第7話:日常
枝を集める。重ねる。置く。
——崩れる。
乾いた音が、散る。アダムが、手を止める。
「……また崩れたな……同じ形なのに、支えきれない……さっきより少し長かったが……まだ足りない……」
ハワーが、崩れた部分を見る。触れていた位置だけを追う。
「…でも昨日より残ってた……すぐ落ちてない……支える場所、少し分かってきてる……」
アダムが、枝を拾いながら。
「……倒れるまで時間がかかった……ってことは、どこかは合ってる……全部じゃないだけだな……
」
ハワーが、うなずく。
「……うん……崩れ方も同じじゃない……前より、一気に崩れない……少しずつ外れてる……」
アダムが、短く。
「……なら、続ければ残るな……」
もう一度、重ねる。今度は、少し間を取る。置く。崩れない。少し持つ。
二人とも、直さない。次に進む。歩く。止まる。探す。しばらく、何も見つからない。
アダムが、ぽつり。
「……腹、減るな……さっきより、はっきり来てる……中が空いたまま、消えない……」
ハワーが、歩幅を合わせたまま。
「……止まらないわね……少し食べても、また来る。来ない日はないわね。でも、分かるようにはなってる……来る前に、少し感じる……」
アダムが、息を落とす。
「……ああ……急にじゃない……少し前から押してくる。だから、止まる前に、動けるな……」
日が上がる。影が短くなる。
アダムが、足を止める。
「……休むか……このまま行くと、また崩す……」
ハワーは何も言わず、隣に座る。
「……今の止まり方、いいわね……無理に続けてない……」
アダムが、地面を見たまま。
「……止まる場所も、選ぶんだな……前は、崩れるまで行ってた……」
ハワーが、小さく。
「……今は、その前で止まれる……」
夜が来る。火を試す。枝が煙る。
アダムが、手を引く。
「……すぐ消えるな……形が保てない。同じ枝なのに、続かないな……」
ハワーが、枝を見ながら。
「……置き方と同じね……形が合わないと残らない……火も同じ……」
アダムが、短く。
「……合えば、続く……合わなきゃ消える……」
一拍。
「……生きてるな……こうやって、少しずつ残る……」
ハワーが、火にならなかった枝を寄せながら。
「……うん……全部は残らないけど……少しずつ残る……それで続く……」
朝。
アダムが、立ち上がる前に。
「……まだ少し重いな……でも動ける……昨日みたいに遅れない……」
ハワーが、横で。
「……うん……完全じゃないけど、止まらない……それで十分よね……」
アダムが、短く。
「……ああ……止まらなければ、続く……もう続いてるな……」
ハワーが、やわらかく。
「……ええ……終わってないもの……」
二人は、また歩き出す。崩れる。拾う。置く。崩れる。腹は減る。疲れも残る。それでも、アダムが、ぽつり。
「……まだここにいるな……逃げてない……」
ハワーが、重ねる。
「……ええ……終わってない。それでいいのよね……今は……」
アダムが、短く。
「……ああ……それでいい……」
二人は、止まらない。それは、重さじゃない。ただの、生活だった。




