ストーカーに体操服を嗅がせないで!
「……」
息も絶え絶えな彼女の視線に気づいてないフリをしながら、俺は校舎の周りを走る。
今日の体育はマラソン。高校一年生男子は6km、女子は3km。
彼女にやる気を出させるために、俺は彼女の10mくらい先を常に走っています。
まだ1kmも走っていないと思うのだけど、彼女はもうばてばてですね。
俺についていこうとペースを乱してしまったのでしょうか、悪いことをした。
心の中で彼女に謝りつつ、一気に速度を上げて自分のペースで走る。
彼女はそれについていこうとするが体が悲鳴をあげているようで、あっという間に見えなくなった。
しばらく校舎の周りを走っていると、今度は彼女の背中が見えた。一周抜かしというわけだ。
それにしても彼女の体操服、汗でびっしょりだな。今日はかなり暑いのもあるけれど、汗かきなんだろう。
……背中が汗だくでブラの紐が見えちゃってるじゃないか。
「頑張って」
「……! ……♪」
彼女を抜かす際に応援してあげる。
その時の彼女の顔は嬉しさと、汗だくの自分を見ないで欲しいという恥ずかしさと、単純に疲れて軽くアヘ状態になっているよくわかんないけどそそる顔だった。
体育の授業を終え、教室で着替えて体操服をロッカーにしまう。
その後も授業を受けて今日の学校はおしまい。
いつものように帰ろうとしますが、校舎を出た所で違和感を覚えます。
いつも感じているものを、今日は感じないのです。
しばらく考えて、それが彼女の視線だということに気づきました。
そうだ、いつもは俺が教室から出たらすぐに彼女もついてくるのに、今日は彼女がついてきてないのです。
俺のストーカーの癖に、俺を見てくれないなんて酷いじゃないか、一体何をしているんだとUターン。
教室に戻りますが彼女の姿は見えません。ここに来る時にすれ違っていないし、まだ校舎の中にいるとは思うのだけど。
何か怪しいことでもしているのかな、と以前彼女が間接キスのために使用していた空き教室へと向かいます。
果たして彼女はそこにいました。一体何をやっているんだとこっそり様子を伺うと、
「……♪ ……♪」
なんと俺の体操服を嗅いでいるではありませんか。
恥ずかしいなあ、体操服を嗅がれるのって。
お返しに彼女の体操服も嗅いでやろうかと考えましたが、流石に罪悪感が半端ないからやめよう。
ひととおり俺の体操服の匂いを堪能したのか彼女は満足そうな顔をして、カバンから何かを取り出してそれを体操服にかけていきます。
制汗スプレーです。俺の体操服が汗臭いという悪評を防ぐための、彼女の優しさなのでしょう。
なんだかほんのりとしてしまう放課後でした。
……それにしてもスプレーかけすぎじゃないかな、そんなに臭い?




