麗蘭の学園生活11
「あの〜、もしもし? なんか悩んでるみたいだけど、どうしたの?」
教科書を両手に持ち、齧り付く様にぶつぶつと唱えている女の子に声をかける。
「え?!」
吃驚させてしまったのか、体を大きく跳ねさせながら顔をばっと上げた。……と、思ったらものすごい細目でじーっと睨まれてしまった。
……えぇ〜と、これって、もしかして、ものっすごく覚えのあるお顔っぽくない?
試しに指を二本立ててみる。
「これ、何本か分かりますか?」
思わず口調が検査員の様になってしまったのはしょうがない。
「―――四、え、ん? 三……? え〜と……」
あ、乱視も入ってそう。
成程、教科書に齧り付いてたのは見えづらかったからでしたか。
でも、指の数がこの距離でも分からないとなると、黒板の文字も見えてないんじゃ?
眼鏡をかければ解決しそうだけど……かけてないところを見ると、購入する事が難しいのかな?
この世界って回復や治療の魔術があるのに、どうして目の悪い人や病気が無くならないのかなぁ、とこの世界の事がまだよく分かってなかった頃は思ってた。
どうやら魔術で治すという事は、欠けた部分を修復するという事で。
例えば、指を何らかの理由で失くした場合、魔術によってその人の体が覚えている形に戻すという事らしい。
一度機会があって見た事があったけど、元に戻る過程が……うねうねって……うっ、思い出したら気分悪くなった……。
とにかく、前世でのアニメやマンガの様にぱっと治る訳ではなくて、その人の自然治癒力を促進させながらなので体力は使うし痛みもあるしで、治療される人は泣き叫んでたっけ……。
でも、時間が経つと復元出来なくなるから、痛みをとるか、失った事を受け入れるか選択しなくちゃなんだって。
……選択肢が少ない。
話が逸れました。
要するに、欠けたものは治せるけど、人体の元々の機能低下によるものは魔術では治療・回復できないのです!
なので、視力が悪ければ眼鏡をかけるしかないんだけど―――高っかいのよね〜、眼鏡!
しかも、前世の時みたいに個人個人に合わせた凹レンズを作るとかでは無いみたい。
偶然の産物で出来た凹レンズで偶々視力の悪い人が覗き込んだら見えたから、どうして見える様になったのかは解明されてないけど、とりあえず既存の物を複製しているとか。
人によっては見えるだろうけど……という事で、購入する人は少なく需要がないからレンズを作る職人は少なく、かつ利用者も少ないから高いらしい。
う〜ん。眼鏡って私でも作れるのかな? 検査ってどうするか分かんないもんな〜。
私に分かるのは、検査してくれる人がいろんなレンズをかちゃかちゃ組み合わせてくれて『見え方どうですかぁ〜? コレを入れた時と無い時、どちらが見えますか〜?』とか言われながら『あ、さっきの方が見やすいです!』とか返事して自分に合うものを見つけていくって事くらいよ!!
困ったなぁ………。私も、正直言って眼科や眼鏡屋さんに行った時に置いてあるパンフを見た位の知識だからよくは解ってないし。
あ、でもコレだけははっきりと覚えてるわ!
老眼は凸レンズなのよ!! ……どうでもいいか。
「ねぇねぇ。もしかして、教科書の文字、見づらい?」
「え? 何でわかるの?!」
いえ、私も前世では滅茶苦茶視力が悪かったので、その眉間の皺と目をすっごく細める表情に見覚えがありまして……とかは言えないけれどね。
う〜ん。このままじゃ、この子、よく見えないばっかりに授業についていけなくなっちゃわない?
ん〜? 何かいい方法ないかなぁ……??
読んでいただきありがとうございます。




