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ストーカーを昏睡させないで!

 彼女の実家にお邪魔することになった俺。

 客間で彼女に少し待っててとジェスチャーされたので、くつろぎながら彼女を待つ。

 それにしてもいい畳を使ってるなあ、あそこに飾ってある日本刀は本物なんだろうか?

 掛け軸も色々飾ってあるけど達筆すぎて読めないや。

 そんな感じにそわそわしながら待っていると、彼女がやってくる。

「……」

 制服から着物に着替えた彼女が、机に飲み物とお菓子を並べる。

 夏休みの時の浴衣も綺麗だったけど、着物姿の彼女もいいなあ。



「お面に使う生地とかは、100円ショップで買えばいいかな? でもあんまり質が悪いとすぐ破けそうだね」

「……」

 お菓子をいただきながら、彼女と打ち合わせ。

 飲み物を頂こうとしてふと考える。

 漫画とかだったら、飲み物の中に睡眠薬が入ってたりするよなあ。

「あ、あそこに」

「……!?」

 対面して座っている彼女の後ろを指差して彼女を振り返らせる。

 その隙に、こっそり彼女と俺の飲み物を入れ替えてみた。

「……?」

「ごめんごめん、俺の見間違いだったみたい」

 不審に思いながらも、彼女は俺に出す予定だった飲み物に口をつける。



「……」

 結論。10分で畳に倒れるように寝た。

 最近の睡眠薬ってこんなに即効性があるのかと感心しながら、無防備にすやすやと寝息を立てている彼女の身体をじっくり眺める。

 寝つきはあまりよくないようで、頻繁に寝返りをうっている。

 その度に着物が着くずれして目に毒だ。

 さて、女の子が俺に睡眠薬を盛ったはいいが自分で飲む羽目になって俺の前で寝ているというこの状況、どうするべきか。

 そもそも彼女は俺を昏睡させてどうするつもりだったのか。

 俺も健全な青少年、頭の中であれやこれやと妄想をしてしまう。

 素直に昏睡しておいた方がいいのではないだろうか?



 しばらく起きそうにないし、少しくらいなら悪戯してもいいかな……? と思ったが、ふと集中すると、部屋の周りに何人か人が待機しているのがわかる。

 危ない危ない、ハニートラップだ。

 事情を知らないこの家の人間からすれば女の子の家に遊びに来て女の子を眠らせて悪戯する畜生だからな、瀬戸内海に沈められたらたまったもんじゃない。

「あの、寝ちゃったんで、毛布とかありませんかね?」

 部屋の外でおそらくはこちらを監視しているであろう人にそう伝えて、毛布を彼女に被せる。



「……?」

「おはよう」

「……!?」

 2時間後、目を覚ました彼女は状況を把握したのかテンパりだす。

 顔を赤くしてはわはわしている彼女に悪戯しておけばよかったなと思いつつも、

「いや、急に寝ちゃったから寝かせておこうと思って。別に何もしてないよ、本当だよ。何なら家の人に聞いてみるといいよ」

 自分の潔白を証明するのだが。

「……」

 不満顔な彼女。

 人を昏睡させようとするわ、自分が昏睡したら悪戯を望むわ、彼女の歪んだ愛もエスカレートしてきているようだ。

 まったく恋の相手が俺でよかったよ。



「それじゃ、また明日ね」

「……♪」

 打ち合わせをした後、彼女に見送られて家を出る。

 しばらくしたらきっと彼女も制服姿で俺を追いかけにくるのだろう、気持ちゆっくりめに歩きながら、そういえば彼女の部屋を見るのを忘れていたなあともう一度彼女の家に行く口実を練るのだった。




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