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クズの異世界転生

みなさん初めまして。今作が初投稿となります。アドバイスなどありましたら教えていただけると幸いです。

 一人の少年が意識を覚醒させる。しかし、周囲は真っ暗だ。そこで少年は自分が目を開いていないことに気が付く。しかし、開こうとしても瞼はまるで錆びついたかのように言うことを聞かず、固く閉ざされたままだ。どれほどの間格闘していただろうか、必死になって重い瞼を何とかこじ開けるとそこは、どこか神聖なものを感じさせる場所であった。


 少年の目の先には、荘厳な椅子が一つ。そしてそこには女性が座っていた。


 周囲を確認するために首を回すと、まるで夜空のように暗い空間何個もの光が漂っていた。


 「あなたが、黒井 蓮斗(くろい はすと)さんですね」


 目の前の女性が話しかけてくる。


 そこで女性を注視して初めて気が付いたが、腰まである艶やかな髪は見る角度によって色が変わって見え、目鼻立ちもまるで最高級のビスクドールのような整った、蓮斗が今までの人生で見たこともないような美貌をした女性だった。


 そんな綺麗な女性を目の前にしてやることと言えば蓮斗の中には一つしかなかった。


 「あ、はい。黒井蓮斗は俺です。ところでちょっとそこで休憩していきませんか? いや、本当にちょっとでいいんで」


 「そうですか。良かったです。最近転生させる人を間違えてしまうミスが天界で多発してて......って休憩!? それってあれですよね!? 現世の方で言うナニの暗喩ですよね!? 何考えているんですか!?」


 「あ、ダメですか? じゃあ3...いや5枚でどうですか?」


 「いや、金額の話じゃないですよ! というか俗物過ぎませんか?」


 どうやら脈はないらしい。


 目の前の女性が呆れた目をしてこちらを見てくる。


 「すみません。 綺麗な女の人とは、いくら代償を払ってでもしけ込めっておじいちゃんから教わってて......」


 「いや、あなた一体どんな教育を受けてきたんですか!? ......そんなんだからあんな死因になってしまったんですよ...」


 流石にいきなり過ぎたかと蓮斗が反省していると、女性から聞き捨てならない言葉が飛び出してきた。


 「え、死因? てことは俺死んでしまったんですか?」


 「気付いてなかったんですね...... そうです黒井蓮斗さん。あなたはすでに死んでいて今のあなたは魂だけの存在となってしまったのです」


 驚愕の一言が女性の口から告げられる。


 自分がすでに死んでいるなどという受け入れがたい事実を知ってしまい、蓮斗は膝から崩れ落ちて絶望していた。


 「そんな...... まだやりたい事が沢山あったのに......」


 それを見て女神も、こんな欲望と異常さをもった蓮斗でも自分が死んだとなれば絶望してしまうのかと憐みの感情が芽生え、悲しげな眼をしながら蓮斗に問いかける。


 「お悔やみ申し上げます。 ちなみに、何をやりたかったのですか? 私に話していただければ少しは気持ちが落ち着くかもしれませんよ?」


 「すみません...... 初対面なのに気を使わせちゃって。そうですね。いろいろあります。まず札束風呂に、綺麗な女の子たちと複数人プレイ。あとは企画物AVに素人役として参加とか他にも......」


 「黙ってください。耳が腐り落ちます。あなたに少しでも同情した私が馬鹿でした。この薄汚い下衆が」


 蓮斗の言葉を聞いて女性の目は絶対零度を通り越してコキュートス並みになり、それ以上は聞きたくないと言わんばかりに蓮斗の言葉を中断させる。


 「んーーー...... もう一回お願いしていいですか?」


 しかし蓮斗は普通だったら心の折れるほどの罵倒を聞いてもまるで、高級ワインを嗜むかの如く味わいあまつさえおかわりを要求する。


 「嫌です。 というかこれ以上話していると私の耳が汚れるだけなので本題に戻しますね。まず私は女神です。蓮斗さんは死んでしまいました。しかし、それは天界では予測していない死だったのです。それで蓮斗さんには異世界へ行ってもらい、残りの寿命を過ごしていただきます」


 女神はこれ以上蓮斗と一緒に居たくないと言わんばかりに早口でまくし立てる。


 「あ、もしかしてこれって最近噂の異世界転生とかいうやつですか? なんだ心配して損した。異世界ってあれでしょ? 剣と魔法がある中世の世界で無双して大活躍して褒めたたえられるやつですよね? これで勝ち組だやった!」


 「お言葉ですが、そんな調子だと痛い目見ますよ? 確かに異世界に行くときに何かしらの才能が発現しますがそれはあなたの今までの生活や生き方、魂によって決まるので望むものが手に入るとは限りません」


 蓮斗の態度に少し腹を立てたのか女神がムッとした声で注意する。


 「あ、それなら大丈夫ですよ! 今まで品行方正に生きてきたのできっと勇者の力とか引き当てるはずです!」


 「どの口が言うんですか...... 取り合えず説明は終わったんでもう異世界に送りますよ?」


 蓮斗の謎の自信にしばし唖然としていた女神だったが、もう付き合ってられないとばかりに首を振って異世界転送用の魔方陣を展開する。


 「あ、待ってください。 最後に二つだけ質問をしていいですか?」


 「......なんですか?」


 女神は面倒くさそうな顔をして質問に応じる。


 「天界に俺の死が予測できなかったってどういうことですか? まさか謎のイレギュラーが暗躍して僕を殺害、そして闇の邪神を復活させようとしてるみたいな展開が......」


 蓮斗がドヤ顔をしながら思案顔をするという器用なことをしながら考察を口にする。


 「いえ、まさか貴方がここまでバ......アホ、いや、突拍子もない事をしでかすとはさすがの神々も予想してなかっただけです」


 「あ、そうですか......」


 蓮斗は神々にさえ予測できないほどの馬鹿と言われちょっと落ち込む。


 「じゃ、じゃあ、俺の死因って何なんですかね……」


 「聞きたいですか?」


 女神が何故か少し哀れな子を見るかのような目で見てくる。


 「はい。できれば……」


 女神はしょうがないかと、ため息を吐くと死因を蓮斗に教える。


 「まず、貴方のクラスメイトの成 金太郎(なり きんたろう)さんを覚えていますか?」


 予想外の名前に蓮斗は少し驚く。成 金太郎とは何かに付けて金持ちアピールをして来て、持ち物すべておフランス製という、アニメの世界でしか見たことないような成金野郎のクラスメイトだ。


 「はい。覚えてます。あのいけ好かないナナピカ野郎ですよね?」


 「ナ、ナナピカ?」


 「はい、親の七光り。略してナナピカです」


 「そ、そうですか。 そしてその金太郎さんが主催したクラスメイト全員を家に呼んで行った誕生日パーティで蓮斗さんが、金太郎さんの愛鳥であるセキセイインコの諭吉にこっそり卑猥な言葉を覚えさせた結果、後日お偉いさんが彼の家に行ったときに卑猥な言葉を連発して恥をかいたとかで一家カンカン! 殺し屋を雇って蓮斗さんを殺したらしいです」


 「え、そんなことで?」


 「そんなことで、です。 確かに金太郎さん一家もやり過ぎだと思いますが、蓮斗さんも何やってるんですか......」


 いたたまれない空気が二人を包む。


 先に耐えられなくなったのは蓮斗の方だった。


 「あ、あの。そろそろ送ってもらっても......」


 「あ、はい。わかりました。 あの、お気をつけて......」


 「ありがとうございます……」


 静かな空間の中で魔方陣だけがやけに派手に輝く。普通の異世界転生の現場だったらこれからの冒険を予感させるいい演出だったのかもしれないがこの場においては、空回っており滑稽にしかならない。


 光が最高潮に達し、気まずい表情のままの蓮斗を包みその場から消え失せる。


 どうしようもない気まずさが漂うこの瞬間であるがこれが後に異世界に少なくない影響を与えた黒井蓮斗の冒険の始まりの瞬間であった。

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