セミヌードの特異点
「たわけ!」
ゴスロリ姿の宇宙セレブの声が部屋中にこだました。上様がよりによって、この局面で彼女を挑発したからだ。
少し遡ると
「久しぶりだな! 山田ツングースカ!」
ゴスロリ姿の宇宙セレブが不敵に挨拶した後、上様も
「お久しぶりです」
そう挨拶を返し、その直後
「えーと、えーと」
と、何か考え込んでしまった。それから僕に向かって
「由宇作、暴れん坊将軍のひいおじいさんが詠んだ、有名な川柳何でしたっけ? なか、なか……」
いきなりこんな質問をした。
「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス?」
僕が怪訝な顔をしながら答えると、上様は目を輝かせ
「そう! それです! 中野からラクダで行こう元麻布。お久しぶりです、元麻布ロズウェル!」
ゴスロリ姿の宇宙セレブに向かって元気いっぱいに挨拶した。
その直後、先程の大声が部屋中にこだました。
「麻布十番ロズウェルだ! たわけ!」
「惜しい! 由宇作、今のめちゃめちゃ惜しかったですよね?」
上様がいかにも残念そうな顔で僕に尋ねた。
「郵便配達員がそこ間違えちゃまずいでしょ」
「えー! 由宇作最近ツッコミ厳し過ぎません?」
しかし
「貴様ら、私の目の前で夫婦漫才とはいい度胸だな。しかし覚えておくが良い、そのような茶番など、私の前では何の意味もなさない事を」
宇宙セレブ、麻布十番ロズウェル氏の気迫に僕はたじろいだ。
そんな僕にゲルさんがそっと耳打ちをした。
「ツングースカを神が振ったサイコロに例えるなら、ロズウェルの奴はさしずめセミヌードの特異点と言ったところだな。つまり裸の特異点一歩手前。……参ったね、こりゃ」
裸の特異点一歩手前……それって、あと一歩で宇宙が大変な事になるって意味じゃ……。僕とゲルさんは目を合わせ、互いに溜息を吐き肩を落とした。
「おっと、客人をこんな所で突っ立たせたままにしておいては、宇宙セレブの名折れ。客人達よ、向こうに茶など用意してある。話は茶でも飲みながらゆるりとしようではないか」
麻布十番ロズウェル氏が、不敵な笑みを湛えながら仰々しく述べると、執事の古豆腐屋エクスカリバー氏がやって来て、僕達をお茶が用意されたテーブルへと案内した。
お茶と豪勢なスイーツが並ぶテーブルに着席した途端、上様の腹が大きく鳴った。
「ふっ、相変わらず騒々しい女だな」
テーブルの奥の席に悠然と着席した麻布十番ロズウェル氏が、皮肉たっぷりに述べた。
「佐藤由宇作、貴様も苦労しているだろう? こんな女と一緒では。どうだ、私が宇宙セレブの生き方を教えてやっても構わんぞ。貴様がその切手を私に売れば、貴様は晴れて宇宙セレブの仲間入りだ。その女と一緒にいるより、余程有意義な人生を送れると思うが」
「何さりげなく切手買い取ろうとしてるんですか? 超銀河郵便連盟の規約無視して」
「ふんっ、山田ツングースカ! 貴様ともあろう者が、いつまで化石化した規約なんぞに囚われているつもりだ! そして、いつまで続けるつもりだ! ままごと遊びの真似事を!」
……ままごと遊びの真似事……ままごと遊びはいつかは終わりを告げる。その事に気付かなかったわけじゃない。
仕組まれた訳あり。インチキな日常の中でのドタバタ。束の間の温もり。いつかこの手から離れて行くその光景は、あまりにもかけがえのないものになっていた。
かつて当たり前だと思っていた幸せは、手を伸ばせばすぐにでも届くと思っていた幸せは、目に見えないガラスの向こう側にしかない事を知った。だから、いつかは終わるこのままごと遊びが、あと少しだけ続く事を僕は願っていた。
「どうした? 大きな権威を背景に持った居心地の良い場所で、傷を舐め合う事に強く憧れているような顔をしているが」
麻布十番ロズウェル氏が僕の顔をまじまじと見ながら尋ね、
「もし貴様がそれを望むのなら、その女の戯言なんぞに耳を傾けず、貴様のその切手を私に売れば良いだけの話だがな」
こう付け加えるとニヤリと不敵な笑みをこぼした。
そんな彼女の言葉など馬の耳に念仏といった様子で、飲み食いに夢中になっていた上様が
「知ってますか? ロズウェル。幼い頃にままごと遊びをこじらせると、大人になっても引きずるんですよね。だから私、大人になっても引きずってるんですよ。お分かり?」
相変わらず意味不明な事を唐突に言い出した。そして
「じゃあ由宇作、お腹もいっぱいになった事だし、地球に帰ってままごと遊びの続きをしましょうか」
僕の首に片方の腕を回しながら言った。
「ふんっ、茶番だな。貴様、いつまで続ける気だ? 茶番を。そもそも、そうやすやすと帰れると思っているのか?」
「帰れると思ってますよ。ねー、由宇作」
上様は思いっ切りバカップルみたいな態度で、僕に同意を求めた。案の定それは、麻布十番ロズウェル氏を思いっ切り挑発したようで、彼女の顔がピクピクと引きつっているのが、僕の座る場所からも容易に見て取れた。ゲルさんの方を見ると、やれやれといった様子で肩を竦めていた。
「エクスカリバー! 分かっているな!」
「はっ、ロズウェル様」
無駄にイケメンな宇宙執事、古豆腐屋エクスカリバー氏が、麻布十番ロズウェル氏に向かって恭しく返事をすると、この部屋から立ち去って地球に帰ろうとする僕らの前に立ち塞がった。恭しい態度ながら、それは底知れぬ異様さを放っていた。
「なんか思い出して来ちゃいましたよ、その妖しげな殺気。やっぱり例の組織で会ってますよね?」
「さあ? どうでしょう?」
口元に僅かに不敵な笑みを湛えながら、目の前に立ちはだかる宇宙執事は答えた。
「知ってます? 私もったいぶった言い回しする人って……」
そう言いながら上様は巨大な拳のホログラムを、立ち塞がる宇宙執事に向けて放った。
「お嫌いですか? ツングースカ様。それはさておき、本物そっくりホログラムでの攻撃、レールガン過冷却モードでしか対抗出来ないとお思いでしょうか? あなた様ともあろうお方が」
そう言った途端、宇宙執事の前方に大型力士のホログラムが出現した。直後、力士は巨大な拳に向かって突進。宇宙執事は不敵な笑みを浮べながら
「別にシールドを打ち破ろうと思わなければ、いくらでも対抗手段はあります。このように力ずくで押し返すといった手も」
そう語った。しかしその途端! ホログラム製の力士は事もあろうに、テーブルの奥で悠然とお茶を飲む宇宙セレブへ向けて突進した。
隙を見て部屋の出口まで駆け抜けた僕らは、背後で慌てふためく二人の人物、宇宙執事の古豆腐屋エクスカリバー氏と、彼の操るホログラム製の力士に危うく張り手をくらうところだった、彼の主の麻布十番ロズウェル氏を、振り向き様に見た。麻布十番ロズウェル氏は相当慌てたと見え、高価そうなゴスロリの服に大量のお茶をこぼしていた。
「嫌いじゃないですよ、私、もったいぶった言い回しする人って」
そう言って上様はニヤっと笑うと、僕らの手を引き宇宙船の置いてある場所へ向けて、一目散に駆け出した。
「何したの? さっき」
走りながら僕は上様に尋ねた。
「簡単な事ですよ。本物そっくりホログラムに見せかけたんですよ、宇宙非実在青少年キャンセラーを。両方ともホログラムとしての性能は遜色ないですからね」
「ヒッグス場をコントロールする機能が無い分だけ、値段がめちゃめちゃ安かったんだっけ? 宇宙非実在青少年キャンセラーって」
「そうですよ。だからシールドとしては使えませんが、逆にさっきみたいな使い方が出来ちゃうんですよ」
「あの場をパーティーグッズで切り抜けるとは……恐れ入ったよ、全く」
ゲルさんが走りながら肩を竦めて見せた。
「どうやら恐れ入ってる状況じゃないみたいですけどね」
「ゲル、本物そっくりホログラム装置2つ持ってましたよね? ちょっと貸して下さい」
ゲルさんはスマフォっぽい装置を2つ上様に手渡した。上様がちょちょいと操作すると、目の前にセグウェイのホログラムが2台現れた。更に上様は自分の本物そっくりホログラム装置で、もう1台セグウェイを作った。僕らはホログラム製のセグウェイに乗り込むと、一目散にその場を後にした。後ろからは車輪のない、空中に浮遊しながら進むスケードボード風の物体に乗った二人の人物が、僕らに迫っていた。
「てか、セグウェイってこんなに速かったっけ?」
「まあ本物そっくりホログラム製ですから」
僕の質問に上様はそう答えると、ゲルさんの方に顔を向けた。
「じゃあゲル、頼みましたよ」
「お安い御用だ」
そう言ったゲルさんは、事もあろうに壁に向かって猛スピードで突っ込んで行った。
「ちょっと! ゲルさん! 危ない!」
僕がそう叫ぶと同時に、ゲルさんは壁の中へ吸い込まれて行った。
「まさか! 宇宙非実在青少年キャンセラー? あの壁」
「そうですよ、さっき見た通りの。じゃあ私達も行きますよ」
ゲルさんを先頭にいくつかの壁をすり抜けた僕らは、一旦小休止した。
「ゲルは記憶だけはいいんですよ、物凄く。だから宇宙非実在青少年キャンセラーを起動させる前の、元の通路の状態を良く覚えてるんですよ」
エクスカリバー氏に案内されてロズウェル氏の待つ部屋へ行く途中、上様は密かに、宇宙非実在青少年キャンセラーを仕掛けておいたらしい。
「過冷却モード3連発の後、パーティーグッズ使って来るとは考えない人多いんですよね。世の中何が起きるか分からないって言うのに」
「まさか! 過冷却モード3連発も計画のうちだったの?」
「言ったじゃないですか、ご利用は計画的にって」
上様はニヤっと笑った。
「ツングースカ、油断してると流石に追いつかれるぞ」
ゲルさんが後ろの方に目を凝らしながら、心配そうに言った。
「むしろ待ってるんですよ、追いつくのを」
しかし上様は僕らの心配をよそに、こうのたまった。
僕らの後方では二人の人物が僕らを睨んでいた。一人は妖しげな殺気を放ち、もう一人は鬼のような形相で。鬼のような形相の人物のゴスロリの服には、お茶が染み込んだ跡が大きく見て取れた。
「山田ツングースカ!」
鬼のような形相の人物は、鬼のような大声を発した。続いて、妖しげな殺気を放つ人物が、
「宇宙非実在青少年キャンセラーなど、最早意味を持ちませんよ。我々はこの船内の見取り図を使えば良いのですから」
鬼のような形相の人物が持つ、ホログラム製の船内見取り図を指して言った。その直後、彼は素早く僕らの前方に回りこみ、鬼のような形相の人物と二人で、僕らを挟みこむようにじりじりと迫って来た。
しかし上様が僕らの一歩前に出て、妖しげな殺気を放つ人物、古豆腐屋エクスカリバー氏の行く手を遮った。
「はっはっはっはっは」
突然、怪しげな笑い声が響いた。皆が声のする方に顔を向けた途端、反対側の壁の中から一人の人物が飛び出した。
「山田ツングースカ!」
鬼のような形相の人物、麻布十番ロズウェル氏がそう叫ぶやいなや、上様は麻布十番ロズウェル氏の目の前に浮かぶ船内見取り図を、宇宙非実在青少年キャンセラーを使って見えなくした。
「あっ、そっちの私は本物そっくりホログラムなんですけどね」
上様がそう言うと、古豆腐屋エクスカリバー氏の前に立ち塞がる上様が突然消えた。そして僕らは二人が唖然としている間に、壁の中に消えた。
僕らの後方ではうめき声が何度か聞こえた。追っ手の二人が、本物そっくりホログラムで出来た強固な壁に激突しているらしい。
「ほんの少しずつ壁の位置をずらしたんですよ、宇宙非実在青少年キャンセラー使って。船内見取り図使って追って来るのは分かってましたから。だから気付かれないぐらい少しずつ、実際の壁と見かけ上の壁の位置をずらしていったんです」
「でも宇宙非実在青少年キャンセラーのホログラムで作った壁なら、触れば分かっちゃうでしょ?」
「触りませんよ。船内見取り図使って高速で追いかけて来るわけですから。高速で移動中に壁に触れでもしたら、大怪我の元じゃないですか」
先程上様は実際の壁、すなわち本物そっくりホログラム製の強固な壁と、宇宙非実在青少年キャンセラーで作った偽物の壁の間に隠れていた。隙を突き船内見取り図を使用不能にする為に。そして追っ手の二人が唖然としている隙に、僕らは2つの壁の間を通って逃げ出したという寸法だ。
「どういう事?」
ようやく宇宙船のある場所まで辿り着いたのも束の間、目の前には良く知る顔の人物が立ちはだかり、妖しげな殺気を放っていた。そう、無駄にイケメンな宇宙執事、古豆腐屋エクスカリバー氏が僕らの先回りをしていた。
「本物そっくりホログラムだったって事じゃないですかね。ロズウェルと一緒にいたのは。で、本人は途中でロズウェルと分かれて、別ルートを通ってこちらに先回りをしていたと。何しろ宇宙非実在青少年キャンセラーは、私たちが通って来たルートにしか仕掛けてないですから、別ルート通れば道に迷う心配もないですからね」
「流石ツングースカ様、ご名答です」
不敵な笑みを浮かべた宇宙執事は、皮肉っぽく上様を誉めた。
「そんなに誉めたって何も出ませんよ」
なぜか照れ笑いしながら上様が応じた。
「それは残念です。とは言え、あなた方を手土産にロズウェル様の所へ戻る事に、いささかも変わりありませんが」
宇宙執事は妖しく微笑んだ。
「聞きました? 由宇作。この人、私達の事を手土産だとか抜かしてますよ。宇宙にはこんな掟があるっていうのに。手土産は金持ちが貧乏人に渡すものだって」
「あったっけ? そんな掟」
ゲルさんが首を傾げた。
「これだから困りますね、今時の宇宙セレブどもは。何はともあれ、掟破りには掟破りで対抗しますか。じゃあ行きますよ、掟破りの、ツングースカ十六文キーーック!」
そう叫ぶと、上様は十六文キック風のキックを繰り出そうと、片足を大きく上げた。
「ふっ、失礼ですがそのようなプロレス技など、避けるのはいとも簡単。そもそもあなた様の足のサイズでは、十六文にはとても……」
妖しい笑みを湛えた古豆腐屋エクスカリバー氏が、余裕で真横に避けた途端、身長2メートルを超える巨大な上様が、イケメン宇宙執事の眼前に突如姿を現した。その瞬間、芸術的とも言えるタイミングで、十六文キックがイケメンの顔面にヒットした。
「でもホログラムの私の足のサイズは、確かに十六文でしたよね」
ゆっくり崩れ落ちる古豆腐屋エクスカリバー氏に向かって、上様がニッと笑いながら言った。
「だから私はあなたと会うのが嫌だったんだ! ロズウェル様の命がなければ、決してあなたとは……」
その場にうずくまりながらも、何とか片膝をついて立ち上がろうと、荒い息を吐く古豆腐屋エクスカリバー氏が、感情剥き出しのまま言い放った。しかしその直後、上様が光線銃のような物を取り出して使った途端、無駄にイケメンだった宇宙執事は、その場にガクッと崩れ落ちた。
「睡眠光線使いました」
「睡眠光線?」
「文字通り眠らせる光線ですよ。ただこの光線、沈着冷静な人には効かないんですよね。感情的な相手じゃないと」
「昔はどんな相手にも効果が出る仕様になってたらしいんだが、悪戯で使っちまう奴がいてな。で、感情的になった相手じゃないと、効果が出ないような仕様になったそうだ」
ゲルさんが説明を補足してくれた。
「ロズウェルだけならこの光線で何とかなったんですけどね。あの人すぐ感情的になるから。問題はこの人です。なかなか感情的になってくれそうになくて。手こずりましたよ」
上様は僕達の目の前でうずくまって眠る、無駄にイケメンな宇宙執事を指差した。
「ところでさ、巨大上様が本物そっくりホログラムだったとして、セグウェイは?」
「これは宇宙非実在青少年キャンセラー製のホログラムですよ」
上様は自分の横に置かれているセグウェイに、目を遣りながら述べた。
「え? でもさっきまで乗ってたじゃん、上様。宇宙非実在青少年キャンセラー製のホログラムじゃ、乗れっこないでしょ?」
「すり替えたんですよ、さっき」
「さっきって?」
「私が十六文キックを放った時、エクスカリバーがドサクサに紛れて私のパンツをチラッと見てた一瞬、その隙を突いて、本物そっくりホログラム製のセグウェイを、宇宙非実在青少年キャンセラー製にすり替えたんですよ」
この説明を聞き、先程エクスカリバー氏に少しばかり同情してしまった事を、僕は後悔した。
何はともあれ、うずくまって眠るエクスカリバー氏を安全な場所まで移動させた僕らは、エクスカリバー氏の持っていた端末を使い、ハッキングしてハッチが開くよう設定した。そして上様の宇宙船に乗り込むと、瞬く間にこの巨大フラーレンを後にした。
「山田ツングースカ! 山田ツングースカ! 山田ツングースカ!」
突然宇宙船のディスプレイに、鬼のような形相をしたゴスロリ姿の人物が映し出された。その隣には無駄にイケメンな人物が、妖しげな殺気はもはや見る影もなく、頭を抱えながら佇んでいた。
「あれ? 無事でしたか? 二人とも」
上様がニンマリ笑いながら、ディスプレイの向こうの人物に尋ねた。
「うるさいっ! だまれ! このっ、一族の面汚しめ!」
鬼のような形相の宇宙セレブ、麻布十番ロズウェル氏が、更に鬼気迫る勢いで言い放った。と、その時、隣のイケメン宇宙執事が、頭を抱えながらも出来るだけ冷静さを保とうとした様子で、興奮冷めやらぬ様子の隣の主に告げた。
「ロズウェル様、たった今連絡が入りました。超銀河郵便連盟護衛艦隊が発進した模様です」
「ふんっ、それがどうした。返り討ちにしてくれるわ!」
「ロズウェル様! お気を確かに!」
古豆腐屋エクスカリバー氏が、極めて厳しい口調で言い放った。
「…………分かった、エクスカリバー。確かに今は、宇宙最強を謳う超銀河郵便連盟護衛艦隊と戦うには、いささか戦力を消耗し過ぎたな。ここは大人しく引き下がるとしよう」
その言葉を最後に突如通信は途絶え、前方の巨大フラーレンも姿を消した。先程の彼女の台詞が頭の中で反復し続けている僕は、思い切って上様に尋ねた。
「一族の面汚し? ……って、親戚なの?」
「のようなものですよ」
上様は少し寂びしそうに答えた。




