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最強AIの異世界転移  作者: 蓬莱
第1章 ゴブリンを救済せよ!
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第18話 決着

「これで終わりにしよう!」

「・・・望むところだ!!」


カルメラ様(マスター)が宣言すると同時に、酒呑童子も動く。剣と大太刀が激突し、その凄まじい衝撃で森が一部吹き飛んだ。でも―――カルメラ様(マスター)は無傷だ。


「っ!もう『終炎』も『闇魔法』も効かないのか、その剣は!?」

「凄いでしょ? 僕の相棒(・・)は!」

「・・・ああ、確かに凄い。だがな、自慢の()があるからって、調子に乗るなよ!」

「え。いや、相棒ってそっちじゃ―――」

「オラァ!」


酒呑童子が空中で横に1回転し、『地獄門』を大振りに振るう。『終炎』と『闇魔法』が激しさを増し、今なら一太刀で森を割れる威力になっていそうだ。


「せいっ!」


この一撃に対しカルメラ様(マスター)は、魔剣を大きく振りかぶり、相手と同等以上の威力の一撃で相殺した。


「くっ・・・!」

「腕が痺れる・・・!」


森を割る一撃の衝突は凄まじく、技を繰り出した本人達ですら、その反動で少々ダメージを負っていた。


カルメラ様(マスター)、お怪我は?〕

(大丈夫!でも、やっぱりアイツ、強いね!)

〔ええ。加えて、封じる術を編み出せたとはいえ、依然として『地獄門』の力が脅威であることに変わりありません。ですがこちらも、先程までより遥かに強くなりました。我々の全力を持ってすれば、きっと勝てます。ですから、油断だけはなさらないように〕

(合点!)


「今度はこっちから行くよ!『破壊光線(デストロ・レイ)』!」


カルメラ様(マスター)が魔剣の先を酒呑童子に向け、そこに『無限滅光』の力を収束させる。すると、人間の頭2つ分の太さのレーザーが照射され、酒呑童子に向かってまっすぐに伸びていく。その速度は『神速思考』でも捉えきれない程の物だったが、しかし、酒吞童子はギリギリのところでレーザーを避ける。


(むぅ!やっぱり大分錆びついてるな・・・)

〔『錆びついてる』って、何がですか?〕

(使うのが下手になったってこと。前の僕なら、今の一撃を外したりしなかったのに・・・)

〔まあ8年もサボっていたら、技術も劣化しますよね〕

(うわぁ、辛辣ぅ~。でも、実際その通りだよね。しかも今の『光魔法』は、以前と比べて強くなってる。今は1から覚え直す時間も無いし、出力とか諸々の調整はお願いできるかな?)

〔お任せを〕

(ありがとう!僕も勘でどうにかしてみるから、よろしくね!)


か、勘って・・・


「やってくれるじゃないか。お返しだ!『鬼王闇刃』!」


破壊光線(デストロ・レイ)』をかわした酒呑童子が、『終炎』を付与した闇の斬撃を飛ばしてくる。斬撃の軌道上にある木々はもちろん、直接は触れていない地面までもが砕かれ、焼かれていく。


「『光の斬撃(シャイニー・バッシュ)』!」

「っ!? がはっ!!」


カルメラ様(マスター)は魔剣を中段に構えて横薙ぎに振るい、闇の斬撃を打ち消して逆に光の斬撃を飛ばす。まさか自分の攻撃が掻き消されてそれと同時に攻撃がくるとは予想していなかったのか、酒呑童子は光の斬撃を右脇腹に食らう。


「くぅ・・・!!」


『光魔法』由来の浄化作用は非常に強力で、酒呑童子はうめき声をあげ苦しんでいた。


(畳み掛けるよ!)

〔はい!〕


カルメラ様(マスター)が酒呑童子に急接近し、突きの構えを取る。それに気付いた酒呑童子は即座にその場から離脱し、今度は左手に『酒豪瓢』を取り出す。


(ヤバい!また酒飲む気だ!)

〔とめましょう!〕

(合点!)


酒呑童子は、称号の力で酒を飲む度強くなる。1度「強化目的」で酒を飲むとクールダウンの為にしばらく酒を飲めなくなるが、最後に酒を飲んでから、そのクールタイムはとっくに過ぎている。その為、また酒を飲んで自己強化を企んでいると思ったのだが―――酒吞童子の目的は、自己強化ではなかった。


「『大酒・華厳の舞』!」


『酒豪瓢』から6本の酒の滝が溢れだし、生き物のようにカルメラ様(マスター)を目指す。しかも、当たり前のように全ての滝に『闇魔法』の力が付与されていて、破壊力が上昇している。


(げっ!しまった!そういえば酒自体操れるんだっけ!?)

〔ええ。しかもあの瓢箪、一瞬であの量の酒を作り出すとは驚きです。しかし、問題はありません。『赫灼幻想盾』!〕


ワタシが『赫灼幻想盾』を発動すると、光り輝く盾達が酒の川を堰き止める。『赫灼幻想盾』にも『光魔法』が融合されているため、酒に宿る『闇魔法』も相殺し、盾は無傷だった。


(ミカエルちゃん、ナイス!)

〔ありがとうございます。ですが、敵の攻撃はまだ終わっていません〕

(っ!!)


「これで終わりだと思うなよ? 『大酒・鳴門の舞』!」


盾で弾いた酒が、今度は大きな渦を描き始める。渦の回転力は凄まじく、中心に引き込むように暴風を発声させ、我々はあっという間に渦に飲み込まれてしまった。


(め、目が回るぅ~~~~!!)

〔落ち着いてください!我々には『時空跳躍』があるでしょう!いえ、それを使わずとも、渦を切ってしまえば良いのでは?〕

(そ、それだ!よ~し・・・!)


カルメラ様(マスター)が渦の中でどうにか体勢を整え、渦と同じ方向に回転する。


「こんな渦、こうだ!『時空破断撃(クロノ・ブレイカー)』!」

「っ!?」

〔ちょっ、カルメラ様(マスター)!やりすぎですよ!〕


カルメラ様(マスター)の放った一撃は、渦どころか周辺の時空をも切り裂き、辺り一帯の大地を崩壊させ、更地にしてしまった。


〔まったく!ワタシが周辺の時空を切り離していなかったらどうなっていたか!下手をすれば村にまで被害が及ぶところでしたよ!〕

(ご、ごめんなさい・・・)

〔まあ、相手のしぶとさも異常ですけどね。ここまで派手にやってもまだ倒れないなんて〕


時空破断撃(クロノ・ブレイカー)』が発動する直前、酒呑童子は『終炎』と『闇魔法』で自身を包むようにして身を守っていた。覇気が消えていないし、まだ倒れてはいない。ワタシが空中から酒呑童子の居場所を探っていると―――


「―――ったく、マジかよ。『鳴門の舞』があんな無茶苦茶な方法で破られるとはな」


大地の崩壊で発生した土煙が吹き飛び、そこから酒呑童子が姿を現す。先程の一撃を相殺しきれなかったらしく、全身傷だらけで頭からはダラダラと血が流れている。


「ほんと、凄いね!」

「こっちのセリフだ!」


カルメラ様(マスター)が地上に降り、酒呑童子と剣による凄まじい打ち合いを繰り広げる。今度は先程までのように、斬撃を飛ばしたり、相手を吹き飛ばそうとはしない。常に酒吞童子が魔剣の間合いに入るように調整している。


(こうやって肉薄し続けてれば、瓢箪を使う余裕も無いよね!)

〔なるほど、考えましたね。ですがここからは、技量の勝負です。剣技はほぼ互角ですが、魔剣の力は相手の方が圧倒的に使いこなしています。総合的にこちらが不利です〕

(でも、こっちは2人。僕達の力を併せれば、何とかなるよ!)


そう言う間にもカルメラ様(マスター)は、酒呑童子と切り結ぶ。

改めて見てみると、酒呑童子の力の使い方は見事なものだった。カルメラ様(マスター)との打ち合いで飛び散った『終炎』を操ってカルメラ様(マスター)に引火させようとしたり、剣と刀がぶつかった瞬間に『終炎』を勢い良く噴き出したり―――とにかく相手の意表を突くことを意識して力を発動している。


カルメラ様(マスター)と白兵戦を演じながら、搦め手にも意識を割くとは。なるほど・・・ならばこちらも、こちらのやり方で意表を突いてやりましょう。『無限分身(クラスター)』!〕


強化された『無限分身(クラスター)』を発動すると、光り輝く―――というより、体が光そのもののカルメラ様(マスター)の分身が多数出現する。元々『無限分身(クラスター)』は術者の魂と思考を増やし、それを魔素から作った肉体に入れて術者の複製を作るスキルだが、今回は『終炎』対策として魔素の代わりに魔剣の(・・・)『無限滅光』を使用している。『無限滅光』は際限なく生成可能で、この無限に湧く材料に金童子から複製(コピー)した『人形王(ゴーレム・マスター)』を用いた造形を施し、『複製体』の強化版『光魔人形(シャイン・ゴーレム)』を生み出すことに成功した。そして彼女らの武器だが、こちらも『無限滅光』から『武器王(ウェポン・マスター)』で剣を作り与えた。


「っ!? 何だコイツら!?」


突然背後に現れた『光魔人形(シャイン・ゴーレム)』達に酒呑童子は混乱するも、すぐに気持ちを切り替えて対応する。しかし、『光魔人形(シャイン・ゴーレム)』の数は100人越え。いや、『無限滅光』は無限にあるから、事実上数に限りは無い。しかもその全員が『終炎』に耐性を持っているため、『地獄門』があってもそう簡単には切られない。


(・・・何か、光ってる僕が沢山でてきたんですけど?)

〔魔剣の『無限滅光』から生み出した『光魔人形(シャイン・ゴーレム)』です。これまでの『複製体』と違い身長も体形(フォルム)もそっくりで、スキル・剣技、共に我々と同じ物が使用可能です。カルメラ様(マスター)と比べると脆いという弱点がありますがね〕

(いや寧ろ、弱点があって安心したよ・・・って、それより、これはチャンス!)


光魔人形(シャイン・ゴーレム)』に乗じて、カルメラ様(マスター)の攻撃も激しさを増す。酒呑童子も『地獄門』に『闇魔法』を付与して対応しようとするが、『無限滅光』は『闇魔法』でも相殺しきることができず、あっと言う間に追い詰められていく。


「畜生!畜生!あたしは、ここで負けるわけにはいかないのに・・・!」


酒呑童子は全身血みどろのボロボロの状態になっても、未だに倒れる気配がない。本来なら、立っていること自体ありえないレベルの重傷だ。それでも彼女が戦い続けるのは―――


「・・・『仲間のために』かな?」

「!!!!」


―――そう、仲間のためだ。

本気で仲間を想う者は、時に限界をも突破して通常ではありえないこともやってのける。カルメラ様(マスター)がワタシのハードな修行を耐えられたのも、『光魔法』への恐怖を乗り越えられたのも、仲間達を想う心があればこそ。酒吞童子も、仲間を想う心を持って戦っている。きっと完全に事切れるか気を失うまで、決して戦いを止めることはないだろう。


「図星か・・・だからこそわからない。あんたは、どうして他の人の仲間を奪えるの?」

「あぁ?」


戦闘を継続しながら、カルメラ様(マスター)は酒呑童子に問いかける。


「あんたが村に圧政を敷いて食べ物を奪い続けた結果、あの村では500人の餓死者が出た。わかる? あんたは、村のゴブリン達から仲間を奪った。自分の仲間のために命を張れるあんたが、何で他の誰かからいとも簡単に仲間を奪えるんだ!?」

「・・・さっきも言ったろ。ゴブリン(奴隷共)がどれだけ苦しもうが、何匹死のうが、あたしの知ったことじゃない。あたしが守りたいのは、あたしの仲間だけ。そのためなら他がどうなったって構わん!」

「・・・っ!」


カルメラ様(マスター)の怒りが上昇する。相手もそれに気付いているようだが、一切動じる様子は無い。


「・・・共生する道だってあったと思うけど?」

「はっ!下等なゴブリンと共生? 笑わせるな!魔物は弱肉強食。他の魔物と共生なんてありえない!どいつもこいつも、ぶちのめして支配するだけだ!」

「それがうまくいかなかったから、今こうなってるんじゃないの? それで戦になって、あんたが守ろうとしてる仲間達を戦場に駆り出して、結果、あんたは今も仲間を失い続けてる。これでもまだ、他の魔物は支配するしかないって言うの?」

「駆り出したんじゃない。四天王はともかく、他の奴らは志願して来たんだ。それに―――」


酒吞童子が一呼吸置き、大太刀を思い切り振り下ろす。それをカルメラ様(マスター)が受け止め、そのまま鍔迫り合いになったところで、本音をぶちまけてきた。


「うまくいかなかったのは、お前のせいだろ!? お前が突然現れたと思いきや、茨木の部下達を退け、さらにはゴブリン共に反逆の芽を植え付け、挙句の果てに力まで与えやがって!お前さえいなきゃ奴らが反抗することも、仲間達が奴らにやられることも無かったんだ!」

「はぁ!? 何それ!全部僕のせいだって言うの!?」

「そうだ!お前がアイツらに希望を持たせたからこうなったんだ!アイツらの恐怖を、お前が消したりするから―――」

「違う!皆があんたに反抗した根本の原因は、あんたが統治者として受け入れられていなかったことだ!」

「っ!!」

「あんたの支配の仕方が、間違っているとは言わない。人間の国にも、王様が国内最強って所が沢山あるからね。でもさ、ただ力で支配してる人って、皆から嫌われているんだ。だから困ったことが起きても誰も助けてくれないし、下手すりゃ今回みたいに反乱が起きて滅びることだってある」

「それはソイツらが雑魚だったってだけの話だろ? 反乱が起きたって、そんなもの捩じ伏せればいいんだ」

「それができないなら?」

「っ!!」

「力で勝てない奴が敵にいたら、捩じ伏せるなんてできないでしょ?」

「それは・・・!」

「優れた統治者っていうのはね、どれだけ強い力を持ってても、皆から好かれてるんだよ。常に民のことを考え、それを実行することで信頼されて―――そうやって皆から好かれる人は、まず反抗なんてされない。そりゃそうだよね。好きな人を倒したい人なんていないもん。別に対等に接しろとまでは言わないけど、あんたもゴブリン達のことを考えて接していれば、こんなことには―――」

「本当に甘っちょろい奴だな、お前は」

「え?」

「お前は親父とそっくりだよ。お前と同じのようなことを言って、部下に寝首をかかれた親父に!」

「〔っ!?〕」

「親父やお前のやり方は甘い!部下に好かれるってのはな、隙を見せてるだけなんだよ!隙があれば付け込まれるし、土壇場で掌を返される!そうならないためには完全なる恐怖を与えて、命令に絶対に逆らわない奴隷にするしかないんだ!」

「・・・・・・」


カルメラ様(マスター)は黙り込んでしまう。カルメラ様(マスター)心の中で、何か大きな物がぐらついているのを感じた。


(・・・ミカエルちゃんは、どっちが正しいと思う?)

〔はい?〕

(皆に好かれるやり方か、力でねじ伏せて恐怖で支配するやり方か。ミカエルちゃんはどっちが良い?)

〔どちらにも、利点と欠点があります。一概にどちらが正しいとは言えません〕

(そう、だよね・・・)

〔ですが、ワタシは酒呑童子のやり方に対し、抵抗を覚えています〕

(え?)

〔実はワタシ、元々はとある国の王にお仕えしていたのですが、その方は自国の強大な軍事力で、世界中の国々を支配しようとしたんです〕

(そんな人がいたの?)

〔ええ。国は世界を相手に戦争を仕掛け、その全てにおいて勝利を収め、幾多もの国々を支配下に置いていきました。国民達の顔には笑顔が溢れるようになりましたが、属国となった国の人々からは一切の笑顔が消えました〕

(・・・っ!!)

〔今思えば、あの人達は怒りや悲しみといった、負の感情に飲まれていたのでしょう。力による支配はある意味合理的ですが、支配された相手に負の感情ばかり抱かせることになる。当時はともかく今のワタシは、それを受け入れることはできません。カルメラ様(マスター)もそうですよね?〕

(もちろん!民に悲しい思いをさせるなんて、統治者失格だよ!)

〔ならば、それを貫けば良いのではないでしょうか?〕

(っ!!)

〔相手の言うことにも一理あるかもしれない。でもその中に、絶対に受け入れられない物があるのなら、自分の意見を貫き通せば良いと、ワタシは思います〕

(ミカエルちゃん・・・そうだよね!)


「確かに、僕のやり方は隙だらけかもしれない。でも、やっぱり僕は、民を不幸にするやり方は受け入れられない!」

「・・・・・・」

「あんたは部下に好かれることを害悪みたいに思ってるみたいだけど、そんなことはない。今からそれを証明してやる!!」


そう言い放つと、カルメラ様(マスター)は酒呑童子から距離を取る。そして魔剣を天高く掲げ、先程目覚めたばかりのスキルを発動する。


「皆、僕に力を貸して!『民ノ希望』!!」


宣言と同時に、カルメラ様(マスター)に膨大な力が集まり始める。

『民ノ希望』には、『民ノ希望(勇者)』と『民ノ希望(魔王)』の2種類がある。勇者の『民ノ希望』の力は「仲間の力を借りて、一時的に自身を超強化する」というものだ。効果だけ見ると『絶対君主(キング・オブ・キング)』に似ているが、あちらが同種族のみを対象にしているのに対し、こちらは種族を問わない。例えそれが星の裏側にいる者であっても、相手が術者を慕う者であれば、助けを求めて力を借り受けることができるのだ。


(すごい・・・!カイザー君達だけじゃなくて、アデンシアの皆も力を貸してくれてるのを感じる・・・!)

〔ええ。カルメラ様(マスター)の人徳があればこそですね!〕


アデンシアの方はわからないが、カイザー率いるゴブリン達は現在戦闘の真っ只中。カルメラ様(マスター)の声に返事をすることすら難しい。にもかかわらず、カルメラ様(マスター)の声かけ1つで迷わず力を貸してくれた。カルメラ様(マスター)が自らの力で勝ち取った、信頼の証だった。


「ほう、仲間からのエールってわけか。確かにそれであたしを倒せれば、お前の言うことにも一理あるって証明になるな」

「そうさ。これから、今の僕にできる最強の奥義を放つ。だからあんたも奥義を使って。それで僕の奥義を防ぎきったらあんたの勝ち。防げなかったら僕の勝ち。どう?」

「・・・渾身の一撃で白黒つけようってか。いいぜ、乗ってやる。ただしお前が負けた時は、ゴブリン共は再び奴隷堕ち。お前もあたしのサンドバックとして生きてもらうぞ?」

「っ!! ・・・わかった。その代わり僕が勝ったら、僕の言うことを1つだけ聞いてもらうから」

「1つ? 案外欲の無い奴だな。いいだろう」


〔危険です!リスクが高すぎますよ!相手が約束を守る保証も無いのに!〕

(いいや、守るさ)

〔へ?〕

(茨木と星熊が攻撃してこないのは、どうしてだと思う?)

〔それは、敗北を認めたからで―――〕

(でも、酒吞童子(アイツ)が『やれ』って命じてきたとしたら?)

〔あ・・・〕

(そう。たとえ戦意喪失の後だとしても、アイツの命令があれば確実に動いた。それで僕の隙を突くことだってできたはずなのに、アイツはそうしなかった。統治者としては最悪だけど、根は真面目な奴なんだよ、きっと)


そうこうしている内に、酒呑童子の準備が完了した。


「準備オッケー?」

「ああ、いつでも来い」

『・・・・・・・・』


暫しの間、2人の間に緊張が走る。そして―――


『ハァッ!!』


2人同時に沈黙を破り、突撃する。


「最終奥義!『皆の光の斬撃(フレンズ・ルミナス)』!」

「酒吞奥義!『終焉・地獄三日月』!」


『民ノ希望』で万民の協力を得て力を増した、カルメラ様(マスター)の光の斬撃。『終炎』と『闇の酒』を纏わせた『地獄門』による酒呑童子の闇の斬撃。2つの奥義がぶつかり、ただでさえ崩壊している時空がさらに軋みはじめ、この場所を隔離している『時空結界』にもガタが来ていた。


「ぐぬぬ・・・!!」

「こんのぉ・・・!!」


2人は再び鍔迫り合いになる。ここまで来たら後は力の勝負。肉体のスペック的には酒呑童子の方が有利だが―――


「はああああああ!!!!!!」

「っ!? 嘘だろっ!? あたしが、力で負けてる!?」


幾万もの人々の力を託された、今のカルメラ様(マスター)なら話は別だ。


「わかる!? 今あんたが相手にしてるのは僕だけじゃない!まだまだ不甲斐ない僕を信じて、力を託してくれた幾万もの人々。それがあんたの相手だ!1人で戦っているあんたが、勝てるわけない!」

「っ!!だが結局は1つの力だろう!? こんなもの押し返して―――」

「やれるもんならやってみろ!せいやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


カルメラ様(マスター)―――否、カルメラ様(マスター)と幾万もの人々の力が鍔迫り合いを制し、酒呑童子が吹き飛ぶ。


「グガァァァァ!!!」


酒呑童子は『地獄門』と共に、遥か彼方まで吹き飛ぶ。そして『時空結界』に突き破って破壊し、まだ残っていた木々を薙ぎ倒して、茨木と星熊、そして治療中の金童子の所まで吹っ飛んでいった。


「ハァ、ハァ、ぐっ・・・!」


カルメラ様(マスター)が崩れ落ちる。『絶対君主(キング・オブ・キング)』と同様、こちらも使った後に激しい反動があるらしい。


カルメラ様(マスター)!大丈夫、ではないですよね〕

(歩くのはどうにかできるけど、さすがにもう戦えないや)


絶対君主(キング・オブ・キング)』を使ったカイザーは未だ一歩も動けずにいるというのに、まだ歩く余裕すらあるとは・・・頑丈な方だ。


(それより、酒吞童子はどうなったの?)

〔覇気は完全に消えましたが、気配は消えていません。恐らく、気絶したものと思われます〕

(ってことは、勝ったんだね!僕達皆の力で!)

〔ええ。大勝利です!〕


実力的には、『民ノ希望』を使わずとも勝てたと思うが、それでは酒呑童子に『民を想う統治』の力を示すことはできなかった。これで酒吞童子も、少しはカルメラ様(マスター)の主張を理解できただろう。


(さてと・・・それじゃあ、酒呑童子の所に行かないとだね。ミカエルちゃん、お願いして良い?)

〔お任せを、『時空跳躍』〕


そして我々は、大半が更地となった森の中を移動し、酒呑童子達の元へ向かった。

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