↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
35/45

第35話 寺院

 翌朝から俺達はラフテルの情報収集を本格化させて行く予定だ。

 まずは寺院やギルド、街にいる情報屋まで手当たり次第当たって行こうと考えている。

 一番最初は寺院を訪れるのがいいだろう。

 場所は地図に書いてあるので迷う事も無い。

 リディアは昨日落ち込んだ事など微塵も感じさせず、朝から元気な笑顔を見せてくれている。

 その事にホッと胸を撫で下ろす。


「リディア、冒険者活動も続けるけど、ラフテルの情報を得る事もやらなくちゃいけない。だから今日は寺院へ行ってみようか? 何か情報が手に入るかもしれない。」


「うん。おじ様、ありがとう!」


 リディアは俺に向けてお礼を告げた。




★   ★   ★




 地図に書かれている寺院へ続く道は整備されて歩きやすい。

 幾つかの路地を曲がり抜け、宿から一時間程度歩いた場所に寺院は存在する。

 周囲には家屋や建築物などは少なく、そのおかげで寺院は広大な敷地を有しているようだ。

 到着すると入り口に僧の格好をした男が立っていた。

 だが特に彼らに止められる事もなく、すんなりと俺達は寺院の敷地内へと入ることが出来た。

 

 不審者を侵入させない為にいるのじゃないのか? 

 それともリディアが巫女服を着ているからだろうか?

 

 確かに境内には参拝者や寺院で働く神職の者達の姿が見え、神具や小物を売っている小屋も建てられている。

 大きな本殿、拝殿などもあり外観は神社に似た作りだった。

 まずは外で働く神職の男性に声を掛けてみる事にする。

 神職の者ならラフテルの単語位は聴いたことはあるだろう。


「すみません。聞きたいことがあるんですが」


「はい。何でしょう?」


「ラフテルが何処にあるか知っていますか?」


 俺の言葉に神職の男性は特に考える事もなく答えてくれた。


「神主が定期的に訪れている所で、ラフテルは聖地とよばれています」


「場所は知っていますか?」


「私は行った事が無いので、説明できないです。神主様なら説明できるので、一度拝殿の方へ行ってもらえますか? 今は祈祷をしている筈ですよ」


「ありがとうございます。拝殿ですか? そちらに向かってみます」


 俺はお礼を告げ、拝殿の方へと向かう。


(これでラフテルの場所は解りそうだ。思っていたより簡単に見つかりそうだな)


 俺は胸をなで下ろしていた。


 本殿の手前に在るのが拝殿だ。

 参拝者が祈りを捧げる場所と記憶している。

 到着すると丁度参拝者に祈祷を捧げる儀式を執り行っていた。

 閉ざされた障子の向こう側から何やら理解出来ない言葉が聴こえてくる。

 中にいるのが神主だろうか?

 俺とリディアは儀式が終わるのを待つ事にした。

 参拝者の数は多く障子の外には次の順番を待つ参拝者が列を作っている。


(凄く信仰者が多い寺院だな)


 二十分程度待っていると儀式が終わり、中にいた参拝者が拝殿から出た後に祈祷を行っていた男性が最後に建物から出てきた。

 俺はその男性に声を掛けてみる。


「神主様ですか? すみません、教えて貰いたい事があるのですが?」


 神主は俺達に気づき視線を向けた。

 少し太っている男性で袴を着こみ髪は短い。

 俺とリディアを舐め回す様に動く視線が少し気になった。


「聞きたい事ですか? 私が知っている事なら」


 けれどその仕草は一瞬で、すぐに笑みを浮かべるとニコニコしながらそう答えた。

 俺は神主にラフテルの場所を聞いてみる。


「ラフテルですか!? よくその名前をご存知と言う事は信者の方ですか? ここではラフテルについて話す事が出来ないので客室に案内します、ついて来て貰えますか?」


 やはり神主はラフテルの場所を知っている様子で、このまま場所を教えて貰えればリディアを送り届ける日も近いだろう。


 神主の後を俺達が付いて行くと本殿の一室に案内された。

 本殿は美しく木の香りが体を包み心地よく感じる。

 部屋に入ると備え付けの椅子に座り神主と向かい合う。


「それで貴方達はラフテルにはどういう御用で? ラフテルは寺院の中でも格式が高い場所の一つであり、一般の参拝が禁止されています。我々の様に神職にならないと訪れる事が出来ない神聖な場所。私には貴方が神職であるようには見えませんが?」


「実は彼女をラフテルに連れて行くように母親に依頼を受けたので」


 俺は簡単な説明を行いながらリディアに視線を向けた。

 俺の視線を追い神主もリディアを見る。


「隣にいる少女は亜人種の様ですが、彼女をラフテルに連れて行く理由は何ですか?」


「理由までは…… その場合だと教えて貰えませんか?」


 神主は考える素振りを見せた。

 少しの沈黙が流れる。

 一分、二分、三分程度と時間が過ぎ、神主が考えた末に両手をパンと叩いた。


「どうでしょう。もし良ければ私が彼女をラフテルへお連れ致しましょう。丁度近々ラフテルに向かう予定があります。神職で無い方にラフテルの場所を教える訳にも行かないので、この方法が一番良いでしょう」


 その答えに俺は一瞬困惑してしまう。

 いい話だが、その場合だとこれで俺とリディアの旅は此処で終わってしまう。

 自分が連れて行くと母親と約束をしていた。

 今回の場合だと約束と違う方法になってしまう。そ

 れと同時に胸が少し痛いくなるのも感じる。


「私も一緒に同行する事は出来ないのでしょうか?」


 神主は腕を組んで難しそうな顔を見せる。


「それは難しいですね。関係者以外にはラフテルの場所を知られる訳に行かないので、でも安心して下さい。私が責任を持ってその少女をラフテルに連れて行くとお約束いたします」


 体をグイっと前に出し、力強い言葉で神主はリディアを自分が連れて行くと言った。

 俺が答えを出せずに居るとリディアがクラウスの服を引っ張ってくる。

 いつもと違う表情で怯えている様にも見えた。


「すみません、ちょっと彼女と話がしたいので、外で一度話してきます」


 俺はそう告げるとリディアを連れて部屋を一度出て行く。

 廊下には誰も見当たらず話を聞かれる事もないだろう。


「どうしたんだ? そんな怯えた表情をして……」


「……おじ様、あの人嘘を言ってると思うの。私はあの人と一緒に居たくない」


 リディアは目にいっぱいの涙を浮かべて縋り付く。


(こんなリディアをほっとけ無いよな…… それに約束は約束だ) 


「リディア、解ったよ。神主の提案は断ろう。ラフテルの場所は違う方法で探していこう」


 その後、嬉しそうに笑うリディアの手を引き神主が待つ部屋へと戻る。


「やはり依頼を受けたのは俺だから彼女は俺がラフテルに連れて行きます。良い提案だったけど申し訳ありません」


 提案を断られた神主は眉を中央に寄せ、苛立っている様にも見えた。


「ラフテルへの道のりは危険です。貴方の様な高齢な方では魔物に襲われてしますよ」


「それでも、俺が連れて行くとある人と約束しました。どんな困難が待っていても必ず連れて行きます」


「……そうですか。それなら仕方ありません。そこ迄の覚悟が在るのならば特別に場所を教えましょう。地図を持って来ますので此処でお待ち下さい」


 神主から地図を受け取ると、一度目を通す。

 フラルジークから東北の森を抜けた先に丸印が入っていた。


「その森には魔物も出てきます。気をつけて下さい」


 そう告げた神主は初めて声を掛けた時と同じように、ニコニコとしていた。


「気を付けます。ありがとうございます」


 地図をポケットにしまい、俺達は部屋から出て行く。

 そのまま足早に寺院の敷地からも飛び出し、人気の少ない道を歩いていると少し離れた場所から気配を感じるようになる。


(付けられているのか? それにしては気配を隠していない…… あの神主は胡散臭い。この地図も多分偽物か? ならどう言う意図で……)


「リディア、俺達は少し前から誰かにつけられている。きっと寺院の手の者だろう。あの神主はきな臭い。

 それで提案なのだけどこの地図の場所へ行ってみないか? そうすれば相手は姿を見せて行動してくる筈だ。危険かもしれないが、リディアは必ず俺が守る。信じて付いて来てくれないか?」


「……ん。 解った」


「それじゃこのまま地図の場所へ向かおう。宿などを知られるのは危険だからな。必要な物は途中で商店によれば手に入るだろう」


 そう決めると二人は進路を街の東門へと変える。

 門へ向かう途中で商店街に立ち寄り、ポーションや毒消しなどの備品を補充しておく、その後東門へ到着した俺達は地図に書いてある場所を目指して歩いて行った。

 目測だが二時間程度でたどり着けるだろう。

 

 さて、どうなる事やら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。