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クズと冒険者ギルド

 道を間違えて歓楽街に入ってしまったり色々とあったが、なんとか冒険者ギルドまでやってきた二人。


 「本当なんで冒険者ギルドに来るだけなのにこんなに疲れてるんだろう......?」


 「いや、本当すみません。テンションが上がってしまって」


 疲れた様子のアキホに申し訳なさを感じながらも初めてくる冒険者ギルドに目を輝かせる。


 「もう...... 冒険者登録するにはあっちの受付に行けばいいから行っておいで」


 そういってアキホが指をさした先には、綺麗な女性が立っている受付カウンターがある。


 蓮斗はアキホに礼を言ってそこに向かうと女性に話しかける。


 「すみません。冒険者登録をしたいんですが」


 「かしこまりました! では冒険者について説明いたしますね!」


 そういってにこやかに説明をする受付嬢。彼女の説明を簡単にまとめるとこういう事だった。


 冒険者にはランクが存在しており、高い方からS→Fとなっており、依頼をこなすことで上がっていく。


 依頼内容は、未開拓の地域の探索や出現した魔物の討伐から街の公共事業的なことまで多岐にわたる。


 危ないので死なないように気を付けて、でも死にかけるくらいまでは頑張れ。


 という事だった。


 まぁよく異世界物のラノベに出てくる冒険者と変わらないなというのが蓮斗の感想だった。


 「それでは、冒険者カードを作っていきたいと思います。この機械についてる水晶に手を当ててください」


 そういって差し出されたのは大体PS2くらいの大きさをした機械だった。


 言われたとおりに手を当てると、水晶が青く光り、ウィーンと音がしてまるでFAXのようにカードが出てくる。


 出てきたカードには蓮斗のステータスとランクが書かれており、出てきたばかりだからか仄かに温かい。


 「ハイ出来ました! それが冒険者カードです! 個人情報に当たるので不用意に人に見せないようにしてくださいね!」


 返事をして受付を離れてからステータスを見る。


 「さて、一体どんな力を発現したのかな? やっぱ王道的に勇者に選ばれていたりして!」


 名前 ハスト・クロイ

 年齢 17 種族 人間?

 職業 「盗賊」

 レベル 1

 ステータス

 HP 100/100

 MP 16/16

 筋力 10

 耐久 7

 耐魔力 5

 俊敏 13

 器用 9

 運 3


《スキル》

 「外道悪辣LV1」 対象に決めた相手が深層心理で最も嫌がるように職業、ステータス構成、スキル、が変化する。ステータスの総合値は変わらない。


 「窃盗LV1」窃盗するときに限り音や気配が小さくなる。どれほど小さくなるかはスキルレベルに依存する。


 「短剣術LV2」


 「目利きLV1」 スキル対象の価値がそれとなくわかる。


《称号》

 「外道」 人として最低だと女神に判断された証。 一般倫理から外れているような職業、スキルを取得しやすくなる。 悪事を働いている際にステータス上昇効果




 「たしか、転生者の初期ステータスだのスキルだのって性格とかに由来するんだよな?」


 なんだろう。今までの生き方を否定されたみたいだ。


 静かに落ち込んでいると、アキホが近づいてきた。


 「どうしたの? そんなに落ち込んで。 もしかしてステータス悪かったとか?」


 心配してくるアキホに冒険者カード渡す。


 「うん? ステータスの総合値はよくいるレベル1冒険者って感じだね。で、スキルが......なにこれ? うわぁ... 性格の悪いスキルだなぁ。というか職業が盗賊!? ちょっとどういう事!?」


 アキホが驚く。


 しかし、そのカードに書かれているのはいわばハストの人生の総評。そこまで驚かれると多少はムッと来る。


 「なんだよ。大袈裟だなぁ。たしかに勇者とか賢者とかが良かったのは認めるけど盗賊だって強いかもしれないだろ?」


 「あのね、職業が盗賊になるのは今までに窃盗とかの罪を犯した罪人だけなの! ゲームによくある盗賊はこの世界ではシーカ―っていう職業になってるの。まさか、君が犯罪者だったとは...... なんだかんだいってそういう事はしない人だと思ってたのに......」


 アキホからあらぬ疑いをかけられる。 ハストとしても心外だ。


 「いや、やってないからね!? 多分あれじゃないかな。 さっきの門番さんがスキル対象になっちゃってスキルの効果で盗賊になっちゃってるとか!」


 必死の弁明が功を奏したのかアキホが納得の表情を浮かべる。


 (よかった。そうだよ俺が窃盗なんてするはずないだろ。まったく。......ん? ちょっと待てよ? もしかしてあれかな? たかし君から借りてたドラクエ3返してなかったような...... もしかして借りパクも窃盗判定に入る? だったらあれとかこれも......)


 「あ、あの、アキホさん。いや、俺のことじゃないんですけど借りパクとかも窃盗に入るんですかね? いや、もし入るなら今後気を付けなきゃいけないなぁと思いまして......」


 恐る恐る聞いてみる。


 「いや、大丈夫だよ。借りパクもいけない事だけど冒険者やってると割とそういう事があるからね。了承を得ないで盗むとかしないと盗賊にはならないかなぁ」


 それをきいて安心する。


 「で、ですよね! なら大丈夫だ! あはははは......」


 安心したせいか心なしか声が大きくなる。


 よかった。借りパクはこの世界では窃盗判定にならなかった! ごめんねたかし君! いつか返そうとは思ってたんだけどね! 


 冒険者カードをアキホから返してもらい。冒険者カードにもう一度目をやる。


 さてと、こんなステータスでもこれが俺の今までの積み重ねなんだ!


 そう思いなおし、スキルや称号の詳細をみていく。


 (ん? この「外道」とかいう称号......)


 「外道」 人として最低だと女神に判断された証。 一般倫理から外れているような職業、スキルを取得しやすくなる。 悪事を働いている際にステータス上昇効果


 「もしかして......」


 いや、そんな馬鹿な。でももしかしたら......


 この称号の効果、一般倫理から外れている職業を取得しやすくなるらしい。


 (まさか、この称号の効果によって借りパクで盗賊判定されたんじゃ!?)


 驚愕の事実に戦々恐々とするハスト。


 しばしの間固まっていると、アキホに手を引かれて先ほどとは別のカウンターへと連れていかれる。


 「あ、ルーンさん。こいつ、しばらく私とパーティ組むから!」


 アキホの言葉にギルド内が静まり返る。


 いち早くその静寂から帰ってきたのは話しかけられたルーンと呼ばれた受付嬢だった。


 「え、えぇ!? アキホさんがパーティを組むんですか!?」


 その言葉を皮切りに静寂を保っていたギルド内が騒がしくなる。


 「アキホさん? 俺、パーティ組むとか聞いてないんですが? それになんでこんな騒ぎに?」


 「いや、君はこっちに来たばかりだろ? だから、こっちに詳しい私とパーティを組んだ方が良いよ! 騒ぎになるのは...... なんでだろ?」


 ルーンさんわかる? とアキホが不思議そうに聞く。


 「いや、今まで一度もパーティを組むことなくソロでAランクまで上り詰めたアキホさんが初めてパーティを組んだからに決まってるじゃないですか! しかもアキホさんこの前王都で有名なSランク冒険者のパーティの誘いを断ったばかりですし尚更ですよ!」


 アキホがなるほどーとのんきな声を出しながら納得そうな顔をする。


 そんなのんきなアキホの肩をハストがちょんちょんとつつく。


 「あの、アキホさん。正直これで他の冒険者に目を付けられたりしたくないんですけど」


 「なーに。大丈夫だって何かされそうなら私が守るし! それにパーティメンバーなんだから敬語は辞めようよ!」


 あっけらかんと言い放つアキホを見ていると、まぁ別にいいかこいつ強いらしいし何とでもなるだろという気持ちになってくる。


 というか正直ここで断ってもアキホにパーティに誘われた事実は変わらないんだしそれだったら守ってもらう方が都合いいかなどと、プライドを捨てた考えがハストの脳裏をよぎる。


 「じゃあ、そうさせてもらうかな。これからよろしくなアキホ」


 「うんうん。よろしくね!」


 アキホは何が嬉しいのかこちらに笑いかけてくる。


 (まったく。アキホからしたらメリットもないどころかお荷物を背負ってるだけだろうに)


 ハストはその笑顔にどこか能天気さを感じながら「おう」と返事をする。


 「あ、そうだ! ルーンさん! パーティ結成ついでになにかクエスト受けるよ! なるべく近場で簡単なやつない?」


 ルーンは、手元にある資料を読んで該当するクエストを探す。


 「あ。これなんてどうです? 薬草10個の納品とコボルト5匹の討伐です。討伐は少し難易度が高いですけどアキホさんも一緒なら初心者でも大丈夫でしょうし」


 「うん。それでいいよ」


 アキホは依頼書に目を通すと頷き、了承する。


 「じゃあ、ハスト! 初クエスト行こっか!」


 そういって楽しそうに冒険者ギルドを出ていくアキホ。ハストはそれを見て何故だか無意識に笑顔になっていることに気が付く。


 「はぁ。しょうがないな。 それじゃあ行きますか!」


 アキホが開いたギルドの扉から眩しく差し込む日の光がハストを包む。


 柄にもなくハストはその光が自分の新たな門出を祝っているような気がした。


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