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首吊り死体が呪う村、痣のスミレの狂い咲き  作者: 藤野
第四章 隠された過去
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袋小路

 靴を履いて、そーっと木の影から家を伺う。特に人影も見えない。

 紫霊峠に行かなくちゃ。


 木の影に隠れながら、この前の苔むした石畳へ向かう。相変わらず木に隠れて分かりにくいけど、確かに辿り着いた。

 急な階段が上に伸びていて、思わず尻込みする。……でも早く行かないと。


 階段に足をかけずんずん登る。暫くすると息が上がってきて、汗もだらだら出てきた。

 茂さんと鈴子ちゃんと来た時も疲れたな……。

 鍵を反対の手に握り変えて、汗を拭く。手が錆臭い。

 手汗で鍵も濡れてきて、錆の臭いが僕の周りに充満する。でもその気持ち悪さは、徐々強まっていく甘い香りで打ち消された。


 もう少しなんだ。

 残り数段を一気に上がると、青々と生茂る木がぱっと開けて青空が広がった。

 同時にあの甘い香りが体を包む。下を見れば一面薄紫で、まるで別世界のようだ。

 少し息を整えて、階段を降りる。

 登りほど辛くは無いけど、花畑を越えればお墓が待っていることを考えると憂鬱だ。

 ついに地面に足が着く。


 そこからは平面な一本道で、左右には溢れるようにニオイスミレが咲いている。

 その先に見える暗がりに、僕は一心に進んだ。まばらに木が生えており、その中に沢山の墓がある。階段状になっていて、一番後ろが一番高い。

 冷たそうな墓石が近づいてくると同時に、ある疑問が頭をよぎった。


 御神体はもしや、墓の向こう……?


 だとしたら、僕はどうやって降りればいい?

 いや、でも茂さんも行ける場所なんだから、どこかに降りる場所があるんだ。

 ……取り敢えず墓の一番上まで行ってみよう。


 花畑を過ぎ、階段を登る。左右は深い緑の木に囲まれていて、全然見えない。

 もたつきながらも一番上に登った。が、落ちないように石で囲みが作ってあり、そこから下を見下ろしても木しか見えない。


 困ったなあ。

 今日しかないのに……。


 あっ! 待てよ!

 そうだ、紫霊峠の階段の入り口は神社から少し離れていたじゃないか。御神体は神社から真っ直ぐ線を後ろに伸ばした所にある。

 ……てことは、右の木の方に行けばあるのかな……。


 ちらっと横を見ても、深い緑で進む気にならない。でも、鍵を盗ってちゃったんだ。今更引けない。

 行かなきゃ——。


 そう思った瞬間。


 ——ザッ。ザッ。


 ()()の足音がした。


 背筋が凍る。どうしろって言うんだ。結構近いよ、音。

 追い詰められた……。前にも後ろにも行けない。袋小路だ。

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