392.リットール到着、ラミアの森へ sideアリサ
ユーシスとミヤビは、ラミアの祠にてついにアリサの痕跡を見つけた。
そこでユーシス達はフェレングの都でアリサ捜索を始めた。
しかし残念な事に、アリサはユーシス達が到着する一日前にフェレングからリットールに向かっていた。
数日後、ユーシス達はアリサがすでに旅立った事に気付き、フェレングを発つのだがその際に小さなイベントが発生する。
その内容については何話か先で紹介するとして、これより暫くはヒロインであるアリサの話となる。
◆リットール 【ラミアの森】近く。
Sideアリサ
午前一時。
サラサラと流れる小川のある草原にて、アリサはファイスを休ませていた。
「ごめんね、ファイス。不眠不休で走らせちゃって」
「ヒヒーン!」
アリサが捜索したテヘラとフェレング、そして祐樹と朱里が捜索したアストラにはユーシスの痕跡はなく、残りはマハパワーとリットールのみ。
つまり次の捜索で祐樹と朱里、もしくはアリサがユーシスを発見するはずなのだ。
確率五割、アリサの心は逸りに逸る。
そして自分とファイスにセイクリッドヒールを掛けながら、わずか三日という驚異的な速さでフェレングからリットールに到着したのであった。
そんな強行もあって、今は逸る気持ちを抑えてファイスとアリサは休養を取っている。
食事と水飲みを終えたファイスは、馬とは思えないぐったりとした寝相で泥のように眠る。
いくら走るのが大好きな馬とはいえ、不眠不休で三日間走りっ放しは流石に頭の中が堪えたようだ。
日の出にはまだ5時間もある。
アリサはファイスに寄り添いながら、ローブとマントを毛布代わりにして眠りについた。
(備考*ファイスはディメンションアーマーの機能の一つであるストールの中で休ませればいいと思われるかもしれないが、ストールは時間停止空間であり、閉じれば一切の時間が停止凍結される。つまりファイスが疲れてヘロヘロの状態で、時間停止空間に入っても、次に出てくるときは疲れ切ったままの状態で出て来る。その為、外での休養は絶対に不可欠なのである)
早朝――
「ヒンヒン!ブルルルルルル!」
「へくちゅっ……んん、久しぶりによく寝たぁ……」
私はファイスに起こされ、真冬朝の強烈な冷え込みにクシャミと身震いをさせた。
ここからは一旦ファイスを時間停止空間に戻し、徒歩でラミアの祠へと向かう。
「フライ」
飛空魔法で50メートルほど空に舞い、地形を確認。
「どうやらあの道がラミアの祠へと通じるみたいね」
そのまま森の中へと通じる道の端まで飛んで行き、後はてくてくと歩く。
道の続くまま進むと、森の中で三叉路となっていた。
「ん?方角的にはこの奥なんだけど……」
かまわず道から外れて奥に進もうとすると――
― バチッ!
「きゃっ!え、これって結界?」
なんと!森の奥へ行くのを阻むかのように、道沿いにかなり強力な結界が張られていた。
「これ、もしかしてラミアの祠を守護するための結界なんじゃ……どこかに入り口とかあるのかな?」
結界の出入り口や隙間はないか、道沿いを歩きなが調べる。
― てくてくてくてく……
― カサッ……
「はっ、人の気配!」
気配に気が付くと同時に背後から、
「動くな!動けば撃つ!」
ボウガンを持った男が警告を発し、私に狙いを定めていた!
男は訝しげな目でジロジロと見ながら、私が何者なのかを確かめようとする。
こちらも男が何者なのか観察すると、胸に何かのバッチを付けている事に気が付いた。
スラヴ王国で言うところの、地方保安官のような感じだ。
少なくとも野盗の類では無いのは間違いない。明らかに取り締まる側の人間だ。
「盗賊や逃亡中の犯罪者には見えないな。こんなところで朝早くから何をしているんだい?」
男はトリガーから指を放し、緊張をといた。
「私は旅行者です。この奥のラミアの祠を見に来たのですが……」
「ふーん、こんな朝早くにこんな場所を旅行者がねぇ?俺は森林保安官のアーノルドってもんだ。この奥に行きたいって?とりあえず身分証になるものを見せてみな」
身分証?それを見せれば私が外国人だとバレてしまう。
でもここで拒んだりしたら返って怪しく思われるのは間違いないし……
「わかりました」
諦めて身分証明となる冒険者カードを提示した。
お願い、態度を豹変させないで!
「おや、あんたスラヴ王国の人かい。ふーん外国人かぁ……」
アーノルドの目つきが変わったような気がした。やっぱりまずかったかな……
「ははは、そう身構えなくてもいいよ。あんた実に運がいい、俺は外国人とくにスラヴ王国の人には偏見や差別意識は無いんだよ」
アーノルド……いや、アーノルドさんはカードを確認するとすぐ返してくれた。
「俺の大好きな祖母がスラヴ王国の人でね、こっちに来てかなり苦労したんだ。それを知っているから変な意地悪とかしない事にしているんだよ」
おお!まさかのマトモな人だ!
そう言えばマトモな人って連邦に来てから始めてあったかも!
この人なら本当の事を話しても大丈夫かな……
私はラミア転送システムを使った不法入国者であることだけは隠して、この奥に連れ合いがいるかもしれないので入れて欲しいと頼んでみた。
「あー、それは無理だ。この結界から向うはラミアの森と言って、国定公園の特別自然保護区なんだ。残念ながら全面立ち入り禁止なんだよ。一応言っておくけど、結界もラミア族の強力なものだから無理やりこじ開けようとしても、まず入れないよ」
「そんな!なんとか中に入れて貰えませんか?それか何か合法的に入る方法とかありませんか?」
私は必死でアーノルドさんに訊いて見た。
「うおっ!?鬼気迫る勢いだな。よほど大切な人なのかい?」
「はい……」
「ふーん、まあいいや。じゃあ合法的に入れる方法を教えてあげるよ」
アーノルドさんが言うには、現在このラミアの森では害獣であるフォレストラビットが大量発生しており、森林公園局が冒険者ギルドへ討伐依頼を出しているそうだ。
それを請け負えば、討伐の名目で堂々とラミアの森へ入れるとのことだ。
「ありがとうございます!助かりました!」
「なあに、いいってことよ。あ、そうだ!」
「はい?」
「冒険者ギルドでは必ず《ケイト》って受付嬢に話を通してくれ」
「え?それはまた何故?」
「言っちゃ悪いが、リットールの冒険者ギルドは色々と終わっていてな、マトモなのは受付嬢のケイトちゃんだけさ」
冒険者ギルドが終わっている?マトモなのはケイトって人だけ?
やはりアドレア連邦は色々とアレなのかな?
でもマトモな人が一人でもいてくれて良かったかも。
「わかりました。いろいろと教えてくれてありがとうございます!」
「いいって事よ。じゃあ頑張りな」
アーノルドさんは、リットール中心街にある冒険者ギルドの場所を説明してくれたあと、踵を返して結界沿いに歩き去った。
◆リットール中心街
アーノルドさんに冒険者ギルドの場所を教えてもらいはしたものの……
近くまで来てはいると思うのだけど、情けない事に迷子になってしまった。
なので、それっぽい人に聞いてみる事にした。
「あの、すみません。ちょっとお訊ねしたいのですが……」
「はい?」
声をかけたのは、パリッとした白シャツと紺のスカートに身を包む金髪の美女。
もしかしたらギルドの受付嬢じゃないかと思ったのだけど、これが見事にビンゴだった!
「冒険者ギルドに行きたいのですが、もしかしたらギルドの方じゃないかと思ったもので……」
「ああ、はい。そうですよ。私はリットール冒険者ギルドの――」
なんと、声を掛けた人はアーノルドさんが紹介してくれたケイトさんだった!
私は歩きながらアーノルドさんの紹介であることと、【ラミアの森・フォレストラビット討伐】を受けたい事を話した。
「お話の内容はわかりました。戻りましたらすぐに依頼書を確認してみますね」
特に何か問題がある感じでもなく、私は期待に胸を膨らます。
「さあ、着きましたよ。ここがリットールの冒険者ギルドです」
ケイトさんはニッコリと微笑みながら大きな両開きの玄関を開けた。
よかった。無事にたどり着くことが出来て。
実のところ、少しだけケイトさんとアーノルドさんを疑っていたのよね。
『アリサ……あんた外国人じゃん。アドレア連邦では外国人の人権なんて有って無いような物なの。見つけたら毟るだけ毟らなきゃ。それがこの国の暗黙のルールなの』
ビーテリアとタチュリィを始めとするアドレア連邦での嫌な体験が脳裏に浮かぶ……
――また裏切られて酷い目に遭わされたらどうしよう……――
どうしても不安が拭えなかったが、しかしそれは全くの杞憂で済んだ
ようだ。
さあ、後は中に入って手続きをするだけ。
本当、今日はアドレア連邦に来てから一番ラッキーな日だわ!
私はトラブル防止に性別を隠そうと、フードを深くかぶり直してギルドの中へ……
しかしギルド内に入った私とケイトさんの顔は、驚きに大きく引きつった!
― ゴキン!?
首回りの骨が砕けた独特の不快な音……
「かはっ……」
「なっ?」
「えっ!」
私達は、一人の浮浪者らしき男が、二人の冒険者によって蹴り殺される瞬間を目の当たりにしてしまった。
ここからは姉妹作品との連携仕様となっています。
以下作品
【追放した側のファンタジー・英雄ケンツの復活譚】
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と、時系列を合わせながらお読み頂ければよりお楽しみいただけます。
面倒に思われる方は、ティラム逃亡記側だけをお読みください。




