ストーカーを部屋に入れないで!
「……」
下校中、後ろからの彼女の視線に気付いてないフリをしながら俺は自分の住むアパートへと戻る。
俺が部屋に入るとしばらくして隣の部屋のドアが開閉される音。彼女も自分の部屋に入ったようだ。
そういえばこのアパート、オンボロだし音を出せば普通に隣の部屋に聞こえそうだな。
ふむ……
「さーて、これから3時間くらい近くの古本屋で漫画を読んでくるか!」
俺はわざとらしく、自分の部屋で独り言。隣の部屋の彼女に多分聞こえているだろう。
その後すぐに俺は部屋を出て、辺りに隠れて様子を伺う。
すると彼女が部屋から出てきた。俺の行き先とされている古本屋に向かうのかと思いきや、
「……」
彼女は辺りをきょろきょろと見渡した後、俺の部屋のロックを外して中に入った。
なるほど、俺のいない間に部屋を物色というわけか。
そのまま10分程様子を見るが、彼女は俺の部屋から一向に出てこない。
一体中で何をやっているんだろうなあ、気になるなあ。
そうだ、いいことを思いついた。
「あー忘れ物しちゃった。あれえ? 鍵がかかってないぞ、おっかしいなあ」
わざとらしく俺は大声をあげながら、自分の部屋に入る。
彼女からすれば、俺のいない間に部屋を物色しようと思って部屋に入ったら予想以上に早く帰ってきた、まずい、どうしよう! といった感じだろう。
さあ、どうする彼女。この窮地をどう切り抜ける!?
部屋を見渡すが、彼女の姿はどこにもない。
窓から外へ出て行ったのかと考えたが、窓の鍵は閉まっている。外から閉めることはできないから彼女は部屋から出ていないのだろう。
となると、彼女はどこかに隠れていることになる。
「……」
気を集中させると、かすかな彼女の吐息が聞こえた。
……押入れか。どうやら猫型ロボットよろしく彼女は押入れに隠れているらしい。
さて、隠れている彼女は一旦放っておいて、彼女が一体俺の部屋で何をしていたのかを突き止めるか。
特に何か物が無くなっているようには見えない。部屋を出た時とは違う、違和感と言えば……
布団だ。綺麗にしいていた俺の掛け布団が、ぐちゃぐちゃになっている。
掛け布団を触ると、かすかな温かみが。
どうやら彼女は俺のベッドにダイブして、匂いを堪能していたようだ。
照れるな、なんだか。女の子に布団の匂いをかがれていると意識すると、ちゃんと布団も洗濯しようという気持ちになる。
さて、彼女の処遇はどうしようか。
このまま彼女に気づいていないという設定のまま部屋を出て行くのはなんともつまらない。
もう少しだけ、部屋で待機してみよう。
「……」
5分経過。彼女はまだ押入れから出ることができない。
もし彼女が諦めて押入れから出てきてしまい、俺とご対面してしまったらどうしようか。
流石に彼女は言い逃れできそうにないし、その時は優しく抱きしめてあげようか。
「……!」
10分経過。彼女はまだ押入れの中。
心なしか、息が荒くなっている気がする。
ひょっとして押入れの中にネズミかゴキブリでもいるのだろうか?
「……! ……! ……!」
30分経過。どうも彼女の様子がおかしい。
僅かな押入れの隙間から彼女の姿を確認してみる。
彼女の顔は青ざめており、何やらしきりにもじもじしている。
こ、これってひょっとして漏らしそうなんじゃ……
「さーて今度こそ古本屋に行くか!」
慌てて俺は部屋を出る。しばらくすると俺の部屋のトイレのドアが開く音と、
チョロロロロ……という想像をかきたてる音。
その後すぐに彼女は俺の部屋から出てきて、おそらくは古本屋へと向かっていった。
その顔は恥ずかしさと開放感が入り混じれた、よくわかんないけど色っぽいものだった。




