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第七不思議【そこに立つ少女】_3


 幽霊と七不思議作り。面白そうじゃないですか? それに、僕は思ったんです。彼女の影は薄かったし、境遇にも人間関係にも恵まれなかった。僕は親近感を覚えていたし、不覚にもこのまま幽霊と友達になれるんじゃないか……なんて考えてたんです。だから、彼女に意見に賛成して、一緒に七不思議を作ることにしました。


 あっ、バレちゃいまいた? そうです。最初に「誰の作ったかわからない七不思議」に「便乗して第七不思議を作る」って言いましたけど、あれは嘘です。お、怒らないでください! 不明なことって多いほうが、怖くなる気がして。


 ……でも、作り物じゃないってことは良くわかったでしょ? 僕が話しているのは、七不思議を作った女の子の話だ。ピッタリじゃない? この七不思議最後の砦として。


 あー、で、やってみたらもう、これがもう面白くて面白くて! まさか、誰も幽霊が怖い話作るなんて思わないじゃないですか。僕は、一番最後……第七不思議を担当することに決めて。そんなに得意じゃないんです、国語……というか、作文とか論文とか、文章を書くことは。でもね、頑張ってみようと。


 書いた不思議は、土間にある掲示板に貼ることにして、いつも彼女が作っては貼っていました。みんな、幽霊だから気が付かないんですよ。貼っていても。紙が急に現れた! って、ビックリするんです。その様子も面白かったですよ。新鮮な反応だなって。


 それが、最初に話した六つの不思議です。……全部語り手がいるから、さも経験したような話になってるでしょ? 経験談を聞いたみたいに。


 ……七不思議って、その存在自体が僕は怖いって思ってます。その名の通り、不思議な力がある。


 何が言いたいか……って、実際に起こったんですよ。


 文化棟に幽霊は現れるし……あ、Hさん以外でですよ、存在しないタナカ先生はアナウンスで呼ばれて、持ち物検査で生徒手帳を忘れたと騒ぐ子がいる。今サッカー部は活動休止中で、鏡はなぜだか一部取り外されています、新聞部は怒って抗議していますけど。それから、蛇口も止められて。……あの蛇口。使えないように、捻る部分が外されてますよ。


 絶賛、文芸部のみんなは部誌の原稿作成中なんですって。あ、文化棟ではやってないですよ? もう部室は移動してますから。でもね、いるでしょ? 文化棟に幽霊は。男の子じゃあないですし、元文芸部でもないですけど。

 タナカ先生のアナウンスも、実際に聞いてみると物凄く怖いですね。ちゃんと人が喋ってるのに、なぜだか無機質な機械音声のように聞こえるんですよ。ノイズっぽくて、抑揚がなくて。そこはもっと、人間的だと思ってたのに。今のところ、人影には遭遇できていません。先生たちの思い詰めた顔は、何度か見ました。

 生徒手帳は……実際に拾いました。誰が……って、僕がですよ。先生に届けましたよ。名前を書いて消えたくないですから、素直に忘れたと告げました。まぁ、この話が七不思議として回った後だったんで、先生も何も言わずに済ませてくれましたね。僕の渡した生徒手帳がどうなったかは……知りません。

 サッカー部は、先日練習試合をしていたはずなんですが……。居合わせた生徒に聞くと『凄い悲鳴が聞こえて、コートから人がどんどん消えていった』そうです。あぁ、人が消えた……と言っても、消失した訳ではなく、ベンチに移動しただけですが。

 鏡は、建て替えたとはいえ古いものも多いですからね。割れた破片で怪我をした子がいるとかなんとか。その子はちょっと、まいっちゃったみたいです、精神的に。男子トイレもね、鏡が撤去されてます。全部じゃないけど。女子生徒はみんな鏡を持ち歩いていますよ。スマホのアプリで、鏡使ってる子もいるのを知りました。アプリって、何でもあるんですね、今の時代。

 水は……身近過ぎて怖かったですよ。錆が出てずっと赤くなったから、止められたって聞きました。でも、今時錆って出るんですか? 親からはよく聞きましたよ、生ぬるい水に茶色がかった学校の水。鉄臭いって。まぁ、茶色どころか赤くてヌルヌルしてて、気持ち悪いから、点検のために順に止めるのは悪くはないと思います。学校の水道管、どういう作りになってるのかは知らないですけど。


 生徒手帳の時に、七不思議が出回った後に起こったって言いましたけど、勿論その話だけじゃなくて、他の話も出てきた後に起こってるんです、本当に。


 最早パニックですよ。パニックホラーみたいに、叫ぶ子もいれば泣く子もいるし、笑っちゃう子もいれば倒れちゃう子もいて。突然走り出したり、教室から飛び出したり、帰っちゃう子も当然。……こなくなる子はいないみたいです。高校だから、進級進路に関わりますからね、頑張ってるんでしょうね。

 保護者からのクレームは……不思議となかったです、今まで。いやぁ、流石にクレームが来たら辞めますよ。みんな、そんな状態になりながらも、楽しんでいると思ってます。思春期特有の、背伸びと強がりと。それから好奇心。僕は最初はビビりながら貼り出しを見てましたよ? Hさんは気にしてなかったよ。けど、僕はビビってるのバレちゃうと、同時に幽霊じゃないってバレると思ったんで必死でした。


 反響はとても大きくて、僕もHさんも大満足でした。


 出していったら話はなくなるもので、とうとう僕の番が。第七不思議、大トリです。緊張しました。けれど、何を題材にするかはとっくに決めてたんです。悩みはしませんでした。


 ――今話している、この、幽霊なのに幽霊じゃないと思ってる彼女の話。

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