出会いと事件
事件発生!
「困りました。私ったら何にも魔法を知らないのよね。」
「は?!なんなのお前!」
「じゃあ、なんで魔法学園にきたのよ!」
ひぇ~。
そんなの私が知りたいです。
――――1日前。
ついに!入学する時が来ました。
今程、入学式を終えて本日は学園内の案内で終わりだそうです。
お父様達はお仕事でもプライベートでもお付き合いの深いオルビン侯爵と侯爵夫人とお話ししています。
「オルビン侯爵様がいらしてると言う事は、御子息もここに入学したのですね。」
まあ、侯爵夫妻様とは小さい頃に何度かお会いしたくらいですので、私は知りませんでした。
楽しそうに談話してらっしゃいますのでもう少ししてから合流する事にしましょう。
「明日からここに通うのね~。」
明日は、新入生全員へ学園内の案内。その後クラスごとに各教室への案内と、少しだけHRがあるそうです。
家路に就く人混みを見つめていて、思わず。
「お友達……できるかしら。」
そう、無意識につぶやいていました。
この国の貴族は学校へは行きません。必要な勉強は家の者に教わったり、特別講師を招いて教えて頂いたりします。
ですので、家同士の交流やたまのパーティー等で馴染みのある貴族の友人は数人いますが、御学友というものは今まで出来た事がないのです。
「きっとできますよ!」
「へ?」
声のした方を見ると、綺麗な橄欖色の瞳がありました。
少し驚いて間があいてしまいましたが、
「!!!声に出ていましか!?」
思いが口に出ていた事が恥ずかしくて慌てて顔を両手で覆い隠します。顔が熱いです。
「ふふ。」
私より背が低いのでしょう。下から覗き込まれてしまいました。
栗色の髪がさらっとなびいている明るい雰囲気の女の方です。
「素直な思いがポンと口に出きる真っ直ぐな方ですもの。きっとできます。」
うう~。とても良い人です~。
「それに…………とっても可愛い方ですしね。」
ニコッと微笑んでくれた。
……ちょっと恥ずかしいですか。とても嬉しい言葉を頂いてしまいました。
「あの、ありがとうございます。そんな風に言って頂いてとても嬉しいです。」
急にそんな御言葉を頂いたものですから、嬉し恥ずかしでニマニマしてしまいました。
「あの。私アリミア・ディ・シアードと申します。よろしければ御名前を伺っても良いでしょうか。」
「ミーシャ・レーベルです!」
「よろしければ仲良くしてくださると嬉しいのですが。」
この素敵な方とはお友達になりまいです。勇気を出して聞いてみました。
「ええ。喜んで!」
やりました!キラキラ☆学園で初めてのお知り合いが出来ました。
「ありがとう。」
お互いにニコッと微笑みます。
感無量です!
そんな良い時にふと声をかけられました。
「ねえ、君。シアード伯爵家のご令嬢だよね。」
?男の方ですね。
「はい。そうですが。」
返事をして振り返ると、外ハネのThe・貴族!みたいな服装の男の方がいました。
「私は、ニコラルド・ディ・マデラと申します。この後ご一緒にお茶でもいかがかな?」
「きゃ!」
ドン!とミーシャを押しのけて私の手を取ってくる。
あっという間に詰め寄られてしまいました。
近い!そして失礼です!!!
何をするんですかこの失礼男!
ミーシャが怪我したらどうするんですか!
無理矢理握られた手を振り払い急いでミーシャに駆け寄ります。
「ミーシャ。ごめんなさい。大丈夫でしたか?」
「私は平気よ。ありがとう。」
と言ってくれました。
うう。ドンってなって痛かったでしょうに。なんて良い人なのでしょう。
それにひきかえ……。
「ちょっと。失礼ですよ。ミーシャに謝ってください!」
私はプンプンなのです。怒っているのです。
しかし、なんでポカンとしているんですか!この失礼The☆貴族は!
手を振り払われて、まさか!と言う顔をしていたこの男は、
「僕の手を振り払った?そんな馬鹿な。」
とブツブツ言っています。
はい。全然聞いていませんね。
で、あれば、むしろ、なんか、すごく面倒そうなのでブツブツしているうちに人混みに紛れておいとましましょう。
逃げるが勝ちです!
ミーシャに向かって人差し指を口の前に立てる仕草をして、2人でそろ~っとその場を離れました。
「あ!もしかして恥ずかしかったんだ…………。」
後ろでまだな何か言ってるようですが、無視です無視。
「ふぅ~。」
もう大丈夫なようです。
「巻き込んでしまってごめんなさい。」
私はミーシャに謝りました。
「いいえ。アリミアのせいではないでしょう。」
優しいミーシャに怪我がないかをもう一度確認して、今日はもうお暇する事にしました。
今日は早く帰ってしまった方が良さそうですしね。
名残惜しいですが……明日からもミーシャには会えます!
挨拶をして帰路に着きました。
――――そして、事件の日。
今日はまず入学者全体への校舎案内。講堂に集まっている生徒を先頭から何グループかに分けて構内を回るようです。
各クラス棟、図書室、食堂、売店。
他には実技室、実験室等がありました。各クラスでも実技や実験を出来る設備があるようなのですが、こちらはより部屋も大きく設備が充実しているのだそうです。
全体練習室は、高出力の魔法にも耐えられるようになってるのだそうです。
案内してくださっている先生が話を続けています。
「この空間から魔法が突き抜けてしまわないように施されています。」
「へぇー。」
「壁より先には魔法が漏れません。」
「物は試しですね。」
えーっとあなたとあなたと……。そして、あなた。
って、私もー?!
壁に向かって魔法をお願いします。
身近にいた私も声をかけられてしまいました。
「なんでもいいのですから!一斉にいきますよー。」と担当の先生。
「では。撃て!」
合図で7、8人の生徒が何かを唱え魔法を放ちます。
……。私以外。
先生が、「どうしました?」
と心配そうに声をかけてくる。
う~ん。困りました。
無知すぎて皆がしてるような詠唱魔法を知らない。
入学してから全部教えてもらおうかと思ってたから何にもしらない~!!
――――という。状況です。
――――事件です。
「困りました。何の魔法も知らないのよね。」
『え?!』
何でそんな子いるの?と周りが言っています。
私だってそう思ってるわよ!
ガヤガヤガヤガヤ。私のせいで騒がしくなってしまいました。
「もーいいんじゃない?何にも知らない子の実技なんてしなくてもさ~。」
「時間の無駄よ~。」
と悪い方向ですが、私がやらなくても良い流れになりそうです。
って、そんなに甘くないですね。これだけ人がいるとやはりどんどん輪が広がってしまいますね。
「本当に適性あるのでしょうか?」
「少なくても多少は解るわよね?」
「何も魔法を知らないって本気で言ってるのかしら?」
「来る場所をお間違えなのではなくて?」
と、色々と聞こえてきます。
う~ん。
ここから今すぐ立ち去りたいです。
そんな悶々としていると後ろの方から、
「なんか心で思えばでてくるんじゃね?」
と言う声が。
…………?
……?周りもぽかーん。
なに言ってるのこの人?
そして私にしか聞こえない声で「……久しぶり。」
と。
うん?久しぶりですと?!
緋色の瞳と目が合います。
すると、
「ははは!なんだそれ!」
「こいつおかしいんじゃねーの?!」
「何を言っているのでしょう?」
「『思えば』って。そんなんで魔法が使えるわけないじゃないか!」
といろんな罵声が飛んできてしまいました。
ああ。私のせいでこの男の人にまでこんな目に遭わせてしまっています。
ひ~。いたたまれないです。
「はは!言葉遣いが雑になっていますよ。」
「あ!いっけね!」
檸檬色の髪の人もやってきました。2人は知り合いなのでしょうか?
「『思い』ね。」
「私もそんな感じですよ。」
今ほど現れた濃紺の瞳は柔らかく微笑んでいます。
するとまた明後日の方向から声がします。
「そうね~。私もよ!」
今度は背の低い金髪の桃眼の可愛らしい女の方がやってきました。
「私もだな。」
すらっとしたかっこいい女の方まで。
なにやら、同情してくれる人達がで出てきてくださいました。
「何言ってんだ?こいつら?」
「さー。」
「?」
「わけわかんねーなー。」
「思えば出るって!笑」
「「わはははは!」」
「今年は変なのが混ざってるなー!笑笑」
・
・
・
。
私のせいでここの皆様にまで恥をかかせてしまっている。
周りから聞こえてくる笑い声。
「わははは!」
「わははは!!」
……。
なにやらムカッとしますね。
とりあえず私が何かすれば、この騒ぎは終わるはず。涙。
魔法のやり方なんて知らないから。
とりあえずこの人達が言ってたようにしてみよう。
どーしよ。でも、何を?
おろおろおろおろ……。
私が挙動不審な動きをしていると、最初の男の人が隣に来てくれて。
「大丈夫。」
と言ってくれました。
――。
「えーと。じゃあ。」
周りを見渡して、目を閉じて考えてみます。
しかし、聞こえてくる笑い声。
まだ笑ってる!
本当にムカムカしますね。
私の事は構わないのですが……。
こんな優しそうな人達を……『笑わないでー!!!!!』
しーーーーん。
!!?!
何だか急に静かになりましたね。
目をあける。
?!?!
パクパクしてる周りの人。
なんか顔だけ驚いてる。
???
え?!え?!え???!!!
何が起こったのでしょう?
訳が分かりません!!
HR=ホームルームです。