2人合わされば、夏香(あのバカ)のブレーキ役としては十分。

 俺の負担はゼロだ!


「あっ! ふゆのん、あそこにハシリウオのソリが!!」

「えっ!? 本当だ! カワイィィィ!!」

「ま、待ちなさいよ2人とも! 私だけハブるなんて許さないわよ!!」


 ……前言撤回します。




「おっとっと」

 ん〜、やっぱり感覚は簡単に戻らないな。

 何せスキーなんて何年振りか分からないからな。確か小学校以来だっけ?

「へ〜、中々やるじゃない」

 と言いながら、ヒヨコ先輩がスノーボードで滑り降りて来た。

 ゴーグルを上げ、白い息。これが噂に聞く、ゲレンデ効果……なのか?

「先輩は普通に滑れるんすね。そんなイメージありませんでした」

「ふふん。まぁお茶の子さいさいってね。もっと何かいう事ある?」

「ペンギン先輩に改名しましょうか」

「それ冬の間しか使えないじゃない!」


 などと話していると、上の方から気持ち悪いデザインのソリが滑り降りて来る。

「先輩方、滑るの上手ですね! 私はソリしか滑れませんよ……」

「その前にあんた……ソリを普通のにしなさいよ。何だってそんな……」

「だって可愛いんですもん!」

「いや気持ち悪い、純粋に」

 そもそもこんなキモいソリを何故作ったんだ。誰が乗るんだよ、こんな見てるだけで正気を失わせるソリ。

「ところで、夏香先輩は?」

「あいつなら麓で雪だるまでも作ってんだろ。どうせ今にくだらねえものを……」

「おーいみんなー! 来て来てー!!」


 ほらな。

 どうせハシリウオとかメイちゃんとか、そんな感じの雪像を作ったに違いない。俺は驚かんし、突っ込まんぞ。


「見て見て、メイド服を来て恥じらう奏ーー」

「デェイヤァァァァァァッ!!」

 俺はスキー板を一瞬で外し、忌まわしい雪像へドロップキックを食らわせた。

「ふわぁぁぁっ!? 何で壊しちゃうの!?」

「誰も幸せにならねえ雪像作りやがって! 一体どこからこんな発想を得たんだよ!」

「ビビッと閃いた! 私の脳に電流走った!」

「そのまま焼き切れちまえ!」

 俺の心にヒビを入れる兵器を創造して何が楽しい。

 ていうか、そのにへ〜っとした顔やめろ!


「でも奏、隣の人はもっと凄いよ!」

「あ? 隣?」

 横を見ると、何処か見たことあるような少女の雪像だった。マフラーや服、恥じらったような表情はまるで本物のようだ。

「確かに凄いが……どっかで見たこと……?」

 と、ウェアに身を包んだ男性が雪像の陰から現れる。製作者だろうか。その少女雪像の手に何かを持たせている。

 俺は作品の行方が気になり、男の背後からその正体を確かめた。


「よし、やっぱりこのチョコに(奏先輩、ふゆのんは先輩にLOVEです)って書いたのは正解だったな」


「それはダメだぁぁぁぁっ!!」

 俺はその男ーー陽室の頭を雪像に叩きつけ、埋め込んだ。

 何でいるんだよ! 何なんだよ! 一度くらい俺に安息をくれよコンチキショウ!!

 それもそうだがこのチョコ! 見つかったら夏香と冬乃双方から袋叩きに合う! 早く破壊しなければ……


「硬いなこのチョコ!! 釘でも打てるんじゃないか!? 一体どう作ったらこんなーー」


「奏〜? どったの?」

「奏先輩、そちらの方は?」


 あ、まずいなこの状況。


「何でもないし、こんな奴知らねぇ!」

「ん〜? この雪像、ふゆのんに似てない?」

「ににに似てねえよ!! どっからどう見ても別人だろ!」

「先輩、さっきから何を後ろに隠してるんですか?」

「隠してねえし!! これ休めの姿勢してるだけだから! いいからお前らあっちに……」


 その時、俺の手からチョコがひょいっと取り上げられた。

 震えながら振り向くと、そこにはクルクルパーマ。


「何これ? チョコ? (奏先輩、ふゆのんは先輩にLOVEです)って……うわぁ、引くわぁ……」


 バキッと、何かが折れる音。ビキビキと何かを鳴らす音。


 それらの音の先には、形相が鬼と化した夏香と冬乃の姿が。


「……取り敢えず、これ作ったの誰?」

「そこにいる……陽室くんです」

 激昂して敬語をかなぐり捨てた冬乃は、雪像に埋まった陽室の頭を引っ張り出した。

「先輩……遺言は?」

「雪像の胸囲はBにしておいた。感謝してくれてもいいのよ?」


「そりゃありがたいですねいっぺん死んで反省しなさいコラァァァッ!!!」


 次の瞬間、陽室の頭がもう一度雪像に叩きつけられ、雪像は木っ端微塵に吹っ飛んだ。


「ひぇぇ……」

「さて夏香先輩、陽室先輩どうしましょう?」

「そのまま雪だるまにしちゃいなさい」

「オッケーです」

 そんな会話をよく笑顔で出来るなお前ら。


 と、油断している場合ではない。この流れだと次は……、

「奏」

 来た。

 いや、よく考えなくても俺被害者だし。でも夏香の顔は怖いし。ふ、震えが止まらない。

 い、嫌だぁ……俺は嫌だぁ……。


「あのチョコのこと、本当じゃないよね?」

「……は? いや、え?」

「実はふゆのんが好きだったとか……私にはもう飽きたとか……」

「……いや、ないけど」

「本当? 本当に本当?」

「本当だよ。ありゃ陽室のデタラメだ」


 ……あれ? 何でこいつ泣きそうな顔してるんだ?

 いやいや、瀬ノ森の時はあんなに怒ってたのに、何で急に?


「よ、良かったぁ……奏がふゆのんとランデブーしたら、私どうしたら良いか分からなくなるところだったよぉ……」

「はいはい、泣くな泣くな」

 ボロボロ泣きだした夏香の背中を撫でてやると、そのまま顔を俺の胸に埋めて来た。



 ……いや、何これ?

「あんたらウィンタースポーツしに来て、何でバレンタインみたいな事やってんのよ」


 ごもっともだよ。



 続く

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