表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と紡いだ宝物。  作者: 朝凪 紡


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/42

こたえの、こたえ。

「……」

(固まっちゃった)

彼は、表情も変えずに立ち尽くしている。


そのまま時間だけが流れ、居た堪れなくなった私は、声を絞り出した。

「そ、その自分のことながら、はっきりとしてない部分も多いですし、とんでもないことを言ってしまっているのかもしれないけれど、それでも、いいと思えるくらいには、覚悟を決めれていて、だから、その…」

着地点を見つけられないまま、つらつらと並べた言葉はプレゼンなら及第点にも満たないだろう。

(歯切れが悪すぎる)

居た堪れない気持ちがさらに加速し、へこむ。

視界が、木目上の床に支配され、彼の声が聞こえてくるのを待った。

「…」

「…」

(そろそろ、私の限界が来ちゃうよ)

目をぎゅっと瞑って、ゆっくり開きながら彼を盗み見る。

そこには、数分前と変わらぬ彼。

胸のあたりが、ガクッと崩れ落ちる感覚は、まるでジェットコースターだ。

(そんなに固まらなくてもよくない?!男女が一緒に住むならもうそれは結婚ともほぼ変わんないじゃん!)

それは人によるが、私は比較的古風な恋愛観の持ち主だという自覚はある。

段々とアドレナリンが分泌されてきたのか、身体が熱を帯びてきた。

それでも待つしかない私は、気を紛らわせようと、頭の中で羊を数え始めてみた。

(羊が、一匹、羊が二匹、羊が三匹、羊が……)

時間の進みが五倍くらいに感じられる中、ようやく服のこすれる音が耳を掠める。


「…もちろんです」


文字通り彼の時は、止まっていたようだ。


待ち望んだ声が聞こえた瞬間、一目散に視線が彼をとらえる。

穏やかに微笑んでいる時雨の頬は、珍しくほんのり赤く染まっていた。

目尻は、光が反射して、キラキラしている。

そんな彼の表情は、先ほどまでの私の感情を一気になだめた。


「翠さん、その、ありがとうございます」

言葉は短いけれど、なんとなく、その言葉にたくさんの感情がのっているような気がした。

ふと、私と彼が出会う前の話が思い浮かぶ。

私には想像もつかないほどの長い長い時間。

それはどれほど耐え難いものだろうか。

一人で大丈夫だという人もいるけれど、一人でも大丈夫だと言い聞かせて踏ん張っている人もいる。

それはどうしようもないことで、耐えるしかない状況もたくさんあるだろう。

彼が時折、儚げで、強いのに消え去ってしまいそうな不安定さを感じるのは、耐え抜いた時間が長すぎるのかもしれない。

そう思うと、苦しくなった。


開いていた二人の距離を近づけようと、一歩、また一歩、彼に向って足を進める。

あと一歩の距離で止まった私は、彼を見つめて、こう言った。

「これから、よろしくお願いします」

時雨は、少し眉間にしわを寄せ瞼を閉じた。

再び開かれた眼は、覚悟が決まったように、煌めいている。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

そういって微笑みあった二人には、それ以上の言葉は必要なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ