旧都に巣食う冷狼1
東京はいつの間にか無法地帯となっていた。
そんな中、新たに冷獣を狩って生きることを決意した者がいた。
「だからね、父さん。うちの作る刀じゃ人は殺せても冷獣は殺せないんだよ。鉄を打っただけの刀で奴らを仕留められるなんて、特殊な才能を、タレントを持つ一握りの人間だけだよ」
「だからと言って、コツコツと貯めてきたうちの全財産を氷室社といったか?あの会社の妙な武器を買う為に費やすなど、金を溝に捨てるようなものではないか」
冷獣は凶暴で戦闘力も高い。氷室社とは寒冷化以降の技術を駆使して対冷獣用の武器を作る会社だ。なんでも、冷獣の体の一部を製品開発に利用しているとの噂もある黒い企業である。氷室社の製品は高性能かつ高額だが、よく壊れる上に保証がないため、タレントと呼ばれる並外れた身体能力を持つ者の中には、従来品の刀や銃で冷獣を狩る者も少なくない。
「それにだトオル、わざわざ無理して冷獣と戦う必要はないのだ。家業を継いで平穏に暮らしていけば生活には困らんよ。冷獣は倒せずとも護身用の武器として利用客もおるのだからな」
「甘いんだよ父さんは。いずれ大企業が低価格で民間用の武器を売り始めたら、こんな小さな店なんてすぐに潰れるよ。父さんはもう隠居するし関係ないかもしれないけど、僕の将来はそんな上手くいくとは限らないんだよ」
息子にそう言われるとトオルの父、ゲンジは口をつぐんだ。度々意見が衝突してはいたが、そろそろ限界なのだろうか。確かに周囲の環境が著しく変化する中で、この店と共に取り残されてしまったのかもしれない。
しかし、未来なんて誰にも分からないのだ。財産を氷室の得体の知れぬ武器に賭けるか、このまま大企業に潰されないでいる未来に賭けるかの二択の中で、高木武器店という小さな店の親子は意見を異にしていた。




