入社だよ!全員集合③
俺がコントみたいな事をやらかしたのが面接15分前で、今現在は面接のおよそ5分前。この間に結構な人数が入室してきた。俺達を含めて10人。老若男女揃っている……いやほんと、スーツ着たお婆さんいるんだけど。すごい年齢層だな。
一番目立つのは良くも悪くもあのお婆さん。年齢は感じさせるが、かなり質のいいスーツに指にしている豪華な宝石付きの指輪。肌も歳を感じさせない瑞々しさだ。うちのばぁちゃんなんかもっとしわしわだぞ。
曲がりの無い姿勢で真ん中あたりの席に座り、姿勢とは裏腹に柔らかな笑顔を浮かべながら待機している。なんていうか、彼女はきっとすごい人なんだ、というのはまだ半分も生きていないであろう俺にも分かった。周りの奴らもそれを感じているようで、忌避の目やこそこそと陰口を叩くようなやつも見られなかった。
次に目立つのは……俺たちのすぐ後に入室してきた、たぶん20代前半の彼。なんというかね、もうヤンキー、スーツ着たヤンキー。髪は光沢ある金髪のオールバック、スーツこそ変哲もないが革靴がすごく刺々している。後、お婆さんとは対照的に猫背である。
俺たちが俺の失態でにこやかにお話をしながら待っていると、彼がノック無し、躊躇いなし、勢い良しで賑やかな入室をしてきたわけだ。これは俺が自分の立場でもそう思うが、ドアを開けたら中で仲良く話す男女がいて、自分を見て気まずい空気が流れれば……ご機嫌も損ねよう。
彼は俺達をしばらく眺めて、一つ大きな舌打ちを放つと一番後ろの端の席でふんぞり返っている。ちなみに一番ドアの近くなので、後続の奴らを何人かビビらせていた。
後の奴らも個性的だった。それに年齢っていうか、人のタイプの層が広いというか、多種多様なタイプの人間が集まっている。その中でも俺達2人はまだ普通……だと思いたい。
この間にも道山さんと色々話した。彼女もこの会社近辺に住んでいることや、この会社大きいねー等、たいしたことない世間話だったが、久々にまともな会話というものをした気がする。面接が始まる前には俺もどもることは無く話すことができた。
そしてようやく……ドアに短くノック。「失礼するよ」と、良く通る声で一言。
面接が始まった。