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宴会には危険がいっぱい

 今日は宴会だ。

 カイユーは案じることなく全然元気で、彼の枕元にはシェーラが看病だと駆け付けていたので、あの日一足遅かった私は不要だった。


 カイユー自身が私は不要だと言ったので、それは確実だ。


 ヒールで復元されたとはいえ折れた肋骨は弱いので、彼は三日三晩はベッドに縛り付けられることとなった。ベッドから解放された今日の彼は領地を無駄に走り回り、足が萎えて使い物にならないと嘆いていた。

 そんな彼の回復祝いも兼ねて私達は夜に宴会を設けたが、やっぱり、カイユーは私を避けており、私が彼に話しかけれる隙さえも無い。


 そこで、自分の体の半分くらいはありそうな、牛の脚そのままな骨付きの肉をおいしそうにしゃぶっている魔王様に、私はお伺いを立ててみた。

 シロロはフェールとカイユーとは遊び友達みたいなのである。


「ねぇ、私はカイユーを怒らせたのかな。」

「怒らせてはいないでしょう。どうして?」

「うん。なんだか彼に話しかけられないから。」

「うーん。」


 腕を組んで悩みだしたシロロの姿は可愛らしく、私は幼い子供に何をしているのだと、彼をそっと膝に抱き上げた。


「あれ、ノーラ。」

「あら、いやだった?シロちゃんが可愛らしいから、つい。」


 彼はもの凄く嬉しそうな笑顔で私を見上げると、そのまま私の腕の中に完全に潜り込んだ。


「嫌じゃ無いです。嬉しいです。」


「ふふ、可愛い。弟ってこんな感じなのね。」


 シロロがピクリと固まった。


「どうしたの?」

「――僕は弟では無いです。」

「あら、女の子だったの?」


「女の子でも……無いです。僕は魔王です。魔王は唯一無二の一人だけです、から。」


 私は小さい弟でも妹では無いのかもしれないが、確かに私の一番下となる幼い家族を抱きしめた。


「どっちでも無くても、あなたは私の可愛い家族だわ。」


「僕が可愛くなくなっても?」


「それは外見の事?」


 シロロはこくりと頷いた。


「私をお姉さんだと慕ってくれるなら、あなたはきっと可愛い家族だわ。」


 シロロはきゃあと声を出して喜び、私にぎゅうっと抱きつき返すと、ノーラの願いを一つ叶えます、と言った。


「なんでも?」


「なんでも、です。今の僕はパワー不足で完全なる魔王じゃないので、本当は何でも、は無理ですけど。」


「そう。じゃあ、シロちゃんはずっとダグド様の可愛い子供で、私はシロちゃんのお姉さんでずっといるっていうお願いはどうかしら。」


 彼はきゃあっと喜ぶ声を上げ、私にもう一度抱きついてきた。

 しかし、可愛いと私が抱きしめ返す前に彼はぴょんと私の膝から降り、それから肉が完全に舐めとられた骨付き肉だったもの、つまり、骨を片手にずりずりと引き摺りながら、なんと、カイユーに向かって走っていったのである。


 そして、彼はカイユーの頭上にその骨を大きく振り上げた。


「きゃあ、シロちゃんたら何を!」


 がしゅん。


 カイユーが精鋭の兵士で良かった。

 彼はシロロの攻撃を完全にかわしていたのだ。

 シロロによって床に打ち付けられた骨が霧散していたので、ぶつかっていたら彼は死んでいたかもしれない。


「し、シロロちゃんて、何をするのよ!」


 青い顔したカイユーがそう叫ぶのも無理はない。

 私も同じ意見だ。

 けれど、宴の席を恐怖に陥れた魔王様は、魔王らしく可愛らしく答えた。


「ノーラお姉さまを無視する男は攻撃です。僕は弟として姉を守るのです。」


 周囲の視線は私に集中し、本物の悪の魔王に私がなったらしいので、私は彼等に一般論を述べるしかなかった。

 だって、シロロが勝手に、とは言えないだろう。

 彼は自分を弟と周りに言った。

 彼が女でも男でもないという告白は、私を信用しての言葉なのだから。


「対話が不能であれば攻撃あるのみ。兵法でしょう。」


「そんな兵法があるか!」


 周囲には完全に引かれてしまったが、久しぶりのカイユーの怒り声がとっても嬉しいと思ってしまったから良いのだ。


 私は戻って来た魔王を抱き上げて、よくやったと褒めてやった。

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