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カルテットシンドローム③

______【ムルテン雲海・西主 下級天使アルコン】の討伐を確認しました。


______ボスエリア攻略報酬として

【下級天使の羽根】【下級天使の鱗粉】【下級天使の尖槍】、更に次のエリアへのアクセス権を取得。クリアボーナス経験値も付与します。


______ボスエリアの解除を5分後に行います。素材等の回収等、推奨致します。




下級天使アルコンを危なげなく……ではないが、無事討伐、クエストもクリア!一件落着〜、と素材回収をしているところだ。WAOではモンスター、オブジェクト等から取れる素材はその付近で直接プレイヤーが【インタラクト】、要するにその物質に触れたり動かしたりしないとインベントリに獲得出来ない。


今のアナウンスのように個人にゲーム側から直接送られる物もあるが、フィールドにある物も忘れちゃいけないぜ。


「うっし、モンスターはこれで終わりかな」


「あ、はなださんお疲れ様でした。なんかレアそうなのありました?」


あ、鳥野内くん今ランナーズハイだね。バフ自体は戦闘終了後、精神衛生上速やかに解除してある。彼もこういう後始末、作業は慣れっこなのでサクサク終わらせたようだ。それはそれとして、俺の方は本当に天使素材が少しばかり取れただけ、やれやれと首を振っておいた。


「そういうカワセミくんは?」


「僕もまぁ……あぁ称号は獲得しましたね。【ジャイアントキリング】と【ヒットマン】、有能では有りますが、大抵のプレイヤーが所持してますよね」


「そうだねぇ、大概最初のボスでゲットできるよね。俺達は前回アタノールのハイゴブリンでゲットしたよ……あっちの方がタフだったけど、やっぱ知能は天使の方が機転が効くみたいだね」


ジャイアントキリングは自分より高レベルのモンスターを倒すと獲得、自分よりレベルの高いモンスターと相対するとSTRに 5%の上昇効果。ヒットマンは討伐クエストの対象モンスターを倒した際に獲得、討伐クエスト対象モンスターに対してSTRに 3%の上昇効果、だ。便利だが、必須という位大体皆持ってるね。


「ハイゴブリンは戦ったこと無いなぁ……それにしても自傷してまっ白さんの【ミニ零度玉】から脱出されたのは、びっくりしましたね」


ミニ零度玉はニッグと遭遇した雪原で山程取ってきた【白銀雪原の深雪】と【小狼の皮】、さらに少し勿体無い気もしたが【特ポーション】を錬金する事で出来た。


性能は特ポーションの犠牲を考えても優秀だと思うが、【対象に絶対零度(偽)の氷を付着させる】、とのことだ。(偽)ってなんだ、と思っていたがアルコンが無理矢理自傷して引っぺがしていたし、不完全な物なのかもしれない。


因みに、実験用に2つ作った。一回エンゼキャットに使ってみたところ、全身氷漬けになってそのまま倒してしまった。レベルや大きさも関係あるかもしれないね。


「本当に、それに何を発動したのか知らないけど最後の方の、衝撃波消されたのは正直焦ったわ……ラストアタック譲って失敗したかと思った」


アルコンはもう動けないだろうし、何かされても多少の反撃くらいかと、たかを括っていた。なんとか道山さんが赤犬のパペットでガード出来たから良かったものの、衝撃波を崩されたスキルの事もあるし当たっていたら危なかったかもしれない。


あー、反省点多すぎだなぁ今回。効率だけを考えるならフラッシュレイとナイトスマッシュ安定なんだけど……いかんせんパーティプレイだとタイミングがなぁ。それに今回は道山さん主役だったのもあるしな、難しい難しい。


「ま、まぁ無事だったわけですから……あ、そ、そういやあっちの積荷からこいつらが溜め込んだ奉納品とか採取出来ますよ!」


お、ちょいとばかしいつもの鳥野内くんが戻ってきたな。促された通り、天使達が屯していた辺りに乱雑に積まれていた、雲海からかなり浮き出たような、景色との異物感が凄い木箱の群れに向かう。


少し離れたアルコンが倒れている辺りから、道山さんと御薬袋さんも連れ立って此方に来た。御薬袋さんも今回は直接的にやりとりをしていないからか、まだ顔色は良さそうだ。


「おつかれっす〜」


「おー、お疲れ様、MVP!」


「いやいやー、褒めても……新しい称号しか出やせんぜ?」


初めてボスを倒した達成感からか、いつも以上にテンション高めな道山さんは、渾身のドヤ顔を披露。満点です!


「あ、新しい称号?どんなですか?」


「えっとね……【天界の尖兵】だって。えっと効果は……天界関連クエスト下における、HP・BIT値に7%の上昇効果、だってさ」


「へぇー……あれ?それカワセミくんは取れてないんですか?」


多少、道山さんと俺から話しかけられるのには慣れたような気がする鳥野内くんだが、御薬袋さんにはまだ緊張するようで、わたわたと慌てながら色々ウィンドウを開いたりしててんてこ舞いだ。


まぁ俺と御薬袋さんは直接NPCからアルコン討伐クエストを受けたわけではないので、獲得出来ないのもわかる。だが鳥野内くんは別行動してたわけでもないっぽいし、何でだろうか……何か二人で相違点があるんだろうかな。


鳥野内くんも悩んでいるみたいだが、それより、と道山さんと御薬袋さんに木箱からも素材が取れると教えてあげる。さぁー、ともあれもうじきにボスエリアも閉められちゃうんじゃないかな。


◆


______全プレイヤーの退出・または 5分間の経過を確認しました。


______ボスエリアの再構築を行います。


______再構築完了。再度プレイヤーの受け入れを行います。




ぼんやり、薄黄色の景色が見えて来る。


あー、また起きちまったのか……。目の前に見慣れ過ぎた雲海が広がってくる。


欠伸を一つ、眠たい、という感覚は分かりづらいが酒が残っている感覚は感じる。見れば周りは酔い潰れている部下が散らばっているのと、俺達が飲み食いしたであろうものが混ざり合っていた。


「ふぁぁ……落ちる前の記憶がねぇなあ……何してたっけ……あ、酒飲んでたのか」


我ながら頭が回っていないなと思わず笑ってしまう。天使が寝ているのだから、まぁ酒を浴びるように飲んだ後か、外敵からの影響しかないだろう。この様子だと、そんな事は無さそうだ。


「そいで、確か……酒が無くなったんだったか?」


酒樽を見る。有る、並々だ。有るじゃねえかと部下に蹴りを入れそうになったが、よくよく考えたら今日の記憶じゃないかもしれない。足を下げる。


「……ユーストリの奴は、と」


酔い潰れて意識を失っている部下達は、自分も含めて大体床に、まぁ床も雲海なので雲に挟まるように転がっているので、一々探さないといけないのが既に面倒くさい。


しばらくフラフラと移動すると、転がっている部下、ユーストリを見つけた。一番の新米で、上下関係が薄くなってきたこの警護所でも未だに使いっ走りはコイツだ。


「おい……おい起きろユーストリ!」


揺すっても起きない部下に少し苛立ち、爪先で顔を小突く。数回顔を転がしていると、嫌々ながらにユーストリが目を覚ました。しばらく呆けていたが、俺の顔を見ると慌ててその場で立ち上がった。


「あ、お、おはようございます、アルコンさん‼︎」


「おう、おはよう。起き抜けに悪いがお使いだ。ちょっとミューゼス近くまで行って奉納品の果実を持って来てくれよ、酔い覚ましには丁度いいんだ。お前は道中、食べても構わねぇから」


了解です‼︎と酒で意識を失ったにしては元気よくミューゼスに向かい走って行くユーストリ。わかるぜ、天使は翼が生えちゃあいるが、それで移動するのは結構疲れるからな。普通に歩いた方が楽だ。


段々と雲海の彼方にユーストリが走り去って行くのが見える。おーおー、若いのは元気だなぁ……。


地平線の境界、ユーストリの姿はそのまま見えなくなる。胸騒ぎ。


なんだこの感覚……ユーストリは普通にミューゼスに向かっただけだ……何ともない、よな?


分からない、俺は部下のお使いを一々気にする奴だったか?なんだこの感覚は。


突っ立ったままな事に気づき、警護所の方に戻る。部下は残り二人、酔い潰れている。本当に酔い潰れて寝ているのか?……何故そう思った?酔い潰れている以外有り得ないだろう。


ふと、部下の姿が脳裏にチラつく。何かしらに頭部をぶん殴られ絶命している。もう一人はツルのようなもので身体を縛られて、鳥の魔物のようなものに胸を貫かれて絶命している。


……なんだ今のは。妄想もここまでリアルだと才能かも知れないな……。


ずきりと、翼が疼く。触って確かめるが、両方異常はない。加えて、自分が右足を庇いながら歩いていた事にも気付く。何故だ?痛みはない、薄汚れたヨレヨレのブーツがあるだけだ。


なんだ……何かがおかしい。原因が分からず、心が騒つく。


その時きらりと、雲海の切間から眩しい光が顔に当たる。思わず目を逸らすが、次の瞬間には消えていた。あー……もうどうでも良いか。


だらだらと机に突っ伏してユーストリを待っていると、遠くから両手一杯に果実を抱えて帰ってくるのが見える。馬鹿だなぁアイツ、そんなに食えねぇよ。


あー、今日もクソめんどくせぇなぁ。


アルコンさんとは何度でも、戦えますよ

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