表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強AIの異世界転移  作者: 蓬莱
第2章 ぶっ飛ばせ!魔樹の軍勢
46/50

第44話 魔樹との激突

今話は第三者視点です。

”熊童子” 牙猛は、目の前の光景が信じられなかった。


「どうなってんだこりゃ?」


牙猛の目の前では、不死魔将軍(リッチ)率いる不死系魔族(アンデッド)の軍勢と、古代魔樹(エルダートレント)との戦闘が繰り広げられていた。だが、それは戦闘と言うには、あまりにも圧倒的だった。


「ギヒャハハハ! 弱ぇなぁ! いや、俺が強すぎるのか!」

「ぐっ、おのれぇ!」


古代魔樹(エルダートレント)の体には、未だ掠り傷すらない。対して不死系魔族(アンデッド)達は既にボロボロであり、不死故に犠牲者こそいないが、勝つ事は不可能であった。


「何だかよく分かんねぇが、この状況はヤベぇな。っつーか、だからこその俺様だよなぁ!」


牙猛は己の責務を思い出し、古代魔樹(エルダートレント)へと突撃を仕掛ける。目敏くそれに気付いた古代魔樹(エルダートレント)は木の根を伸ばして攻撃を仕掛けも、木の根は牙猛の展開した爪に切り捨てられ、一切ダメージを与える事が出来ない。途轍もない速度で、牙猛は距離を縮めていく。


「オラよ!」

「くぎゃぁ!」


牙猛の猛毒を纏った爪による貫手が炸裂する。間一髪、古代魔樹(エルダートレント)は体を捻って直撃を躱すが、爪が体の側面に触れて古代魔樹(エルダートレント)を溶解させる。


「た、助かりました!」

「礼は良い。それより、おめぇら下がってろ。ここは俺様が引き受ける!」

「はい、よろしくお願いします!」


不死系魔族(アンデッド)達を下がらせ、牙猛は1対1で古代魔樹(エルダートレント)と対峙する。


「ぐぎぎ………!」

「どうした? まさかこれで終いってわけじゃねぇだろ?」

「………当然だ!」


古代魔樹(エルダートレント)の傷が、一瞬で修復される。毒のダメージまで消えており、振り出しに戻ってしまった。


「流石に早すぎだろ」

「ふん! この程度、今の(・・)俺には造作も無い事さ。それで、次はなんだ? それとも、もう終わりか?」

「んなわけあるかよ!」


牙猛は果敢に古代魔樹(エルダートレント)に挑む。


「”飛爪死斬”!」

「”樹林の守り(フォレスト・ガード)”!」


空間を切り裂く斬撃を飛ばす牙猛。しかしその全ては、古代魔樹(エルダートレント)の展開した木の根の壁に防がれ、本体まで辿り着かない。


(まぁ良いさ。いずれ毒が回ってアイツは動けなくなる。そうなりゃこっちのもんだ!)


そして牙猛は、古代魔樹(エルダートレント)と互角の攻防を繰り広げ始めた。



*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*



”虎熊童子” の雷電もまた、古代魔樹(エルダートレント)と互角の攻防を繰り広げていた。

――――霊獣 ”白虎” との、2対1の状態で。


「ちっ! この俺が、格下相手に白虎の手まで借りる羽目になるとはな!」

「”格下” ね………そうやって上の連中は、いつも私達を見下す」

「あぁ? 何の話だ?」

「もうウンザリだって言ってんのよ、そういうの!」


古代魔樹(エルダートレント)は凄まじい速度で根を操り、雷電に攻撃を仕掛ける。根の速度は雷に迫る程で、雷電でも避けきる事が出来ない。


「仕方ねぇ、”融合召喚”!」

「グルォォォォ!!」


雷電は速攻で切り札を――――白虎と融合する ”融合召喚” を発動し、さらに『三位一体(トリニティ)』で3人に増える。


「っ!? ふ、増えた!?」


面食らいつつも、古代魔樹(エルダートレント)は慌てて木の根で応戦する。その全てを紙一重で躱し、雷電は古代魔樹(エルダートレント)の本体に迫る。


「幾ら木でも、動けるなら痺れる感覚くらいはあるだろ? ”白雷突貫”!」

「ぐっ!」


雷電が雷を纏わせた貫手を繰り出す。本体は根と同じ速度で動く事は出来ず、古代魔樹(エルダートレント)は貫手を諸に受けてしまう。


「はっはぁ! こりゃ早くも勝機が見えたな!」

「こんの、 調子に乗らないでくれるかしら!? ”呪詛刺突(カースド・スピア)”!」


呪詛を纏った根の応酬が始まる。背筋に冷たいものを感じた雷電は、迎撃を諦めて全力で回避に専念する。お陰で一撃も食らわずにすんだが、本体からは引き離されてしまった。


(くそっ、これじゃ近付けねぇ。しかもアイツ、全然消耗してねぇな。こっちは全力で動いてそれなりに消耗してるってのによ)


このままでは、削り倒される。そう悟った雷電は、早くも賭けに出る事にした。


「「「”風雷土遁”!!!」」」


リベル、アサミとの戦いでも使用した、雷電の奥義が発動する。3つの竜巻を一点に集め、強力な竜巻を発生させるこの技は、威力は高いが隙がある為、ここぞと言う時にしか使えない。だが、古代魔樹(エルダートレント)は巨大で、本体の動きは鈍い。そこに目を付けた雷電は、奥義を用いて即効で仕留める事にしたのだ。


「っ!? しまっ――――」


この攻撃に虚を突かれた古代魔樹(エルダートレント)は、成す術無く竜巻に飲み込まれる。雷電は賭けに勝利し、古代魔樹(エルダートレント)は倒された――――かに思えた。


「何だありゃ………?」


竜巻が古代魔樹(エルダートレント)を巻き込んだ直後、竜巻の天辺から人型の何かが飛び出して来たのを、雷電は見逃さなかった。その ”何か” は空中で1回転すると、雷電の前に着地する。


「危ない危ない。あんな手札を隠し持っていたなんて」

「まさか、古代魔樹(エルダートレント)なのか?」

「えぇ、そうよ。あなたが格下と見下していた、あの古代魔樹(エルダートレント)よ。”人化” した姿も、それなりにイケテるでしょ?」


そう答えたのは、緑の長髪をなびかせる長身の美女だった。普通の男ならその魅力の虜となってしまう所だが、雷電は逆に不気味さを感じ冷や汗を流していた。


「………何をした?」

「『身代わり』のスキルよ。今の体を捨てて新しい肉体を生成し、その場から離脱できるスキル。感覚で言えば、脱皮に近いかしらね」

「脱皮?」

「要するに、あなたが竜巻を当てたのは、ただの抜け殻だったって事、よ!」

「っ!?」


さっきまでの戦いからは想像もつかない速度で、古代魔樹(エルダートレント)が雷電に迫り蹴りを放つ。咄嗟の事で反応できなかった雷電は、腕を交差させて彼女の蹴りを真正面から受け止める。


「ぐっ!」


華奢な体からは想像も出来ない威力に、雷電は呻き声を上げながら地面を削り後退する。


「どうしたのかしら? たかが ”格下” に良いようにやられて、情けないんじゃない?」

「てんめぇ………!」


雷電は奥歯を噛みしめ、構え直す。その目は、ただの抹殺対象を見る物から、自身と同等の敵を見る目へと変わっていた。



*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*



カイザーと、”金童子” こと蒼創は、2人の古代魔樹(エルダートレント)を相手に善戦していた。2人が飛ばされた場所は比較的近くにあり、2人は早々に合流していたのだ。


「”蒼剣時雨”!」

「グァァァ!!」


『絶対切断』を付与した ”蒼剣” の雨が、古代魔樹(エルダートレント)を切り裂いていく。


「やるなカイザー君。こっちも、”黄金波動砲ゴールデン・インパクト”!」

「ぬぐっ………!」


蒼創の右手に装備された黄金のガントレットから、周囲の魔素を収束した波動弾が放たれる。波動弾は古代魔樹(エルダートレント)を貫き、後ろの森の木々をも吹き飛ばした。


「まさか、あなたと共闘する日が来るとはな、蒼創殿」

「まったくだ。だが、お互い手の内はある程度分かっているから、共闘はそれ程難しくないだろ?」

「あぁ。あの日以来毎日挑まれているから、あなたの技は僅かな所作で分かるよ」

「それはそれでショックだなぁ」

「おい貴様ら! 儂らを無視して何をしている!」


2人が戦う古代魔樹(エルダートレント)の1人が、抗議の声を上げる。それに反応して、もう1人も抗議の声を上げた。


「あたしらを前にして無駄話かい? ったく、これだから若いもんは!」

「そうは言うが、君達既に負けそうじゃないか」


蒼創の言葉は、決して驕りから来ているわけではない。既に古代魔樹(エルダートレント)達はボロボロで、対するカイザーと蒼創は未だ大した傷も無い。どちらが優位かは比べるまでも無かった。

――――無論、それを受け入れられるかは別だが。


「何を偉そうに! あたしはまだ本気じゃないんだよ!」

「ほう? 必至になって抵抗していたようだが、あれの上があると? 信じがたいな」

「この、ガキィ………!」

「よせ、敵が優位なのは事実。このままでは負ける可能性もある。あまり乗り気はせんが、人型になるぞ」

「ちっ。下等生物に変身なんて業腹だけど、仕方ないね!」


古代魔樹(エルダートレント)達の姿が変わり始める。2人の巨体は縮んでいき、人間の大人と同程度のサイズになった。1人は老齢の紳士の姿に、もう1人は老齢の淑女へと姿を変えた。


「ほう、そんな能力もあるのか」

「面白い! これは研究が捗るぞぉ!」


メカニックとして、日々新たなメカの研究開発を行う蒼創が、研究心をくすぐられて興奮する。


「そんな事が言っていられるのも今の内だ」

「2人纏めて、あたしらの養分にしてやるよ!」


古代魔樹(エルダートレント)達は一瞬で間合いを詰める。カイザーと蒼創は即座に反応し、古代魔樹(エルダートレント)の攻撃を躱す。


「避けたか! だったらこれでどうだい!」

「っ!」


淑女の古代魔樹(エルダートレント)が、地面の草を操って蒼創を縛り上げる。


「さぁて、どうやって甚振ってやろうか?」

「蒼創殿!」

「心配無用だ。はぁっ!」

「っ!?」


術も武具も使わず、蒼創はその筋力だけで草を引きちぎり、拘束を逃れる。


「こ、小娘ぇ! その胸、ただの脂肪の塊じゃ無かったのか!」

「失礼な奴だな! メカニックにはパワーも必要だから毎日鍛えてるんだよ。呼ぶなら ”筋肉の塊” と呼びたまえ!」

「鍛えた程度で、あたしの草が引き千切られてたまるか!」


淑女は顔を真っ赤にして蒼創に襲い掛かる。カイザーも蒼創の援護に周ろうとするが、紳士の古代魔樹(エルダートレント)がそれを許さない。


「行かせはせん」

「ならば倒すのみ!」


蒼創と淑女、カイザーと紳士の戦いは激しさを増す。勝負の行方は、まだ誰にも分からない。



*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*



ヴェイルはこの戦いを、地下にある自分の部屋から見物していた。


(北西の方角は、優位になってんのが1組だけか。他は互角か、押されてる所もあるじゃねぇか。折角果実を与えてやったってのに、情けない奴らめ。まぁ、派手に暴れてくれりゃ充分か。それよりも――――)


ヴェイルは北西の方角の敵――――牙猛、雷電、蒼創、カイザーを見やる。


(部下共が現れてから1分足らずで姿を現した。それも同時に。誰かが意図的にアイツらを送り込んだって事か。明らかに組織の行動。つまり、これほどの実力者を束ねる奴がいる。それも、相当な手練れに違いねぇ)


魔族は弱肉強食。力を示せない者は、誰も従える事が出来ない。故に彼らを従えているという時点で、その何者かは相応の実力を持つ事が分かるのだ。


(………待てよ? まさかあの王霊鬼や、ローブの赤髪もソイツの部下か? いや、流石にそれはねぇか。いくら何でも、あのレベルを2人も従えるなんて出来るわけねぇ。出来るとすりゃあ、そりゃ相当なバケモンだ。いる筈のねぇバケモンの話は置いといて、北東の方も確認しねぇと)


今回、古代魔樹(エルダートレント)が送り込まれたのは、ヴィオンド帝国の北西から北東の8カ所の地域。ヴェイルはその内の残り4カ所、北東方面へと意識を向け、そして――――


「…………は?」


思わず間抜けな声を上げてしまった。何故ならば、ヴェイルが北西方面へと意識を割いていた僅かな間に、北東方面へ送り込んだ古代魔樹(エルダートレント)が、全滅していたからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ