表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/53

第四十九話 心霊スポット突撃動画撮ったから見て!22

 火事の煙と、消防車のサイレンが遠く聞こえる、普通の公園。古びた遊具は老朽化やもろもろの理由でほぼ撤去済み、ボール遊び禁止とデカデカ書かれた看板が設置され、じゃあなにをしろというのかという空間。数本の木と、ポツポツと置かれた普通のベンチと、微妙に怖い動物型の座れるだけの遊具、二台の自動販売機。

 私のおごりでーすという真名火の一言で、自販機へダッシュする実弟と、実家族においては一応末っ子。律火は果汁100%のグレープジュース、薔薇は季節限定のパイナップルジュース、最後の真名火はロイヤルミルクティーを買うと、一番近くの普通のベンチに並んで腰かける。

 ニッコニコの真名火の誘導に恐れげもなく従って、薔薇は兄弟の真ん中へ座る。

 その自然であり悠然とした様に、死んだ魚のようだった律火の冥色(めいしょく)の両目が少しだけーー死んだ魚から、釣り上げられたばかりの鮮魚ぐらいーーになり、真名火の笑みは益々深くなる。

「今回の件、改めてお詫びします。初動の遅れは、完全にこちらの不手際です。申し訳ありません」

「旧飛綿離病院に入った六人の生死に関しては、正直微妙なところ。まあ…さっきの小松さんは、うちの不手際だな」

 真名火、律火ともに目を伏せて謝意を示す。

「主にあたしが、縄張りを荒らしたとか、そういうのは?」

「正式にはどうだかですが、そもそも防人さんの「縄張り」は新市街側も適用ですからね、「あちら」側の(ことわり)的には。それに今回は例の「穴」から「みているモノ」の存在が大問題ですから。我が家でも特に血気盛んな方々は「だから封印なんてまだるっこしいことやめて、すべて焼けば良かったのに」と熱くなってまして…パイロキネシストだけに」

「昨日の夜、一家全員の記憶というか、認識が元に戻ってから延々ケンカ。夢殿さんとの折衝も荒れ狂ってるし、さらに防人さんまで敵に回そうとはしないはずだよ」

「やっぱり揉めてるんだ…ウチのほう、月宮と刀塚は仲良しだし、こっちのごちゃごちゃした感じ不思議。敵をぶち殺すのが先っつーか、問題解決が最優先なんじゃないの?」

「合理的かつ弱肉強食で素敵です」

「新市街は近代化が進んでから、「御山」の()()()()()()薄れてる。川を隔てた上に、在野の「ヌシ」も減ったから、人も妖怪も、「御山」のこと忘れがちなんだろ」


 「御山(おやま)」。


 それは、薔薇の住む小高い丘のような、小さな森であり小さな山であり、阿惜夜市(あたらよし)を含む霧呼(きりよび)山脈の最重要神域である。

 しかし、通常そういった神域が持つ神聖さや霊威は皆無で、遠目に見れば田畑の中のブロッコリーみたいな緑の飛び地にしか見えない。だが、古くから存在するモノほど「御山」を怖れ敬う。

 更に異常な点が二つあり、ひとつは確かに「神域」なのに、めちゃくちゃオープンでどんな存在でも()()()()()とされているところと、「生きた人間」をヌシとして呼ばわるところ。通常、そういった「土地」は世話役として生きた人間を受け入れはするが、主たるヌシや核になる存在には、人ならざる存在を呼ぶ。妖怪や神のようなもの、あるいは年ふりた獣やもと世話役の死者に土地の神通力を与えて神獣や守り人とする。

 防人の一族は、過去含めて四度、「御山」に呼ばれてヌシとなった稀有な一族である。どういうわけか、ヌシに選ばれないと、入ることはできても、()()()()()()()()()()()()()()

 逆に言えば、「御山」に住める人間は広義には全員がヌシである。

 今生のヌシは、一応鶺鴒であり、第六感や霊感のある人間、神魔精霊動植物はそう認識する。しかし、同居を許されている妹の薔薇もまたヌシのひとりであり、同じく血縁者である浮草、血縁などなくとも住人である幸広もまた、「御山」のヌシといえる。

 世代交代の際に、「御山」の方からお告げがあり、住む人間が変わることもあるが、自然と人間が「御山」から離れ、次のヌシになる人間が自然とやってくるーー「御山」はそういう摩訶不思議な神域なのである。

 ちなみに、「御山」から授けられる不思議パワー的なものは特になく、薔薇や幸広の鋭敏な感覚や、鶺鴒や浮草の超弩級の「みる」力も生来のモノである。異能力者、特に「みえるひと」が選ばれやすいようではあるが、その辺も謎なのが「御山」である。先々代などイギリス人の魔術師だったのだから。

 ともあれ、そんな神秘的というか意味不明な「御山」に選ばれた現在の防人家は、旧市街を含めた()()()たちからは一目置かれている。「御山」に住んでいない防人の血縁は当然いるし、その中には業界人も多々いるので有名な家名ではあるものの、先代のヌシとして防人(さきもり)浮寝(うきね)が呼ばれて以来「御山の防人さん」は別格になったといえる。


 しかし。

 霧呼山脈の恩恵たる大河・天狼川(てんろうがわ)

 もともと「川」は、みえざる力の流れそのものであり、断ち切る力もまた持つため、霧呼山脈で繋がる新市街側は、山脈側から流れ込む「神威」が「御山」の存在をしろしめしていたものの、近年の都市開発で新市街側からどんどん「神秘」が失われていき、「田畑の中のブロッコリー」を人々は完全に忘れ去った。


 その弊害が、新市街八大心霊スポット。「みえざる力」の集まりやすい土地に、「御山」の神威が届かなくなり、本来管理するはずの神魔精霊が去り、夢殿や待鳥が権力闘争に傾注している間に、手のつけられない「忌み地」と化してしまったのである。

 新市街側は、本当なら団結してこれらに対処すべきなのだか……。

「実は前はまあまあほどほどに協力してたんですけどねえ」

 ミルクティーで喉を潤した真名火が、ちょっと生暖かい微笑を浮かべる。

「夢殿と待鳥の間で痴情のもつれがありまして」

「やったぜ! 終わりだあ!」

「ええと、待鳥からすると五代前? 当時の長男がパイロキネシストとしても他の霊能力もなく生まれまして、それでいわゆる普通の人生を生きて、一般人女性と結婚して家を出ることになったんですけど、その一般人女性を、夢殿の当主が見初めてですね」

「ドラマティックになってきた!」

「まあ、夢殿さんちの一方的な片想いで、誰がどうみてもお邪魔虫は夢殿さんで…でも当主ですから、単純に強くてですね…わりとガチで全面戦争になりなけたそうですよ……他の夢殿さんが味方してくれなかったら、私たち生まれてなかったかもしれません!!」

「恋愛沙汰になると、ホントに判断能力ゼロになるからね……」

「ちなみに、二人は無事に隣の深緋市(こきひし)へ逃げ延びたよ」

「わあ……死んでたら、もう決定的に終わってたね」

「そーなんですよ。まあそれ以来、もともと主導権云々で対立ぎみなところがあったのが、完全に穏健派と過激派&人間対妖怪みたいに真っ二つになっちゃいましてね。その夢殿さん、現在も当主ですし、もうバチバチです」

 と、高らかに嘲笑う真名火。

「待鳥パイセン、すごく楽しそうだね」

「真名火兄は、現実でもフィクションでも、こういうドロドロしたヤツ大好きなんだ。遠くから眺めて自滅するのを見るのが最高なんだって」

「よい御趣味ですなあ。だから待鳥くんは目の下の隈ヤバイの? あたし初めてあった時からずっと気になってたんだけど。だいじょぶ? ほんとにデフォルト? 話聞くよ?」

「いや、真名火兄がイカレてるだけで、みんなこんな顔」

「それはそれでだいじょうぶなの?」

「律火! おば様は私にそっくりで明朗快活じゃないですか!」

「危険人物なんだね?」

「そう」

「まあ、この界隈、ヤバイ人の支配率高いのは仕方がないけどね」

「一応、日本語が通じるだけマシ」

「律火、防人さん、なんだか自分はマトモムーブしてますけど、そんなことないですよ? 自覚あります?」

「あるよ」

「比較の問題というか、特定の母集団の中ではマトモだと思ってる」

「そうそう。全人類じゃなくて、あくまで「こっち」の人間の中では、マトモだよあたしら」

「くっ……私の口数でも、さすがに数的不利は否めませんね」

 一体なんの戦いが繰り広げられたのか謎だが、真名火が降参したようだ。変わらず笑っているが、もろ手をあげて首を左右にふる。


「……小松一家も無事に「あっち」へ行ったな」

 煙の昇る空を見上げ、律火が疲れた声をこぼす。

「えらいことになってたけど……病院に引き込まれずに済んだ、ってこと?」

「病院の外に出られましたからね。ああ、一応日野くんや吉村さん宅には我が家のものが見届けに参りますよ。ご家族に影響が出てないか確かめます。まあ、日野くんから動画は届いてませんから、ひとまずなんとかなりましたかね!」

 一件落着とばかりに、真名火が明るくポンと手を打つ。



 着信音。



 この四日間、嫌なことばっかり通知してきた、耳慣れたメッセージアプリが、電話のコール音を響かせ始めた。

 薔薇の色鮮やかな黄色のスマホからだ。色は買いに行ったときに残っていたのが黄色か赤だったので、黄色にしただけで強いこだわりはないが、明るい色は好きだ。カバンの外ポケットに突っ込んでいた、ビタミンカラーのスマホが鳴っている。


「…あの」

「なぜ」

「ああ、やっぱりそうなんだ」

 待鳥兄弟が、思わず身を引いているのを見て、薔薇は鶺鴒からの電話ではないと確信する。それどころか、ヤバイものからの電話だ。


「うーん…出るしかなさそう。全然止まらん」


 淡々と言って、薔薇はスマホを引き抜くと、ベンチからスタスタ離れていく。

 公園の、なんにもないど真ん中に立ち、液晶画面を見る。

 表示された「なまえ」は、友達でも家族でも、連絡先を知らないクラスメイトでもなかった。







『 夕卜 さ ん 』

そういうわけで、例の彼女は無事に逃げた二人の子孫です!

そんな彼女の運命を、夢殿の現当主ほかのメンツが知ったらどうなるんでしょうね?

虚無顔は待鳥の血筋だそうです。たぶん苦労人なのも血筋でしょうね。


それから、書く予定のなかったーーそもそも待鳥兄弟も出てくる予定なかったーー「御山」について軽く説明が発生しましたね

「御山」については、もっと詳しくどこかでお話に組み込める予定及び機会がありますが、今んとこは「無力?みたいだけど、謎に大事な神域」と思っておいていただければ、現状は問題なしです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ