ストーカーの買い物を監視しないで!
彼女に自信をつけさせるために、部屋で架空会話をしたその週の休日。
ガチャッ
部屋でゲームをしていると、隣の部屋のドアが開く音。
反射的にこっそりと外の様子を窺うと、彼女が丁度アパートを出てどこかへ行くところだった。
そりゃそうだ、いくら俺のストーカーだからって常に俺の行動を監視しているわけでもないし、彼女だってプライベートで休日にお出かけくらいするだろう、女の子だもんね。
気づけば俺は速攻で仕度をして部屋を出て、彼女の後をつけていた。
今日は攻守逆転だ。
まさか普段ストーキングしている対象にストーキングされてるとは思いもしない彼女は、
可愛らしい洋服に身を包んで駅への道を歩く。
「ナーオ」
「……! ……♪」
「フーッ!」
「……! ……」
途中で猫を見かけて触ろうとして威嚇されてしょんぼりする彼女は最高に可愛いですね。
数分後、駅に到着。彼女は市内までの切符を買いました。俺もそれに続きます。
「クルッポー」
「……! ……♪」
「「「「クルッポー」」」」
「……! ……」
駅のホームで鳩を見かけて持っていたお菓子をあげたら、どこからともかく他の鳩も大量にやってきて囲まれてしまいビビる彼女は最高に可愛いですね。
しばらくすると電車がやってきて、彼女はそれに乗り込む。
同じ車両に乗ると感づかれるかもしれないので、隣の車両に乗り込んで、連結部から彼女の様子を窺う。
窓の外を眺める彼女。これで麦わら帽子をかぶっていたらなあ。
電車に揺られること20分。市内の駅へつき、彼女と共に降りる。
駅を出た彼女は、まず駅前のパスタ屋へと入る。お昼ご飯を食べるようだ。
俺も続いて入ろうとするが、流石にばれるのではないだろうかと躊躇う。
まあ、見つかってしまっても偶然という事で通せば何とかなるだろう。
いつも外食と言えば牛丼ばかりだったし、こういう店にも興味はある。
「ご注文をお伺いします」
「……」
「かしこまりました」
メニューを指差して注文をする彼女。喋らなくても、日常生活って何とかなるもんだな。
「ご注文をお伺いします」
「これの大盛りを」
「かしこまりました」
同様に俺もパスタを注文。しばらくしてメニューが運ばれてきたのだが……
少ない。女の子にはこれで丁度いい量だというのか?
男の俺からすれば大盛りでも少なく感じるというのに。
しかも彼女の食事風景をよくよく見てみてば、きちんとスプーンとフォークを使っているじゃありませんか。
俺はスプーンに巻くことなくガツガツと食べているというのに。
何だか場違いな気がして、俺はすぐにパスタを平らげて、会計を済まし店の前で彼女の出待ち。
しばらくして、店から出てきた彼女はデパートへと向かう。今日のメインはここで買い物だろうか?
彼女を追って辿り着いた先は、学校の制服などを売っているお店。
彼女はスクール水着のコーナーをじっと眺めている。
……そうか! 彼女はスクール水着を買いに来たんだね!
俺の想いは彼女に伝わったんだ! 彼女は来週から水泳の授業に参加するつもりなんだ!
感動に浸っている俺を後目に、一番小さなサイズの水着を手に試着室へと入って行く彼女。
ああ、今中で彼女が生着替え中なんだなあ。のぞきたいなあ。でも犯罪だよね。
俺と彼女が正式に付き合えば、犯罪じゃなくなるんだよなあ。
このもどかしい関係を取るか、彼女とのいちゃらぶを取るか、試着室の中の衣擦れの音が俺を悩ませる。
試着も終えたようで、彼女は水着を購入。
その後も彼女は女物の服屋へ向かい何着か服を購入。
更に本屋へ行き少女漫画を何冊か購入。デパートで彼女は買い物を満喫。
クレジットカードで払っているのを見るに、彼女はお金持ちなんでしょうね。
まあ、隣の部屋に簡単に引っ越せるあたり一般家庭じゃないとは思っていましたが。
大量の紙袋を持って彼女はデパートを出て駅へと向かう。
というか買い物し過ぎじゃないかな。食料なんてアパート近くのスーパーで買えばいいものを。
ほら見ろ、彼女荷物が重たくてふらついているじゃないか。危ないなあ……
駅で電車に乗って降りて、アパートに着くまでの間、ふらふらとしている彼女が事故に遭わないか、はらはらしながら俺は後ろをつけていた。
なんとか事故に遭うもなく、彼女は無事に自分の部屋へと戻る。
安堵のため息をついた俺も、自分の部屋へ。
何だかどっと疲れたよ。
でも、心地よい疲れだ。
これが、ストーキングの楽しさってやつなのか。
ミイラ取りがミイラに。自覚はしていたが、どうやら似た者同士のようだ。




