その2 ショニュリの思い(詩バージョン)
ケ-セラ-セラ (スペイン語で『なるようになるさ』)
自信のない私が好きな言葉
友人のルミーが教えてくれた言葉
彼女は時々不思議な話をする
生まれる前のお話だと言って
湖に小石を投げると
円を描き波紋が広がるように
私が悪女にならないと
物語が進まないと言う
私が悪女になれるように
共通の友人であるトミーと婚約しろと言う
ルミーに言われて婚約すれば
トミーは私を大切にしてくれた
ある時ルミーが
トミーと自分は好きあっているから
別れろと言う
私はトミーに尋ねるけれど
そんな事実はないという
ルミーが言った
トミーは自分のことが好きだったろうと
トミーは答えた
昔のことだと
彼女は憤慨して帰って行く
話が違うと言って
私が不安な気持ちでいると
彼は言う
心配しないでと
それから暫くして
私は国王の後妻に指名された
接点のない国王が
何故私を知っていたのだろう
疑問はすぐに解けた
ルミーが嘘をついたせいだった
私は悲しみに暮れた
きっとトミーのことが好きで
こんな方法を取ったのだろうと
彼女はまだ私を怒っているのだ
トミーと別れなかったから
一言言ってくれれば
いつでも婚約は解消したのに
ルミーのことが大事だった
もうやり直しが出来ないのだろうかと悩んだ
私は働いた
王妃として恥ずかしくないように
理由はどうあれ
ルミーが私を王妃にしたのだ
へこたれてなんていられない
なのにルミーは
他の令嬢と貴婦人と一緒に
私に嘲りの言葉を投げつけた
きっとまだ怒っているのだ
私は辛くて落ち込んだ
だから私は
もっと王妃の仕事を頑張ることにした
王子にも献身的に尽くした
王子からも信頼された頃
せっかく彼女はトミーと婚約したのに
たくさんの浮気を繰り返していると聞いた
きっと私のことで蟠りがあるのだろう
私は辛くて
自分を傷つけてしまった
ルミーに会いたいけれど会えない
拒絶されたくないと思い詰めて
それを王子が助けてくれた
とても辛そうな顔だった
私なんかを心配して泣いてくれた
ああ王子も同じだ
私と一緒で
心に埋まらない穴があるのだろう
彼の母親は
病の為に死んだと言うが
本当はワインに毒を盛られ
血を吐いて死んだそうだ
幼い時に残った傷は
柔らかい心には辛すぎた
彼の心は知り得ないけれど
トリガーは
飛散した血液なのだろう
彼も私と一緒だ
失くした物を忘れられないのだ
だから私は彼を傷つけない
彼も私を守ることで
精神の安定を図る
それでも彼は王太子だから
これから結婚して国を治めていく人だ
けれども彼は
血を見ることがトラウマで
自分は王にはなれないと言う
成長すれば症状は薄れると思う
でもそれは可能性の話
辛いのは同じだ
私は彼に秘密を打ち明けた
だって彼だって話してくれたのだ
王になる資質がないと
誰にも言えないことを
ならば私も
打ち明けなければ不公平だもの
彼はそれを聞いた後
黙ってそうかと頷いた
結局彼は
ずっと婚約者を作らなかった
けれど遂に
王命で婚約者が決まった
逃げられないと思ったみたい
私は一緒に逝こうかと聞いたけど
彼は言う
憶測で誰も傷つけたくないと
そろそろ私の心も体も限界で
ついに彼を置いてきてしまった
彼はきっと悲しんだだろう
でも願わくば
乗り越えて生きて欲しい
私は駄目だったけれど
大好きなルミー
せめて少しだけ悲しんでくれたら良いのに
でももう良いわ
さようなら
愛していたわルミー
そして私の大事な弟セハル
いつも一緒にいてくれて
ありがとう
そして私は口ずさむ
ケ-セラ-セラ(なるようになる)
私達は若いのだから
いつでも会いに行けるわ~
やっと軽くなった心で
どこまでも飛んでいける