表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
首吊り死体が呪う村、痣のスミレの狂い咲き  作者: 藤野
第六章 戻らない日常
37/60

会食

 僕は恐る恐る新品の服を着た。

 着替え終わって居間に戻ると、姉さん達も皆綺麗な服に着替え終わっていた。


「あたしらはこれから化粧をするから、香寿はそこで待ってて。菫ちゃんも、しているのが分からない程度にはするよ」

 愛花姉さんがそう言うので、僕はやることもなくうろうろしていた。


「あれ、千愛姉さん、その服汚れが……」

 驚いたように振り返る千愛姉さんに、白い着物を指差す。それに目を落とすと、ああ、これねと落ち着いた様子で言った。

「砂埃が付いてしまったんじゃないかしら。……もう、今着ている服のことかと思ったわ」

 そう言うとそそくさと結愛姉さんの所へ行ってしまった。


 しばらく座ってぼーっとしながら待っていると、皆支度が終わったのか一人、また一人と動き始めた。

 ちらりとスミレさんの横顔が目に入る。


 か、可愛い……。


 いつもの綺麗な顔が、なぜだかより一層綺麗に見えた。陶器のようななめらかな白い肌に、膨らんだ頬を微かに桃色にして、緊張したようにきゅっと閉じた唇がつやつやしている。

 その中に、紫色の瞳がとんでもなく映えていた。

「香寿、やっぱり菫ちゃんが好きなんでしょ」

 後ろから急に声をかけられて飛び上がる。

「ゆ、結愛姉さん……。びっくりさせないでよ」

 僕がそう言うと、結愛姉さんはいたずらっ子のような笑みを浮かべた。

「菫ちゃんも、きっと香寿のこと好きだよ。両思いなのは見え見えなのに、どうして好きって言わないの?」

 返答に困って沈黙する。

「もー、黙んないでよぉ」

 ぷくっと頬を膨らませて、拗ねられた。そこに千愛姉さんがやってきてなだめる。


「それぞれ事情はあるわよねえ? それより、愛花姉さんと良樹さんよ。あの二人もお互い好き合っているのに一向に進展しないんだから。愛花姉さん、こういう時だけ内気になっちゃって」

「そーそー、ほんとにね。いつもはあたし達のこと引っ張ってくれるのにさ。せっかく、松竹みたいに厳しいお見合いがないんだから、良樹さんと結婚しちゃえばいいんだよ」

 二人が楽しそうに笑って話し始めてしまった。こうなると止まらない。


「こらこら二人とも、喋ってないで。もう松園家に行くよ。しっかり気を引き締めて、無礼を働かないように。向こうに嫌味を言われても言い返さないでね」

 愛花姉さんが厳しい口調で言う。今日はお母さんは夜伽で眠れていないので、会食には行かないらしい。


 なんとなく、いざ行くとなると皆に憂鬱な雰囲気が漂い始めた。それを誤魔化すように愛花姉さんが明るく振る舞っているように見える。

 家を出て、生ぬるい風に当たったあたりから、皆無言だった。


 緩やかな坂を歩き、明かりの消えた竹園家を通り過ぎると、魔除けに植えてある南天の赤い実が視界に入る。魔除けのはずなのに、なんだか毒々しい色合いに見えた。

 そしてそれの奥、松園家は、竹園家と梅園家のどれよりも立派で大きかった。


「よーし、入るよ」

 愛花姉さんが扉を叩く。中で小さく鈴の音が鳴った。

 緊張して体を固まらせていると、すぐに家の中から足音がして、扉が開く。中から使用人と思われる女性が顔を出した。

「梅園家の皆様ですね。ご案内致します」


 玄関に招き入れられ、靴を脱ぐ。愛花姉さんを先頭にして結愛姉さん、千愛姉さん、僕、スミレさんと続いて案内された部屋の中に入った。

 入った途端、あまりの広さと嫌な視線に驚愕する。


 上座には松園家の愛さん愛菜さん壮一郎さん、その次に竹園家の愛子さん、裕一さん裕二さん祐三さんだ。

「あらまあ……私達を待たせたのに謝罪も無しですか?」

 愛さんが右の口角を異常に引き攣らせて笑う。

 ……これから、嫌な事が起きる気しかしない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ