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黒竜の養女となったノーラさんの備忘録  作者: 蔵前
恋愛も結婚も持続させることこそ大変なのね
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発展するにはどうするの?

 我が親友のモニークとイヴォアールが恋人同士という事は周知の事実となっているにも関わらず、彼等は未だにダグドに付き合いを認められていないどころか、イヴォアール限定でダグドからの意地悪を受けている。


 それはなぜかと彼らはいつも小首を傾げているが、ふわふわしているモニークには思いつかなくても世事に詳しいイヴォアールが気が付いていないのはおかしいと、相談されるたびに私こそ首を傾げてしまう。


 普通は父親にお付き合いの許可を得るものなのである。


 彼らが結婚とか、そういった将来的に絶対なお付き合いを目指しているのであればってことだが。


 そして、二人の付き合いの許可を彼らがダグドに求めない事で、将来の確約が無いのにモニークに手を出しているってダグドは考えているに違いなく、そこでのイヴォアールへの嫌がらせや排除行為なのだと私は考える。


 なぜ相談してきた彼らに私がその考えを教えてあげないのか。


 もちろん、私が意地悪をしたいからではなく、二人の目標が結婚なのかただくっついていたいだけなのか、二人が自分達の関係を見直した時にダグドへの挨拶を思いつけば良いと考えるからだ。

 そう。

 カイユーが私に何も差し出すものがないからと、自分を選んだ私に対して罪悪感でビクビクしている姿を見れば、イヴォアールがダグドに挨拶に行かないのは、敢えてモニークから彼も一歩引いているのかもしれないと推測できるからでもあるのだ。


 戦場で死ぬかもしれない自分にモニークを一生縛りつけたくはない、そんな馬鹿みたいな考えだ。


 唇にキスとかキスとかキスとかしているくせに!


 フェールがカイユーに言い放ったように、後釜、というものがあるという事をイヴォアールに教えた方が良いのだろうか。

 婚約しなくても、結婚していても、お前が死んだらモニークの幸せのために私達は別の恋を彼女に勧めるぞ、って。

 まあ、とにかく二人のことは二人で考えればよい。


 私はカイユーの事で一杯だ。


 彼と私は告白し合い、気持ちの確かめ合いもしたが、それだけである。

 カイユーはそれだけなのだ。


 告白しあったあの時には、フェールとシロロに見守られてキスなど出来るはずもなく、私達はただただ抱きしめ合っただけである。


 でも、その時はとても幸せだった。


 でも、その後は狼村やダグド領に帰ってきた後も色々あって、ようやく私達が二人きりになれたというのに、なんと、彼は私を今度は抱きしめるという事さえもしなくなったのだ。


 でも、私の隣にいてはくれる。


 見張り台が詰所のくせに、会議室のモニターで殆どすべてを管理できてしまうからか、城壁にしつらえられた本来の見張り台にアルバートル隊の連中が訓練時以外で登ることは殆ど無い。

 私達はだからこそここに登り、寒いねと言いあって肩を寄せ合っているのだが、肩を寄せ合っているだけなのだ。

 私達は昨日までの私達の関係、姉と弟という雰囲気のままで、雪がちらほら降ってきた寒い見張り台の上で真っ暗な遠くを眺めているだけなのである。


 モニークはどうやってイヴォアールに抱きしめられたりキスされたりしたのだろうか。

 アールは勝手にしようとするのに、どうして顔じゅうに良いのよって書いてある私にカイユーは何も行動を起こしてくれないのだろう。

 遠慮?

 もしかして、私からの行動を待っている?


「ねえ、カイユー。寒いからもう少しくっついていいかな。」


 私はカイユーの肩に頭を乗せて、彼の右腕をぎゅうっと両腕で抱きしめた。


「じゃあさ、中に戻ろうよ!」

 妙に嬉しそうな声をカイユーは出した。


「寒いよね。寒いよ。俺は寒いのが苦手なんだ。さあさあ、戻ろう!」


 本気で中に戻りたい、……のか?

 私は私の手を振り払った上に中に戻ろうと騒ぎ始めた恋人の手を再び掴み、そして、自分の方へとグイっと引っ張った。

 彼が思わず屈んでしまう程に。

 彼の形の良い唇が間近に迫るほどに、私は引っ張ったのだ。


「ノーラ。」


 私は爪先立って、カイユーの唇に軽くキスをしようと企んだが、私はカイユーにぎゅうっと抱きしめられたそのまま持ち上げられ、私を抱える彼は見張り台の階段へと飛び込んだのである。


「ごめん!ノーラ。歩けないほど凍えたんだね!すぐに戻ろう!中に入ってあったまろう!俺が温めてやるよ!」


 え、ちがう!

 ああ、違う!


 少しだけ私はあなたとモニークとイヴォアール達みたいな事がしたかったの!


 ああ、どうやって伝えればいいのだろう!

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