ストーカーを優しく抱きしめて!
彼女は、誰にも頼らずに今まで耐えてきたのだろう。
彼女がその気になれば、いじめなんてすぐ解決できる。
彼女の実家についてカミングアウトすればいいだけの話だ。
そうすれば周りの皆は彼女をいじめるどころか怖がるだろう。
でも実家が嫌いな彼女に、真面目な彼女に、そんなことはできやしない。
自分の力で解決しようと、ずっと耐えてきたのだろう。
「えっ、えっく、ああ、あっ、ああ」
いじめを受けていた時でもネットゲームでの彼女は、いつもと変わらない明るい感じだった。
その時でも、きっと壁の向こうでの彼女は辛さに耐えていたのだろう。泣いていたのだろう。
どうして現実の彼女を見ずに、ネットの彼女を見て安心していたんだ俺は!
彼女はロクに喋れない、助けを求めることもできない。
そのくせとても優しくて、だから全部一人で抱え込む。
今までずっと、彼女を見てきた俺は、彼女のそういうところを理解していたはずなのに。
彼女のストーカーの癖に、喋れない彼女と意思疎通をしていたのに、彼女の声なき助けを求める声に気づかなかったのかよ!
「いぐ、いぐ、いぐ、えっぐ、えく」
普段ロクに喋れない彼女が、隣の部屋にも聞こえるくらい泣いている。
彼女のSOSに気づかなかった俺に彼女と結ばれる資格なんてないとか言っている場合じゃない。
今すぐにでも、彼女を救ってやらないといけない。
ベランダに出た俺は隣……彼女のベランダへ侵入する。
俺の前には窓ガラス。
鉄パイプなんてなくたって、こんなガラス、
「ふんっ!」
彼女への愛と、自分への怒りの鉄拳でぶち割る。
「えぐ……!?」
部屋の隅で俺のジャージを着たまま体育座りになってうつむいて泣いていた彼女であったが、
突然部屋に入ってきた俺を見て泣き顔のまま唖然とする。
「こんにちは、強盗です」
「……? ……?」
パニックになる彼女。
「あなたの心を盗みに来ました」
「……? ……?」
あまりにも突然の展開についていけないのか、泣き止んで首をかしげてばかりな彼女。
俺は体育座りしていた彼女の身体をひょいと持ち上げる。
「ごめん、ずっと気づいてたんだ。君が俺のストーカーだって。隣の部屋に越してきて、監視カメラまでつけちゃう、どうしようもない変態だって」
「……!?!?!?!?」
そうカミングアウトした瞬間、泣き顔が一瞬にして大噴火。固まった顔の茹蛸の出来上がり。
「そんなどうしようもない変態野放しにしたら大変だから、俺が責任とらないとね。……ごめんよ、寂しい思いさせて。もっと早く、この台詞を言えばよかったよ。……好きです、俺と付き合ってください」
彼女を優しく抱きしめる。
「……はい」
彼女は顔を真っ赤にしながらも、笑って俺を抱きしめて、はっきりとそう言った。
その目からは悲しみではなく嬉し涙がぽろぽろとこぼれていた。
なんだこれ




