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ストーカーに音ゲー魅せつけて!

「……」

 音楽の授業中、彼女の視線に気づいてないフリをしながらティンパニーを叩く。

 高校の音楽の授業に残念ながら縦笛という魅惑のアイテムは無い。

 音楽を聞いてレポートを提出するか、たまに数人でチームを組んで演奏をするか。

 今回は残念ながら彼女と同じチームに入れず、ならば俺のティンパニー捌きを魅せつけてやろうと力を込めて叩いているわけだが。

 何だか急に、ゲームセンターで音ゲーがやりたくなってきた。

 音ゲーのできる男って、個人的にかっこいいと思う。



 そんなわけで、放課後にゲームセンターへ。

 音ゲーと一概に言っても、色んなタイプの音ゲーがある。

 リズムに合わせてボタンを叩くタイプ、踊るタイプ、ギターやドラムを用いるタイプ……

 その中でも、今回は踊るタイプをチョイス。

 やはり体全体を使って表現するというのは、かっこいいと思う。

 ギャラリーの中に彼女が混じっていることを確認した俺は、コインを投入。

 さて、問題は難易度だ。

 俺は音ゲーの達人ではない。大人しく、初級か中級の曲を選ぶべきだろう。

 しかし、しかしだ。彼女が見ているってのに、そんな簡単な曲が選べるかと言うと選びづらい。

 だが、失敗してしまえばもっと恥ずかしい。



 ここで俺のスペックを確認しよう。

 俺は音ゲーをやりこんでいるわけではない。

 しかし、高校生離れした運動神経を持っている。

 つまり反射神経が物凄いということだ。

 リズム感の無さを、反射神経でカバー。

 ……イケる!

 決意を胸に、俺は上級者向けの曲を選択。

 俺の華麗なステップ、魅せてやるぜ!



『Failed』

 3分後、圧倒的失敗を伝えるリザルト画面の前で崩れ落ちる俺。

「なんだあいつ、自信満々に上級者向け選んだ癖にしょぼいな」

「ださーい」

 ギャラリーにも笑われてしまう。恥ずかしい事この上ない。

 しかし、ギャラリーなんてどうだっていい。肝心なのは彼女だ。

「……♪」

 彼女、ちょっとにやついている。悪い感触ではないみたいだが……

 彼女は今の俺の醜態をどう思っているのだろうか。

『かっこつけて上級者向け選んで失敗する姿萌え』とか思っていたりして。

 幻滅されなくてよかったと思う一方で、悔しさ満点。

 微妙な感じの俺を後目に、彼女はリズムに合わせてボタンを叩くタイプの音ゲーに興味を持ったのか、コインを投入。

 初心者用の一番簡単な曲を選んだ彼女は、ポン、ポン、ポンとリズムに合わせてボタンを叩く。



 ……なんて愛らしいんだ!

 たどたどしい手つきでボタンを叩く様は、まさに肩たたきをする孫娘!

 ノーツの多い曲ではなく、初心者向けの曲だからこそ、その愛らしさが満面なく発揮される!

 曲も無事成功し、嬉しそうな顔をする彼女。ほんわかした顔をする俺。

「何あいつ、一番簡単な曲やってドヤ顔とか」

「自分の事リズム感あると思ってんのかね、ウケルんですけど」

 そして彼女に聞こえる場所で、水を差すDQNカップル。

 心無い言葉を聞いた彼女はプルプルと震え、すぐに涙目になって、トイレへと駆け込んでいく。

 DQN共はげらげらと笑いながら、ゲームセンターを出て行った。



「つーかさ、さっきの女の子のちょっとまえにダンスやってた男も酷かったよな、自信満々に上級向け選んでボロカスとかよ」

「わかるわかる、音ゲー苦手な癖にゲームセンター来るなって感じ」

 ゲームセンターを出て行った二人を俺は追い、人気のない場所まで来ると、

「彼女の泣かした罪は、てめえらの血で払ってもらおうかぁ!?」

 問答無用で二人を〆る。



 制裁を喰らわせた後ゲームセンターに戻ってみると、まだ彼女はそこにいた。

 おそらく馬鹿にされ、トイレの個室で泣きじゃくっていたのだろう。目元が赤い。

 俺は彼女のやっていた音ゲーにコインを入れると、彼女と同じ、一番簡単な曲を選択。

「……! ……♪」

 簡単なノーツに合わせて、ボタンを叩く。

 何も、恥ずかしくなんかない。

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