ストーカーを酔わせないで!
『これにて、焔崎高校文化祭を終了いたします!』
二日間にわたり行われた文化祭もあっという間に終わってしまった。
一日目は学生が楽しむのがメインなのでそれなりに自由な時間が出来たが、
二日目は一般客を楽しませるのがメインな上、予想以上に外来の客が多くててんてこ舞い。
まあ、彼女と一緒にお化けコスプレしたり、トイレの介抱したり、演劇見たり、クレープ食べたり、女装見せたり、十分すぎる程に楽しめたと言っていいのではないだろうか。
「それじゃ、かんぱーい!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
「……♪」
文化祭の後片付けを終えた俺達のクラスは、ビュッフェへ向かい打ち上げパーティー開始。
ちゃっかり俺の隣に座っている彼女は、俺と乾杯をした後テンション高めにジュースを一気飲み。
「俺の女装どうだった? なんか失神してたのが見えたから、そんなにキモかったのかなって、ごめんね」
「……! ……」
俺の問いかけにふるふると首を振る彼女。
そして携帯電話を取り出すと、撮影していた俺の女装姿を見せつけてくる。
すごく似合っていると言いたいのだろうが、そんな気持ち悪いものを見せないでくれ。
しばらく打ち上げを楽しんでいたのだが、
「……」
彼女の顔が赤くなっていることに気づく。
彼女は元々俺が近くにいると赤面してしまう可愛い女の子だが、
明らかに照れの赤面ではない。かなりぼーっとしており、食事にも口をつけていない。
というか、辺りを見渡すとクラスの女子勢がほとんど赤面している。
不審に思った俺は、彼女の飲み物を嗅ぐ。この匂いは……酒だ。
「おいお前、お前何考えてんだ」
「え? いいじゃんいいじゃん、女の子酔ってる方が嬉しいだろ?」
幹事の男に詰め寄る。
この野郎、女子の飲み物だけアルコールにしやがった。
しかも連中の表情を見るに結構きつい酒だな。
大学の新歓コンパ等でよくやる手口らしいが、こいつ本当に実行するとは。
「お前いい加減に……あわわ」
この馬鹿野郎をボコボコにしてやろうかと考えたが、彼女がグビグビとお酒を飲んでいるのに気付く。
「こら! 駄目でしょ! お酒は二十歳になってから!」
慌てて戻り、彼女のお酒を没収。
「……」
「そんな顔しても駄目だよ……ってちょっ」
「……♪」
完全にデキあがってしまったのか、頭から湯気を出しながら彼女は俺の身体にべたべたくっつく。
いつもは見せないちょっと大人な表情に俺もドギマギ。
「……」
「ちょ、ちょっと、何脱ごうとしてるの! 駄目だよ、駄目駄目!」
制服のボタンを外そうとする彼女を制止する。
「……♪」
「キス!? 駄目だよ、こんな人が見てる前で」
続いては目を瞑って俺の唇を奪おうとする。お酒って人をここまで変えるのか。
その後しばらく酒乱状態の彼女の相手をする羽目に。
最終的に彼女は俺の胸に顔をうずめて、
「す……き……です」
そう呟いて、すやすやと寝息をたてはじめた。
「……」
「あの馬鹿幹事……」
そして今、俺は寝てしまった彼女をおぶって帰っているところだ。
これは俗に言う『お持ち帰り』じゃないか。
それにしても、とうとう告白されちゃったなあ。酒の勢いとはいえど。
アパートに戻った俺は、彼女の部屋に入り、彼女をベッドに寝かせてやる。
さて、彼女は酔っていた時の記憶を覚えているのだろうか。
覚えているのだとしたら。告白したことを覚えているのだとしたら。
その時は、その時は。
自分の部屋に戻り、俺も眠る。
数時間で目を覚ました俺は、ネットゲームにログインする。
今日は月曜日だが文化祭の代休だ。
すると彼女がログインする。
『おはようございます深淵さん。昨日文化祭の打ち上げに行ったんですけど、どうもお酒を飲んじゃったみたいで、気づいたら家のベッドに寝てたんですよね。何か失礼な事をしてないといいんですけど』
『そうなんだ。そういえば俺も昨日文化祭の打ち上げに行ったんだけど、隣の女の子がお酒を飲んですぐに寝ちゃって、打ち上げが終わった頃にふらふらと帰っていったよ。ちゃんと家に帰れたかなあ』
『そうなんですか。よかった……』
よかったよかった。彼女は昨日の事を覚えていないみたいだ。
ん? これじゃまるで俺が彼女の告白から逃げているみたいじゃないか。
ははは、そんな馬鹿な。




