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第71話 神殿からの呼び出し

「どんな用件なのかねえ?」


 いつも通り穏やかなてんと、落ち着かないハンニバルとカデン。不安な風花と、何も考えていない阿修羅。


 昼の混み合う時間が過ぎた頃に神殿から呼び出され、お店を両親に任せて神殿に向かった風花と天とカデン。

 案内された部屋には、既にハンニバルと阿修羅がいた。お互いの状況を確認してみると、昼過ぎに神殿から呼び出されたが用件は知らないということだった。


── あの3人に相談して風花をデートに誘うシナリオが固まったタイミングで何なんだ…。せっかくいろいろシミュレーションを重ねて俺の経験値もアップしたというのに…くそ!


今日こそ風花をデートに誘うつもりだったハンニバルから殺気が漂う。


「お待たせしてすみません!」

ノックして入ってきた神官は風花とハンニバルを引き合わせた人だった。


「急なお呼び出しで申し訳ございません、出来るだけ早くご相談したくてお呼びしてしまいました」

美形の神官が汗を拭きながら謝罪する。

「…この組み合わせで呼び出されたということは加護に関係するのか?」

「はい」

ハンニバルの指摘にうなずく神官。


「だ!だめだよ! 私たち上手くいっているんだから! 絶対にだめ!」

ハンニバルではなく風花にしがみつくカデン。


「聞く義務はないな」

 ちょこっと傷ついたハンニバルが冷たく言い放つ。


「せっかく集まったんだから聞くだけ聞こうよ。嫌なら断れる話だろう?」

取りつく島もないハンニバルを天が宥める。


「はい、もちろん強制するようなことではありません。加護の交換についてのご相談ではなく、皆さんの加護のお力をお借りできないか…というお願いなのです」

加護の交換ではないと分かりカデンが落ち着いて座り直した。


「芸能の加護を持つ半人前の女性や男性が入居する寮があるのはご存じですか? 皆さん加護で生活して行けるようになるまで早くても数年かかります。それまではレッスンを受けながら働いてオーディションを受けて…オーディションに通ったら本番に向けて稽古、本番初日を迎えたら千秋楽まで舞台に専念。

 毎日忙しい割に働けない期間があって収入が不安定です。そんな方たちをサポートするための寮です。

 現在、女子寮で常駐のセキュリティを募集しているのですが誰でも良い訳ではなく、広範囲の気配察知スキルが使えて圧倒的な強さが求められています。発生練習や歌曲やダンスの訓練も可能な寮の敷地は広いので…あれだけの広範囲をカバーできるスキルと強さを兼ね備えた女性が見つからなくて…」


「あっくんのスキルと強さなら問題に対処出来るし、あっくんは幼児だし風花ちゃんは女の子だから女子寮に住んでも問題ないってこと?」

「そうです」


「無理だな」

「絶対にだめ!」

常駐のセキュリティと聞いて秒で断るハンニバルとカデン。


「その女性寮では問題が起きているの?」

さらに詳しい状況を聞き出そうとする天。


「はい…。以前から下着泥棒やのぞきなどの犯罪行為が多発しておりまして…。訓練した犬を放し飼いにしたり、見回りを増やしたりしているのですが、一向に犯人は捕まらないし悪質になってきていて…」

「ひどい話だね、許せないな」


天と神官の会話を真剣に聞く風花。

風花が関心を持つなら無視できないハンニバル。お店をやめてセキュリティに転職するのは絶対反対のカデン。


「今回の騒動の発端ですが、女子寮に住む女性が、男子寮の男性たちが話しているのを聞いたと言って騒ぎになったのです」

「どんな話?」


「複数の…かなり多くの男性たちが面白半分で女子寮に忍び込んで下着を盗んだり痴漢行為をゲーム感覚で行なっていることをゲラゲラと笑いながら話していたと…」

「ひどい…」

風花の顔が怒りに染まる。


「もちろん、その場で抗議したそうなのですが、そんな話はしていないと言い張るばかりか証拠もないのに侮辱されて傷ついた名誉毀損だと騒ぎ出して…。

 その翌日には別の女性たちが、OB…つまり半人前を卒業した芸能だけで食べていける一人前の芸能の加護を持つ男性たちが、『たかがゲームじゃないか、大騒ぎするなど馬鹿馬鹿しい』とか『盗んだ下着は青春の思い出』とか話しているのを聞いたそうなんです。

 もちろんその場で抗議したのですが、そのOBたちも証拠はあるのか?と、馬鹿にした態度でしらばっくれて…寮に住む女性たちも寮を出て独り立ちした女性たちも怒りが収まらないのです。

 なんとか犯人を捕まえたいと頑張っているのですが、さらに被害がエスカレートしている状況なのです。

 加護の交換や転職ではなく犯人を捕まえて騒動を解決するためにご協力をお願いしたいのですが、期間は犯人逮捕までと、ざっくりなことしかいえなくて。」


「なんと卑劣な犯罪行為だ。許せんな」

個人的なアレコレに思考を占拠されていたが、貴族の教育を受けたハンニバルが立ち上がる。

「カデン、証拠を確保できるか?」

「できるよ! 盗聴器と監視カメラを設置するよ! 敷地内だけじゃなくて女の子たちの服にも仕込むよ!」

風花の転職ではないと分かってカデンが協力的だ。


「天さん、阿修羅、泊まり込むことになるけど良い?」

風花も立ち上がる。

「もちろんだよ、あっくんもいいね?」

「うん!」


「ありがとうございます!」

「卑劣な犯罪行為を見逃す訳にはいかない。証拠を押さえた後の捕縛も任せろ」


「あ…いえ…こういう事情なので人間の男性のハンニバル様は敷地に入れなくて…」

「……え?」


張り切ってみたものの空回りだった。

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