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ストーカーがいじめを受けていた。

 3月になってもう数日。

 ホワイトデーのお返しは何にしようか。高価なものにするか、それとも頑張って手作りにしてみるか?

 告白する時の台詞はどんな感じにするか。シンプルがいいか、ロマンチックなのがいいか?

 なんだかんだ言って、決戦の日が近づくと共に、俺の胸は高まっていた。

 少し気がかりなのは、

「……」

 彼女が日に日に辛そうな顔になって行く気がするのだ。

 まあ、大方彼女は自分に自信がないから告白しても断られるに決まってるとか思っているのだろう。

 そんな感じに楽観的に考えていたのが、馬鹿だったのだろう。



「……」

 授業中に彼女の方をチラ見すると、もじもじしている。

 きっとトイレに行きたいんだろうなと思っていると予想通り、授業が終わるとすぐに教室を出て行った。

 段々俺も彼女の事をストーキングしがちだが、流石にトイレについていく趣味は無い。

 文化祭の時に彼女をトイレに連れて行った後に排泄音を聞こうと壁に耳を押し当てた事もあるが、あれは不可抗力というやつだよ。

 もう文化祭も数か月前の出来事になるんだなあとしみじみとしているうちに、休憩時間が終わって次の授業が始まる。

 しかし彼女は教室に戻ってこない。大なのだろうかとデリカシーの無いことを考えてしまう。

 そして彼女が戻ってこないまま、その授業も終わってしまった。

 明らかにおかしい。いくらトイレが長いからって授業丸々1つ潰れるはずがない。

 気になった俺は次の休憩時間に彼女の携帯にメールを送る。

『どうしたの? 途中から教室いないけど』

 すぐにメールが返ってきた。

『なんでもないですすぐきょうしつにもどります』

 メールが返ってきて1分程で、彼女が教室に戻ってくる。

「……」

 ずぶ濡れの姿で。

 普段はクラスでも目立たない彼女であったが、一気に教室中の注目を浴びる。

「うわ、何やってんのあいつ?」

「床が濡れるんですけど」

 当然悪い意味の。



 セクシーとかそんなアホな事を考えている場合ではない。

「ちょ、ちょっとどうしたの?」

「……」

「とりあえず、ジャージに着替えなよ。……あ、今日体育無いから持ってきてないか。俺のがあるから貸してあげるよ」

「……」

 ジャージを手渡すとコクコクとうなずいて着替えるために再び教室から出て行く。

 俺のジャージを借りられるという彼女からすれば役得な展開のはずなのに、

 彼女は全く笑っていないし喜んでもいない。

 そして俺のジャージに着替えた後、その次の授業を受けた彼女は、

『ありがとうございますじゃーじはせんたくしてかえします』

 と俺にメールを寄越す。

 彼女はメールとかではもっと明るい文面だったのに、今日の彼女は変換や句点も使わない程に陰鬱だ。



 お昼休憩になり、購買にパンを買いに行く。

 その帰りに、クラスの女子とすれ違う。こないだ俺にドッキリで告白をしたグループだ。

「さっきの顔見た? マジキモキモスゥじゃけんね」

「写真とっとっとーよかったわ」

「ウチ的には水かけられた時の『きゃっ……え? あ……え?』みたいな声がウケたわ」

「物まね似すぎっしょ」

 あまり俺としては好きになれないような笑みを浮かべながら通り過ぎる女子達。




 ……今何つった、『水かけられた時の』!?

 その瞬間ピースがはまる。

 彼女は、あいつらにトイレで水をかけられた。

 彼女はあいつらに苛めを受けていたんだ。

 原因……ああそうだ、この間俺がドッキリで告白された時、彼女怒ってビンタかましたじゃないか。

 いつも地味で無口で、スクールカースト的にも底辺に位置する彼女があんなことをすれば、

 クラスの女子の反感を買っていじめにあう、容易に想像のつくことだ。

 はは、つまりあれか、あの日から今まで、彼女はいじめを受けていたのか。

 だから日に日に彼女の顔が辛そうだったのか。

 そうとも知らず呑気に俺は告白のセリフなんて考えてニヤニヤしてたのか。

 彼女は俺のために怒ってくれたのに。



「……」

 俺のジャージに身を包み、ふらふらとした足取りで俺の後に続いて下校する彼女。

 部屋に戻った俺はネットゲームをつける。

 しかし彼女はログインしない。

「……あっ、うっ、あっ、いっく、えっく、……! ……おえええええっ」

 その代りに隣の部屋から、涙声と、嗚咽が聞こえてきた。



 ホワイトデーなんて待ってられない。

終盤にありがちな申し訳程度のシリアス展開

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