入社だよ!全員集合④
入ってきたのは長身の女性で、あのお婆さんほどではないが上等そうなスーツをパリッと着こなしている。やや吊り上がった目元に赤渕のメガネが印象に残る、絵に描いたようなキャリアウーマンだった。
その後ろに彼女よりもさらに高い、190センチくらいあるんじゃないかっていう大柄な男性。大柄な体格とは裏腹にとても人懐こい笑みを浮かべている。物腰も穏やか、というよりは低姿勢な感じで、先のキャリアウーマンが堂々と俺たちの前まで移動してくるのに対し、彼は一人一人側を通る際「すみません」と連呼していた。
そして対照的な二人が俺たちの真ん前まで来て、男性の方が抱えていた端末を起動。後ろの大型スクリーンに連動しているようで、デスクトップの画面が表示されている。その画面にひと際目立つ、恐らく手書きで後から加えた赤い丸。その中心には書類のアイコンがあり、【特務課社員履歴データ】の文字が。
え?要するに俺たちの履歴書……なのかな?
「えー、初めまして。私がこの空百合の開発部のチーフ、束内 美穂よ。こっちの彼は植原 悠一君よ、彼は副チーフね。みんな今日はよろしく」
キャリアウーマンこと束内さんの挨拶に、多々ばらつきはあるものの「よろしくお願いします」と俺たちは返事を返す。明らかに不機嫌そうなのあいつだろ……
「ありがとう、みなさんよろしくお願いしますね。紹介頂いた植原です。さて……見てくれたらわかる……っあ、この中で視力悪い人いるかな?スクリーン見える?」
「悠一君、そういうのいらないわ」
「あ、すいません。じゃあ、進めるけど見えない方は自由に移動してください。思いっきり目立つように丸したんだけど、これは貴方たちの履歴データ、履歴書を保存したファイルです。これを開くだけで全員の履歴書が並んで、表示されるようになっています。」
なんとなく、二人のパワーバランスというか、尻に敷かれているんだなぁってことは伝わってきた。そんなことより、なんだ、公開処刑なんだろうか。というかあんなん住所とかもろに書いてあるぞ、いいのか?
周りを窺ってみても皆戸惑ったような表情で、口には出さずとも不可解である、と物語っていた。
「普通に考えたらプライバシー駄々洩れだからね。きちんと個人情報は隠してあるわ。重要なのは趣味やらPRポイント、そういった【貴方】を周りに知ってもらった上でチームになってもらいたいのよ。私、一から人間関係を築くのは面倒なので」
一転、なんというか我儘高飛車なことを言ってらっしゃるが、俺は少しわかる。人づきあいが苦手な俺も、一つずつ相手を把握していくのはとても疲れて、嫌になる事が多い。攻略本みたいなのを事前に渡しておいて欲しい。
「みなさんごめんね、彼女はこんな感じだから。彼女の我儘も少し、あるんだけれども本音を言うとね、もうみなさんの合格は決まっています。なので、早くお互いの内面を知ってもらおうと、そういうわけです。もちろん、このデータを開示されたくない方は申請してもらえれば大丈夫です、不合格になる事もありません。その方は別室にて今後の説明があります。
他の方は、この後スクリーンにデータを移しながら1時間ほど雑談をしていただきます。まぁ自己紹介ミーティングみたいなものです。その後、同じく今後の仕事説明に移らせて頂きます」
おぅ……まじか……えぇー。




