ストーカーに恋愛相談しないで!
「ナーオ」
「よしよし、良い子良い子。それじゃ、行ってきます」
アパートの前でごろごろしている猫を撫でて学校へ向かう。
「ナーオ」
「……♪」
しばらくして、俺の後をつける彼女も猫を撫でる。
あの猫を飼ったのは、大体半年前くらいか。
彼女と出会って、この関係を続けて、もう半年以上になる。
俺と彼女の関係は、言い表すならば、エンディング直前でサブイベントばかりやっていると言ったところか。
元々俺が自分から彼女に告白せず、彼女のストーキングに気づいてないフリをし続けているのは、
彼女が勇気を出して俺に告白してくれるのを待っていたからだ。
しかし、実際にあの打ち上げの日、酔って覚えてないとはいえ、彼女は確かに俺に告白をした。
あの時俺は、必死で彼女が告白を覚えていないことを願った。
何故?
怖いのか? エピローグが。
彼女の告白を受け入れて、彼女と付き合いだして、それで、それで……
もしも、うまくいかなかったら。
物凄く失礼な偏見かもしれないが、好きな男のストーカー、しかも部屋に監視カメラまでつける女と付き合って、果たしてうまくいくのだろうか。
付き合いだしても監視や束縛をするだろうし、エスカレートする可能性だってある。
現実の男性に、『あなたの事が大好きな美少女ですが常にあなたを監視したり常にあなたの側にいたり常にあなたを束縛しようとします。彼女と付き合えますか?』と問いかけて、果たしてYESと答える人間がどれほどいるのだろうか。
今の関係は、それなりにうまくいっている。
その関係を壊して、新しい関係に進むことを俺は恐れているのだろうか。
だとしたら、とんだ保守的な人間だ。
今の関係が、いつまでも続くはずがないのに。
俺はどうするべきなのだろうか。
悩んだ末、俺は恋愛相談をすることにした。
『フレグランスさん、実は恋愛相談があるんです』
ネットゲームで、彼女に。
『……すいません、ちょっとトイレに』
俺が話を持ちかけた後、10秒程沈黙が流れ、彼女はそれだけ言うと、
オエエエエッ!
隣の部屋から、嘔吐の音が聞こえる。
……吐いた!?
しまった、好きな男から恋愛相談される彼女の気持ちをまったく考えてなかった。
そりゃそうだ、俺が恋愛相談するということは、俺に好きな人がいるということであり、
それが彼女以外の人間である可能性を考慮すれば、彼女が吐いてしまうのもわかる。
『大丈夫? えーと、恋愛相談ってのは、俺の友達の話なんだけど』
ネットゲーム越しに俺が彼女の容態を気にかけるのはおかしな話なのだが、彼女をこれ以上傷つけたくないので友達の話ということにしておく。
『あ、友達だったんですか。よかった……』
持ち直したであろう彼女に、友達の話という体で恋愛相談をする。
内容は、『自分の事を好きな女の子の気持ちに気づいており、自分も彼女の事が好きなのだが、付き合った後うまくいかないことを考えると踏ん切りがつかない』というものだ。
『難しいですね……確かに付き合った後のことって大事ですし、もうしばらく様子を見て、相性とかを確かめるってのはどうでしょうか。あ、でもうかうかしてたら女の子が心変わりするかもしれませんね』
『なるほど。参考になったよ、ありがとう』
『どういたしまして。……深淵さんは、気になる女の子とか、いないんですか?』
『ははは、秘密』
『そっか、よかった』
よかった、と彼女が言ったのは、俺に好きな人がいたとしてもそれは自分ではないと思っているからなのだろう。
彼女のような人間は、自分に自信がないのだ。
それはともかく、もう少し様子を見てと彼女が言ったので、もう少し様子を見ることにしよう。
彼女の心が変わる心配もなさそうだしね。




