ストーカーに誕生日を祝わせて!
「……」
授業中、彼女の視線に気づいてないフリをしながら俺はそわそわする。
実を言うと、俺は明日が誕生日なのだ。
ここで俺の心配事は1つ。
彼女は俺の誕生日を知っているのだろうか?
高校に入学して今まで俺は自分の誕生日を他人に話したことはない。
しかし、書類等に生年月日を書いたりするので、彼女がそれを盗み見ていれば、俺の誕生日はばっちり知られていることになる。
彼女の様子を見るが、彼女は別にいつもと変わらないように見える。
明日が俺の誕生日だから誕生日プレゼントどうしようかな、どうやって渡そうかな、なんて乙女チックな事を考えているようには見えないのだ。
知らないのなら、早目に彼女に俺の誕生日を教えたい。
しかし、教え方が問題だ。
例えば、クラスメイトとの会話中に、
『俺明日誕生日なんだよね~』
と言えば、彼女に伝えたいことは伝わるだろう。
しかし、それだけで話は終わらない。
そんな台詞を言ってしまえばクラスメイトに、
『うわ、こいつ誕生日プレゼント催促してるよ……』
なんて思われかねません。
ええ、確かに俺は彼女からの誕生日プレゼントが欲しい。催促するよ、その気持ちは認めよう。
だけど、それを表には出したくない。男として、催促なんてしてませんよ的な雰囲気を出したい。
では、クラスメイトとの会話ではなく、部屋に戻った後に、
『あ~あ、明日は誕生日だけど、誰にも祝われないんだろうな~』
なんてぼやくことで、彼女に明日が誕生日であることを伝えるのもアリだろう。
しかしそれはそれで彼女に、寂しい人間だと思われそうで嫌だ。
そもそも部屋に帰ってから彼女に自分の誕生日が明日だって伝えるのは遅すぎる。
自分への誕生日プレゼントを探すために、夜中に彼女が街をうろつくのは危ない。
つまり、俺にできることは、彼女を信じること。
彼女が俺の誕生日を何らかの方法で知っており、誕生日プレゼントの用意をしてくれていると。
翌日。俺もようやく16歳だ。
「……」
登校中、彼女の視線に気づいてないフリをしながらそわそわする。
彼女は別にいつも通りだ。
「……」
授業中、彼女の視線に気づいてないフリをしながらそわそわする。
ひょっとして、机の中とか、ロッカーの中とかにこっそり誕生日プレゼントが入っていたりして!? とごそごそ探ってみるが、何にも出てこない。乙女か俺は。
「……」
放課後、彼女の視線に気づいてないフリをしながらそわそわする。
駄目だ、彼女は今日が俺の誕生日だって気づいてないんだ。
部屋に帰り、ベッドにダイブしてすすり泣く。
ああ、彼女からの誕生日プレゼントが欲しかった。
俺がもっと勇気を出して、くだらないプライドなんか捨てて、誕生日プレゼントを催促していれば!
彼女だって、俺の誕生日が今日だったと知れば、ショックを受けるかもしれない。
俺のせいで、彼女を悲しませてしまったんだ……!
ピンポーン
ほんのり目を赤くしている俺の部屋に、チャイムが鳴る。
「はーい、今出ます……」
今俺はすごく機嫌が悪いんだ、セールスだったらぼこぼこにしてやる。
「宅配便です」
「はあ……印鑑です、どうも」
配達員から包みを受け取り、差出人を確認する。
差出人は不明だ。しかも生ものが入っているらしい。
配達員を帰した後、中身を確認すると……
「ケ、ケーキ……」
思わず声に出してしまう。ハッピーバースデーの砂糖菓子が置かれた、ケーキ。
所々手作り感が見受けられる。ひょっとして、いや、ひょっとしなくても、これは、
彼女の手作りケーキ!
「うめえ、うめえよ……」
うれし涙を流しながらケーキを頬張る。
よく見ると、ケーキのほかにもう1つ包みがあった。
中身を確認すると、なんと俺が前から欲しくて、ディスプレイをたまに眺めていたボクシンググローブだ。
「ありがとう……ありがとう……」
部屋の向こうにいるであろう彼女に、土下座で感謝の意を伝える。
実は俺は彼女の誕生日を知っている。
こっそり彼女の書いた書類を盗み見したのだ。
当分先だが、絶対に素敵な誕生日プレゼントを贈ろうと誓った。




