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第44話 勝利

 ステータスを確認すると見慣れない項目が幾つか増えていた。

 最初に目が行くのはレベルが-15まで上がっていた事だろう。

 絶え間なく何時間も戦い続け、千匹以上の魔物を倒してきた。

 全ての魔物が俺の適正以上の魔物なので、討伐数も多く入ったようだ。

 レベルの上昇に伴い能力値もかなり上昇していた。

 レベル10の時点で二級冒険者に近い能力値だったが、今はその時の倍以上の数値なので二級冒険者よりかは強くなっているだろう。

 

 次に目を引くのは横にあるもう一つの補正能力値だった。

 今までは+3だった筈だ。

 けれど、どういう原理か解らないが、今は+285と言うとんでもない数値に跳ね上がっている。

 ピンチのスキルが発生した為に大きな補正がされているのだろうか?

 兎に角千匹をこえる魔物と戦えてこれたのは、この補正値があったおかげだと思った。


 そのまま項目を読み進めていると、新しいスキルを複数手に入れている事に気づく。

 新しいスキルは自身の能力値を底上げしてくれるスキルの様だが、その能力よりも気になるのはセットボーナスの文言だ。


 ダンジョンマスター三匹を同時に相手にすると言う、絶体絶命な今の状況を打破する為なら何でもやってやる。

 俺は躊躇なく新しく覚えた三つのスキル名を叫ぶ。


「プロテクター・ブーツ・グローブ全て発動だ」


 すると俺の体が光に包まれる。

 そのまま光の粒子が物質に変化していき、漆黒の装備が次々と現れていく。

 黒に統一された装備は悪役の様にも思える。


 悪態をつきながらも身体中を駆け巡る力を感じ、これならいけるかもと希望が湧いてきた。

 新たに気合いを入れ直し、ボロボロになっていた四本目の剣を投げ捨てた。

 これで残るは父さんから貰った剣と俺が自分で買った黒剣の二本のみとなった。


 俺は両手に持った二本の剣に対して、同時にフォトンソードのスキルを発動させた。


 二刀流は繁殖期の時に何度かやった事はある。

 集団戦闘には有効だが、ダンジョンマスター相手にどれだけ効果があるかは未知数だ。

 返り討ちに合うかもしれないが、出来ることは全てやり尽くす。


 「蛇野郎、まずはお前からだ」


 一番近いダンジョンマスターである蛇に向かって駆け出した。

 レベルが上がり、能力補正を手に入れた俺は、蛇のダンジョンマスターが大きな尻尾を鞭のようにしならせ、地面を大きく抉りながら叩きつけてくる尻尾の攻撃を軽々と掻い潜り、一瞬にして懐に潜り込んだ。

 懐に入られたダンジョンマスターは頭上から俺を喰らいつく為に大きな口を開いた。

 だが俺は躊躇する事無く、ダンジョンマスターの腹部に片方の剣を突き刺し、そのまま蛇の胴体を駆け上がりながら顎まで引き裂く。

 引き裂く勢いを利用し大きくジャンプすると、残った剣を蛇のダンジョンマスターの頭部へ突き刺した。

 俺が着地すると同時にズドンと大きな音を立てながら蛇のダンジョンマスターが横たわる。


 一匹倒せた事に一瞬だけホッと息を吐いた。

 しかしその隙を狙って狼が襲いかかってきた。

 最初の攻撃に比べると随分と速度が落ちている。

 さっきリディアに射抜かれた足の傷が影響しているのだろう。


 牙と爪で広範囲に襲いかかる狼を右手のフォトンソードで受け止める。

 攻撃を止められた事に驚いた狼は何度も腕を振り上げ叩きつけてくる。

 しかし全ての攻撃を俺は回避する。

 攻撃が当らないダンジョンマスターは苛立ち、捨て身の攻撃として全体重を乗せ両腕を振り下ろす。


 俺は片方の剣を投げ捨て、黒剣を両手で持つと、爪を真正面から受け止める。

 スキルで殺傷能力が強化された剣と激突した爪はフォトンソードによって半分まで切断されていた。


「ウォォォォォーーー」


 俺は雄叫びを上げると無理やり爪を引き裂く。

 

「ヴァァァァッ!!」


 狼は大きな絶叫を発し、身を翻して逃走を始めた。

 しかしこのまま逃がす筈はない。

 逃げるダンジョンマスターよりも速い動きで、追いかけ廻り込むとそのままジャンプし、独楽の様に回転しながら狼の喉へと剣を突き刺した。

 狼のダンジョンマスターは喉を貫かれ、俺に抱きつく様な体勢で動きを止めた。


「残るは、蜥蜴お前だけだ」


 蜥蜴のダンジョンマスターは大きな口から豪炎を吐いて攻撃してくる。


「もうその炎は見飽きたんだよ。悪いがタイマンなら負ける気はしない」


 炎は直線的な攻撃しかしてこない。

 今の俺にとって回避するのは容易い事だ。

 炎から一メートル程度、横へ転がる様に避けると、地面を蹴り上げ蜥蜴に向かって進路を変えた。

 そのまま黒剣を一度ダメージを与えた脇腹へと再度叩き込む。

 一度目より深く突き刺さった剣を、今度は背中に回りこむ様に体に食い込ませたまま背中へ移動する。

 剣によって引き裂かれた傷からは炎が吹き出しダンジョンマスターの身体に炎が纏わりつく。

 俺はその後も縦横無尽に走り周り、ダンジョンマスターの身体を細切れにして行く。


 苦しむ様に足掻いていたダンジョンマスターも動きが鈍り、最後には活動を停止する。

 全てのダンジョンマスターを倒した俺は尻もちをつき、地面へと倒れ込んだ。


「終わった~! 死ぬかと思った…… いや一度死んだのかもな」


 一度死を覚悟した事を思い出して、俺はリディアに命を救われた事を思い返す。


「雑魚もマスター達が始末してくれているから寺院には数える程しかいないな。これならムサシ達が何とかするだろう」


 激闘が終わった事を実感した俺は息苦しさを緩和する為にヘイト魔法を解除する。

 そして地面に転がっていた父から貰った剣の側面で自分の顔を映し出す。


「レベルが15になって、ずいぶんと若返ってしまったな。でもなんでだろう、全然嬉しくない…… いつもなら飛び上がる程喜んでいたのに」


「クラウス様~!!」


 その後、遠くから俺を呼ぶ声が聴こえる。

 俺が声がする方に視線を向けると、ムサシと僧の一部が寺院から出て俺の元へ近づいて来ているのが見えた。


 俺は再び変身を使用し、自分の顔を仮面で隠した状態で彼らを迎える為に手を上げた。

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